成田発:成田行き エアバスA380によるANA FLYING HONU チャーターフライト
コロナは第7波に突入だとメディアはまた大喜びしているが、2年半経っても相も変わらぬ風潮にめげず夏を楽しみたいところだ。そんな折、メールマガジンで成田空港発着のチャーターフライトの案内が入った。かねがね妻がハワイに行く際には是非乗りたいと言っていた空飛ぶウミガメ機を使用したANAのチャーターフライトで、機内では飲み物や軽食のサービスもあるとの事だ。最近は海外と云うとクルーズ客船ばかりで成田空港は久しく利用しておらず、それどころか2010年に開通した京成の成田空港線や、それに合わせて導入された在来線では最速160キロの3代目スカイライナーAE車もこれまで利用したことがなかった。この企画に申し込めば新スカイライナーとA380の両方に乗れると、7月27日に「エアバスA380によるANA FLYING HONUチャーターフライト」というツアーに夫婦で参加した。
使用されるエアバスの総2階建て超大型機A380は、ANAが2019年5月にホノルル線用として導入したものの、武漢ウイルス騒動によって長らく休航を余儀なくされていた機材である。愛称のフライングホヌはハワイ語でウミガメを意味するホヌ、が空を飛ぶという造語だ。ホヌたちはやっとこの7月から再開したホノルル行きの運用に再就航したものの、これもまだ週2便と極めて限定的な使われ方となっている。いま存分に飛べないA380は寂しく成田空港の駐機場に留め置かれているが、ANAには1機500億円と云われる機体が全部で3機もある。少しでも金を稼ごうと2020年暮れから無寄港や国内各地へのチャーターフライトのほか、成田空港で機内食を楽しむレストランとして使われるなど、ホノルル便で期待の星だったホヌたちも地を這う努力で営業を展開中である。この日、我々が搭乗したのはA380第2号機で、ハワイの海をイメージした緑色に塗られ、愛称が「カイ(ハワイ語で海)」という機体であった。
今回のANA FLYING HONU チャーターフライト便(ANA2030便)は13時に成田を飛び立ち、岩手県の久慈上空でUターンして成田に戻る2時間のフライトで、途中で食事が出るという設定であった。料金はファーストクラスが11万8000円、ビジネスクラスが窓際6万9800円でともに国内線プレミアムクラス昼食付、プレミアムエコノミー席は窓際5万4800円、エコノミーが窓際3万9800円、通路側2万4800円でこちらはホノルル線の軽食付きとなり、我々はエコノミー窓際に搭乗することにした。このチャーターフライトが飛行する成田‐岩手‐成田の直線距離は約1000キロで、これは東京から福岡や札幌への直線距離よりやや遠いことになる。いま羽田空港から福岡空港や千歳空港まで飛べばANAの正規エコノミー運賃では約4万円ほどであり、今回のフライト料金を高いとするか安いととるかは正に”価値観次第”という事になる。
新スカイライナーでやって来た当日のチェックインは、エコノミークラスが朝10時からで、以後順次プレミアムエコノミー、ビジネス、ファーストと上級クラスになるほど遅くゆったりしているのがクルーズ船とは逆である。チェックインから搭乗まで時間があるため閑散とした国際線のカウンターなどを見学し、第一ターミナルの片隅にある国内線待合室で待つことしばし、時間になり今度は上級クラスからバスに揺られて空港エプロンのはるか彼方に駐機するA380に向かった。定員500名ほどに対してこのフライトの乗客は100名余くらいだろうか。待機する真新しい機内に一歩足を踏み入れれば、ボーイング747ジャンボより広々とした空間が広がり、航空機特有の閉塞感もあまり感じない。プレミアムエコノミー以上は2階席なので見学は出来なかったが、エコノミー席でもシートピッチが86センチと従来の国際線エコノミーより広く、ハワイならこれで十分という気にさせてくれる。前席の背面に備え付けられた大型モニターには、オンデマンドの音楽・映画のほか、垂直尾翼上のカメラ映像など機体の状況や飛行位置を知らせる情報が満載で、タッチパネルをあれこれいじっているだけでハワイまで退屈せずに過ごせそうだ。
上空の軽食サービスは、エコノミーでもなんとビールも無料というのが嬉しかったが、印象的なのが成田に帰ってから飛行機を降りる時だった。ふつうのフライトでは到着地に着くとせっかちな乗客で扉の前に列ができるところが、この日は誰も積極的に降機しようとしない。2階のファーストクラスから順に搭乗口に呼ばれる乗客は、ドア付近で総出で挨拶をするスッチーに次々と言葉をかけたり記念撮影をしたりと動かないのである。特にビジネスクラスの乗客は男性一人のオタクっぽい感じが多くてプロトコルが長く、ドアが開いて10分ほどしてもエコノミー客が下りる順番にならないのは微笑ましかった。その後、皆が機外に出ても待機するバスを前に、そのまま炎天下に悠々と写真撮影に時間を費やすという情景がエプロンでは繰り広げられていた。乗ってきたカイ号のコクピット窓が開けられ機長が手を振る中、余韻を楽しむかのようにフライトを体験した乗客たちはバスに乗り込んだのであった。
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