飛鳥Ⅱ「秋の瀬戸内航行 土佐クルーズ」その3(完)
11デッキ後方にあるリドカフェ&リドガーデンでは”アスカバル”と銘打って新しいサービスが始まっている。ここでは毎夕5時過ぎから無料の生ハムやチーズ、簡単な和食、焼き鳥に串揚げ、スイーツなどの居酒屋メニューが並べられ、これらを肴にワインや日本酒が楽しめるようになった。従来、午後の時間帯はリドガーデンでピザやハンバーガー、日によってたこ焼きやラーメンなどのスナックメニューを注文できたが、それに加えての”アスカバル”開始とあって、本船の食事のラインアップは大幅に拡充されたことになる。「秋の瀬戸内航行 土佐クルーズ」のような短い日程では利用者もごく少なかったものの、長期に乗船するワールドクルーズとなれば船内生活の目先を変えるために利用者も多くなることだろう。今回このアスカバルでは夕方6時までハッピーアワーでアルコール指定銘柄が半額になっており、2回目の夕食までちょっと小腹がすいた我々にとっては毎晩格好の「飲み屋」さんとなり重宝した(妻は予めネットでこのサービスの情報を仕入れており、普段は部屋飲み用に持ち込む缶ビールや乾きものを一切持って来ない徹底ぶりであった)。
さて夕方5時に神戸港を出港した飛鳥Ⅱは、その夜は小豆島の東の播磨灘で錨泊し、翌朝に備讃東瀬戸を抜けて、昼からこのクルーズのハイライトである三原瀬戸へ入った。関西と九州を結ぶフェリーが通る瀬戸内海の本航路は、備讃瀬戸を通過した後は来島海峡まで見どころがあまりないが、三原瀬戸は瀬戸内海の多島美を楽しむクルーズにはもってこいの水路である。ただ残念だったのは、ここには多くの名所が点在するのに、船長の案内放送がきわめて少なかったことだ。島の間を縫うかの狭い瀬戸は右舷遠くに鞆の浦、前方には多くの船乗りを養成する弓削島が横たわり、三原沖から振り返れば尾道水道に千光寺の屋根も垣間見ることができた。戦時中は毒ガスの研究、今はウサギで有名な大久野島のすぐ脇を抜けると、左舷近くの大三島の森陰には大山祇神社が鎮座しているし、さらに当日はあの"ガンツウ”もゆったりと遊弋していた。私にマイクを握らせたらいくらでもこの近辺について説明できるのにと思いつつ、この地の美しさや歴史をもっと多くの乗船者と共有したいという気持ちが沸き起こった。水路を抜けた後の伊予灘では、テレビで有名なDASH島に近寄るというサービスがあっただけに、三原瀬戸のアナウンスがごく少なかったことは惜しまれる。こういう風光明媚な航路では、船内でガイドフォンを無料で貸し出し名所案内をしたらどうだろう。
3日目はこの航海唯一の寄港地である高知に入港であった。武漢ウイルス禍以来久方ぶりの客船入港とあって岸壁には地元メディアのカメラがそこここに見うけられた。しかし高知では残念ながら自由行動は許されず、船会社主催の無料観光バスは桂浜往復のみ、船から出る有料ツアーは桂浜と高知城(ただし城内の入場なし)だけの見物でなんとも味気ない。せっかくここまで来たのだから有名な「はりまや橋」でも見ておきたいところだが、これはいずれまた別の機会に譲るとし、今回はまずは船に乗ることが目的と気持ちを切り替えた。無料コースを選びバスで15分ほど揺られて着いた桂浜には、大きな坂本龍馬の銅像が太平洋をにらんで立っていた。浜茶屋の看板に「海の向こうはカリフォルニア」と書かれているとおり、龍馬ならずともこの海岸に立てば海外雄飛の夢が自ずと湧き上がってくるかの景色である。正調よさこい節の踊りや「南国土佐をあとにして」のメロディに送られ、その日の夕方に本船は高知新港を解纜。翌日の神戸港下船は午後2時とゆっくりだったのはクルーズが一日増えたようで嬉しい日程だった。久方ぶりの楽しい3泊のショートクルーズだったが、パーティションやら体温計の感染対策が目立つ船内が、早く元の姿に戻って欲しいものだと思いつつ帰りの新幹線に乗車した。
因島大橋をくぐったあと右舷後方に坂の街尾道を見ることが出来た
TVでお馴染み、松山沖の由利島(DASH島)の西側と東側はトロッコで結ばれている
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