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2021年12月19日 (日)

そろそろ旗幟鮮明に、岸田首相

20211218will

ここ数年、定期的に1~2週間遅れで読み終わった週刊文春と週刊新潮を知人から貰っている。週刊文春はどうしたわけか、このところ左旋回とポピュリズムにおもねったような記事ばかりで、冴えもなくあまり面白くないが、週刊新潮には武漢ウイルス騒動にしても、眞子問題にしても「オヤッ!」と思わせる切り口の記事があって、最近はもっぱら新潮の方を読む時間が多い。特に週刊新潮12月16日号の「真珠湾攻撃80年の真説、日本はなぜ米国と開戦に突き進んだか」とする牧野邦昭・慶応義塾大学経済学部教授の特集記事は目を引いた。現在は石橋を叩いても渡らないような慎重な日本人だが、世界を相手に大東亜戦争に入った時の我々の父祖の代は、今とは違う何か特別な世代であったのか、と云うのは私にとってまだ解答が見えない永年抱いてきた疑問である。


この特集記事では、満州国の経済建設に関わった陸軍の秋丸次郎主計中佐の「秋丸機関」関係書類が最近の調査で明らかになり、その中で読み解かれた事柄からなぜ日本が戦争することになったかを牧野教授が解説している。ヒトラーによる独ソ戦開始に伴い日本の軍部内では南進論と北進論が対立したあげく、結局両論併記となり、「当時の日本に明確な方針がなく・・・近視眼的な選択をしていったことで、とりうる選択肢が狭まって行き、最後は極めて高いリスクを冒して戦争に賭けることになってしまった」と記事は述べる。メディアや議員が対米強硬論を主張し、世論がそれを支持すると「集団心理が働くと極論が支持される」ようになり、戦争に勝つ確率はごく低いのに「様々な情報のうち都合の良い部分」を材料として、「人間は希望的観測にすがりたくなります」とする。長期的ビジョンの欠落が希望的観測を過大評価し、その場の状況に応じて近視眼的な判断をして、かえって国が行き詰まることを牧野教授は警告している。


同様な指摘は月刊"WILL"1月号の葛西敬之氏(東海旅客鉄道会長)と櫻井よしこ氏による「太平の眠りから覚めよ、日本!」と題する対談記事からも読み取れる。対談のなかで、第二次大戦の欧州でフランスがあっさりとドイツの占領下に置かれたのに対し、チャーチル率いるイギリスは挙国一致でナチスと戦った例を踏まえ、リーダーが現実を直視しその現実を国民に告げる必要がある事を2人が話している。葛西氏は、中共の覇権主義と軍拡を前にして、「国家の礎ともいえる安全保障について国民が危機意識を共有しなければ、民主主義そのものが成り立たない」と危機感を顕わにし、大東亜戦争後「多くの政治家、リーダーたちはそれ(=国家が進むべき道を示すこと)をせず、(近視眼的に)民意に従い寄り添うこと」ばかりを選んできたとしている。「その点で、安倍氏は確固たる国家感、歴史観、世界感を持ち・・・メディアを敵に回す覚悟を決めて安保法制を成立させたことで、集団的自衛権の道を拓いた」と氏は安倍元首相を称える。まさに同感である。


さて大東亜戦争から76年経過し、日本は初めて自ら対中共に対する長期的ビジョンを明確にすることが求められている。台湾危機も取り沙汰される中、日本は地理的に中共と対峙する最前線に位置する一方、経済的には日中両国は深く結びつき相互依存体制を築いている。きわめて我が国の立場は微妙であるがゆえに、今般の米英豪カナダなどの北京オリンピック「外交的ボイコット」に対して、「オリンピックの意義、わが国の外交にとっての意義などを総合的に勘案し、国益の観点から判断していきたい」と岸田首相はあいまいな姿勢を取り続けている。しかし戦前の南進・北進論と同じく、自由と民主主義を共有するアメリカの側につくのか、欲に目がくらんで専制独裁主義の中共につくのか、今こそリーダーの決断が試されているのである。このままずるずると近視眼的な場当たり姿勢で米国の安全保障にすがりつつ、中共とはつかず離れず、しかし経済的にはエンジョイしたいというムシの良い「両論併記」を我が国は続けることができるのか。自由や民主、人権とは程遠い強権的覇権国家を目指す中共とあいまいな姿勢で対峙することは、結局国家の存在を危うくするのではないか。かつて長期的ビジョンの欠落、近視眼的な対応が大日本帝国を危うくしたが、今は国内の経済団体を敵に回しても、経済に多大な影響があろうとも国家の大計のためには、中共と一線を画すべきだと私は確信する。そろそろ岸田首相には、旗幟鮮明に対中非難決議や北京オリンピックの外交ボイコットを発表してもらいたい。

 

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