新橋第一ホテル ANNEX最終日
武漢ウイルス禍で(個人的には嬉しいが)シナ人の爆買い観光客などが来日しなくなり、東京都心のホテルは軒並み窮状に陥っているようだ。昨年6月末には九段下のホテルグランドパレスが49年の歴史に終止符を打ち閉館となり、1989年開業の新橋第一ホテルANNEXもこの2月12日を以て営業を終了した。ともに都内ではそれなりに有名なホテルだったから、過剰な武漢ウイルス対策の犠牲になって早々に営業を終えるのは寂しいものがある。しかし外国人観光客の来日などはいつのことになるのかまだ先が見通せないなかで、設備の古いホテルがやめるのも止む無しなのだろう。
その第一ホテルANNEXでは「ご愛顧感謝セール」と銘打って、1月下旬から最終日まで食事つきの宿泊プランを展開することを「阪急・阪神第一ホテルグループ」のDMで知り、夫婦で2月12日の営業最終日に宿泊を申し込むことにした。「ご愛顧感謝セール」は同ホテルグループ会員に限り、部屋代込みに6000円程度のイタリアンの夕食、3600円の洋風朝食セットまでついて、なんと一泊一人税込みで8550円ぽっきりだというからビックリだ。第一ホテルANNEXは都心の一等地に位置するホテルとあって、バブルの時代や訪日観光客で賑わっていた頃は、素泊まりで一人一泊2万円近くはしたであろうから、2食付きでこの料金なら超破格の設定と云える。我々は「外出自粛要請」もほとんど考慮せずによく夫婦で外食に出かけているが、この料金でホテルクオリティのディナーと朝食が味わえるなら、宿泊代タダ、或いはメシ代がタダみたいなものだ。ホテルのメンバーズクラブなどは申し込むのも面倒なのだが、たまにはお得な特典もついてくるものである。
といっても新橋は我々にとって昼夜問わずあまりにも「日常」の世界である。ふだんの会社の行き帰りや飲食のほか、すぐ近くの皇居も週に何度もジョギングで来るので、いくらホテルと云ってもどこかへ来たという気がしない。ならば、という事で、宿泊は電車の線路に一番近い部屋をリクエストし、眼の前を通る新幹線や、東海道線・山手線・京浜東北線の電車を眺めて過ごすことにした。蔓延防止等重点措置の3連休中で、館内の宿泊客はガラガラとあって、チェックインすると希望通り4階の線路間際の部屋がアサインされ、目の前を色とりどりの各種電車が通り過ぎていく光景を一日楽しむことができた。ホテルの窓ガラス超しに新橋駅脇の見事なS字カーブを身をくねらせて通過するN700系新幹線や235系通勤電車を眺めていると、まるで鉄道模型の大きなジオラマに入り込んだような錯覚に陥いる。ここでコンビニで買った持ち込みのビールでも飲んでいれば、新橋でも「非日常の世界に没入」と云う気分になってきた。
セットの夕食はホテルの地下一階の”イタリアンレストラン・ラパランツァ”で摂る。ここは半地下の構造で地上の景色も大きなガラス窓越しに垣間見えるのだが、座りながら外を見るうち、目の前の新幸橋の交差点に、かつて個人及び大日本帝国4社(大和・日本交通・帝都・国際)タクシーの専用乗り場があった事を思い出した。そういえばバブルの頃には、毎晩のように銀座の接待帰りにタクシー券を握りしめここで並んでタクシーに乗車したものだった。多くの酔客で賑わったあの頃と、現在のラパランツァの閑散とした店内やウイルス禍でひとけのない新橋界隈の光景はまるで別の国のようだ。妻もかつてすぐそばの都銀本店におり、深夜残業の帰りにここを通ると、優雅にカクテルを傾けるカップルが目に入り羨ましいと思ったらしいが、今回はこうしてこちら側に座り、最終営業日に立ち会うのは不思議な感じがすると述懐している。
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