カーナビとドライバーの感覚差
カーナビに素直に従ったら林道のような狭い道を走ることに(函南付近)
先週末は湯河原温泉に一泊で遊びに行った。宿はまだそれほど混んではいなかったが、往復の東名高速道路はけっこう交通量が多く、やっと皆が外に出掛け始めたことを示していた。せっかくここまで来たのだからと、帰りに御殿場近くにある妻の父が眠る富士霊園に寄ることにした。湯河原から富士霊園までは北西に向かい箱根連山をこえて直線距離では30キロほどで、このあたりは良くドライブに来たことがあり何ということもない快適な山道である。しかし会計を済ませフロントで「この前の道を上っていけば箱根峠に出ますよね」と念のため尋ねると「湯河原パークウェイがこの夏の崩落で通行できないので、御殿場へ行くなら熱海から回ることをお薦めします」と云う。ということで仕方なく遠回りになるが熱海経由で箱根を目指すこととした。
熱海の市街地は狭い海岸沿いと急傾斜に曲がりくねった細い道が多く、助手席の妻はこの辺りでスマホの最新ナビゲーションガイド(google)をオンにし富士霊園へのルート検索を開始した。我が愛車BMWのナビは画面が小さくて見づらいうえ、何と言っても2008年製の古いソフトのまま更新もしていないので、どうせ見るならと妻はスマホの最新版を頼りにしたいらしい。とはいうものの私はナビが嫌いでほとんど使ったことがない。これが発する「この先、右方向です」などと云う音声ガイドを聴いても、道なりにじんわり右方向へ進むのか、ごく小さい横丁を意識的にシャープに右に入っていくのか判然としないことがあり却って混乱することが多い。以前あるゴルフ場へナビのルート案内に従って運転していたらいつまでも田舎道が続き、「目的地付近に着きました」の声で周囲を見るとゴルフコースから遠いゴルフ場の従業員宿舎の前で、集合時間に遅れてしまったこともあった。
運転にはアナログの地図帳を見るのが一番だと思っているものの、この日は久しぶりに熱海のごみごみした街を抜け箱根ルートを辿るので、スマホの画面と音声に素直に従うことにした。熱海の街を抜けて箱根外輪山にとりつき3キロ弱、道路はぐんぐん高度を上げて笹尻という三叉路に差し掛かった。分岐箇所の道案内には右方向は箱根峠、左は熱函道路、三島方面とあるので当然の如く右へ進もうとすると、ここでナビは左へ行けと指示してきた。「ムッ!こっちのはずなのに」と一人唸るも、相手は最新のナビである。右へ行けば新しい崩落個所でもあるのかとまずは素直に左に行くことにする。ところが曲がってみると長いトンネルを抜け、道は箱根外輪山から函南、三島方面に向かって下るだけで、このあたりで「ン!?これは一部不通箇所の迂回などではなく、ナビの意図と私の想定が完全に噛み合っていないのでは?」と思い始める。助手席の妻はと見ると「いずれ富士霊園に着くわよ。箱根の峠道は気持ち悪くなるからこっちの方がいいわ」と涼しい顔である。
下り続けて山麓の集落まで来たら、今度は「函南駅方面へ右折してください」とかなりローカルな道を示してきた。ナビは箱根を突き切るのでなく、最寄の第2東名高速道路のICに誘導し、今春開通したばかりの新御殿場ICを目指しているのがはっきりしてきた。「オイオイ、俺はただ箱根へ北上したいだけだよ」とハンドルを握りながら焦り出すも、分岐点をとっくに過ぎて引き返すには時すでに遅しである。箱根を通ることを信じて疑わなかったから、経由地設定もしなかったのが痛い。地元のクルマがたまに通るだけのローカルの道を辿り、次にナビが「ここを左方向です」と指定したのは農家の庭先をかすめて、すれ違いも難しいような山林の中の道路であった。このナビは何としても最短距離で我々を強引に第2東名に導きたいらしいが、もしここで何かあったら他のクルマは来ないし、助けを呼ぼうにも電波が届くのか?とさえ思える寂しい急坂の山道である。
右左折を繰り返してやっとのった国道では左に海が見え、大阪方面に向かっているではないかと一瞬不安になりつつ辿り着いたのは第2東名の長泉沼津ICであった。終点の第2東名・御殿場ICから富士霊園へも、これまでの経験や勘とはまったく違うルートを示され、運転していても面食らうことばかりで、目的地に着いたらドッと疲れを感じた。もっとも到着した時間はナビの示す予定時刻通りだったし、帰宅して計測すると私の当初の予定とナビ通りに走った実際の走行距離差は、10余キロほど遠回りした程度である。予期せぬ高速料金はあったものの人出が増え出した箱根山中の渋滞を考えると、最新のスマホナビのルートはむしろ合理的な選択だったのかと改めて見直している。それにしても走り出す前に「これからルートを案内します。その中には高速やトンデモない里道もありますので驚かないで下さいね」くらいの親切な事前案内があったら良かったのにとアナログ派の私は苦笑している。
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