再エネ偏重や脱炭素政策の危うさ
オランダ沖の北海に林立する風力発電の風車群 2011年5月飛鳥Ⅱより
欧州では電気料金が高騰しているという。脱炭素政策を進めるために火力発電を減らし、風力発電を促進してきた西欧だが、今夏は風が弱く十分な発電量が確保できなかったのが原因である。風力発電といえば北海に面したオランダでは、古くから風車が有名であった。名物の風車が動力源として使われて来たとおり、ここでは卓越する風を恒常的に利用してきた歴史がある。クルーズ船でヨーロッパ大陸と英国の間にある北海を航行すると、この海域に無数の発電用風車やオイルリグが設置されているのを見ることができる。大西洋や地中海からオランダやドイツなど北欧の諸港に向かう船のなかには、ドーバー海峡入口で風車やリグとの衝突をさけるために北海パイロットを乗船させる船長がいるが、それほど広い海域に数多くの風車が林立している。
その頼みの風力発電が不振とあって、求めた代替エネルギーの天然ガスは、中国の爆買いや産地メキシコ湾のハリケーンで価格が高騰し、英国ではエネルギー会社の破綻が相次いだと報じられている。特に影響が大きいのは、脱原発や再生可能エネルギーの『模範優等生』だったドイツで、ここでは脱炭素政策で火力発電所の削減を急いだため、エネルギー価格高騰によって引き起こされる問題が深刻になっている。インフレ懸念の高まりとこの秋・冬には大規模なブラックアウトの発生がこの国で危惧されているのだと云う。ヨーロッパ各国は送電網で繋がっているうえ、ドイツはロシアからパイプラインで天然ガスの供給もあるにもかかわらずこの状況である。これに対し「再生エネルギーを無暗に優先し、安定供給をおろそかにしたツケが回って来た結果だ」とキャノングローバル戦略研究所・杉山大志氏は10月5日付産経新聞「正論」で批難する。
地球温暖化の原因が二酸化炭素だという「ポリコレ」に日本は追従させられている。菅義偉前首相は2050年までにカーボンニュートラル(脱炭素)を実現すると言い、さらに小泉元環境大臣がまったくの思いつき、ウケ狙いで目標値をさらに引き上げてしまった。しかし自民党総裁選挙の際、河野太郎氏の中国での関連会社に関わる問題で広く知られたのが、太陽光パネルは中国が世界の市場を席捲しており新疆ウイグル自治区がその製造に深く関わっているという事実だった。また「電気自動車や風力発電を大量に導入するなら、そこで使われるレアアースはかなりの程度、中国、それも人権問題を抱える南モンゴルからの供給」(上述:杉山大志氏)だとされる。安全保障の観点からも、人権問題からも脱炭素政策によるシナ頼みは大問題なのである。今回の欧州の例を見ても「お天道さま頼み」「風まかせ」の再生可能エネルギーではなく、我が国は優れた技術をもつ火力発電や原子力をエネルギー源としてより活用すべしだと確信する。原発についてはさっさとフルに動かすとともに、地震や津波など災厄の多い我が国ゆえ、より安全な防御策の構築にこそ大規模な予算を投ずる必要があるのではないか。新らしく任命された経済安全保障大臣に期待したい。
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