LP レコード 大人買い
家のリフォームで居間が広々としたので、これを機に再びLPレコードに凝っている。これまで何度かこのブログでアップしたとおり、若い頃は給料を貯めてはかなり高価なオーディオ機器を購入し、LPレコードも数百枚ほど所有していたが、結婚やら引っ越しやらで大きな装置はみな捨ててしまった。音源もCDやカセットテープに買い替えてしまい、LPレコードは必要最小限でどうしても聞きたいもの30枚ほどに絞っていたのである。ところが広くなった新しいリビングでLPレコードを取り出して聞いてみると、スピーカーから出る音はやはりCDよりはるかに活き活きとして聞き応えがある。
人間の耳は20ヘルツの低音から20000ヘルツくらいの高音まで聞くことができるとのことで、CDはこれに合わせて22000ヘルツより上をカットして録音しているそうだ。一方でLPも同じように22000ヘルツ以上はカットされているが、なにせアナログの世界なのでこれ以上の高音も録音されているとされており、これが「LPの方がCDより音が良い」と云われる理由らしい。実際に聞き比べてみるとポピュラーの音楽では両者の再生音にはそれほど差がなく、むしろCDのシャープなサウンドが良いと感じる場合もあるが、クラシック、特に大編成の弦楽器の演奏においては、LPの方が圧倒的に音の厚みや弦のふくよかな響きが伝わってくる。
リフォームを期に不要なものは捨てたうえ収納場所も以前より増えたので、レコード盤に針を落とす度に捨て去った過去のLPレコードを買い戻したくなってきた。そういえば中学生になって自分の小遣いで初めて買ったのが、バックハウスとハンス・シュミット・イッセルシュテット指揮ウイーンフィルによるベートーベンのピアノ協奏曲「皇帝」で、レコード盤が擦り切れるほどよく聞いたものである。高校の入学祝いで講談社の「ステレオ世界音楽全集」を全17巻買ってもらい、各々2枚入っていたロンドン盤のLPに収録された世界の名演奏も飽くことなく聞いた。その他ベームのベルリンフィルやアンセルメのスイスロマンド管弦楽団など、自室で寝転がってステレオの名盤を聞いた若い日の情景が時々頭に蘇ってくるのだが、そんな思い出の名盤もすべて引っ越しのごみとなって消えてしまった。
幸い自宅から程近い神田神保町には中古レコードを販売している店舗が何軒か健在である。ただ移り変わりの激しい東京の街だからこの界隈もどう変貌するか分からない。思い立ったが吉日と散歩がてら中古レコード店を廻って、かつて持っていた懐かしのLP版を中心にレコードを買いあさることにした。中古品ゆえ店やレコードの状態によって値段はかなりの開きがあって、1枚数百円の盤から2千円もするかつての新品と変わらないものもある。学生時代なら2千円のレコードを前に買うか買わぬか店頭で逡巡したが、そこはシニアの余裕、人生で二度とこのレコード盤には出会えぬかもしれぬと腹を括り、躊躇なくエイヤッと大人買いするのである。新しい居間でコーヒーを沸かし、購入したレコードに静かに針を落とす瞬間がなんとも言えない。
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