海上コンテナの逼迫
アメリカのSNS画面にはいま"Bare shelves Biden"なるハッシュタグがよく出てくるらしい。バイデンのからっぽの棚とでも云おうか。武漢ウイルス禍による流通経路の乱れで食料品を中心にスーパーの棚から商品が消えた状態を指す言葉で、バイデン政権の無策を表現しているとのことだ。アフガン撤退の混乱に始まりインフレの過熱、地球温暖化対策の思いつき愚策など、与党である民主党支持者からもバイデン政権の施策が呆れられ、予想通り政権はヨレヨレの状態になっており、この秋の中間選挙が危ういと云われている。まるでルーピーと云われた鳩山首相の民主党政権を見ているようだとする我が国の識者もいる。それはさておき、政権攻撃のキーワードが物流混乱に由来するというのもいかにもウイルス禍の世相を物語っている。
我が国でもマクドナルドのフライドポテトが輸入困難でL・Mサイズの販売を一時休止しているほか、サントリーがコンテナ不足により一部の輸入ワインの販売を取り止めるなど、物流の混乱が生活に影響を与えている。輸送用コンテナが足りないためにコンテナ貨物の海上運賃は高騰し、今期(2022年3月期)は日本の船会社3社(日本郵船、商船三井、川崎汽船)でつくるコンテナ船運航会社Ocean Network Express社(ONE)の利益は1兆円をはるかに超えるというから驚きである。リーマンショック前の海運バブル時代には、大学を出たばかりの船会社の新入社員ボーナスが父親のそれを軽く超えたとか、不況慣れでボーナスの最低金額の取り決めは労使間にあるものの上限の設定がなく、慣行に従うとあまりの額の多さに慌てて会社が組合に協議を申し入れたなどという話を聞いたが、いまの後輩たちはそれを遥かに超える市況高騰を享受しているはずだ。一体いくら彼らはボーナスを貰えるのだろうか羨ましい限りだ
この国際コンテナ輸送の混乱はいつまで続くのか、海事プレス誌1月13日号にONEのニクソンCEOのインタビュー記事が掲載されていた。それによると現在の輸送需要は通常時を100とすれば103~105だが、問題はサービスを提供する側にあるとのコメントである。特にアメリカ側の混乱が大きく、ウイルス禍により労働者不足の港湾・鉄道・倉庫・配送センターなどでコンテナが滞留し、太平洋岸の基幹港ロサンジェルス・ロングビーチ港では100隻近い船が滞船しているそうだ。さまざまな対策を講じているものの、2022年度に完全に正常化することはないだろうとのこと。また今年は米国では最強のILWU ( INTERNATIONAL LONGSHORE AND WAREHOUSE UNION = 港湾荷役労働者 )の労使交渉があり米国港の生産性が低下する恐れもあるとされる。今後は運賃競争よりもしっかりスペース(コンテナ)を供給し、鉄道や内陸輸送を含めて安定的なサービスを提供できるのかが期待されると彼は述べている。まあこの時期が過ぎれば需要を当て込んだ新造船の供給過多によってまた過剰船腹で悩む、という歴史を繰り返すのだろうから今はしっかりと稼いだらよろし、とニュースを見ながら一人呟く。
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今朝の報道によると、大手3社の最終利益は過去最高の2兆円を越えるとのことです。海外の社も莫大な利益を挙げていることでしょう。
今後、この利益を何に投資するかが、各社の命運を分けるので、経営者の悩みも大きくなるでしょう。
ファンとしてはこれをきっかけに次世代型の新しい輸送の姿が生まれてくるのを期待しています。
投稿: 健ちゃん | 2022年2月 4日 (金) 20時14分
健ちゃんさん
投稿ありがとうございます。お久しぶりです。
海運各社は、この儲けを脱炭素社会時代に向けLNGや水素などを燃料とした新造船舶に投資するのでしょうね。
(私自身は当ブログでも書いているように、地球温暖化対策や脱CO2などは、環境をネタにした金儲けの新手ビジネス乃至は新たな政治的プロパガンダの側面が大きいという気がしてしょうがないのですが・・・。)
これだけ儲かれば各社は自社船の償却を早めたり、税の繰り延べをしたいところでしょうが、日本の海運税制では無理ですね。せめてチャーターしている船のチャーター代(用船料)を、税務署につつかれない程度に約定より上げて、船主に貸しを作っておくくらいですか。あるいは様々な関連業者に便宜を与え、来るべき不況に備えて、彼らの体力をアップさせておくとか。(これも今のコンプラアンス社会で難しいのですが)
あとは健ちゃんさんが言われるように思い切って未来のために新規事業に投資することも期待したいです。リタイアした身としてはいま何が期待できるのか思いつきませんが、このウイルス騒動が収まったら人の輸送や旅行ビジネス、海外との交流は必ず復活するはずです。従来のクルーズ船とは違った客船ビジネスなどが出来たら良いと思っています。
投稿: バルクキャリアー | 2022年2月 4日 (金) 23時10分