"EVER GIVEN"スエズ運河で巨大コンテナ船座礁(続々)
スエズ運河のムアリングボートマンたち。万一の為に乗船してくるが客船上ではデッキで土産物を売る事に専念している。(2018飛鳥Ⅱワールドクルーズにて)
どうやら"EVER GIVEN" 号は離礁したようで、まずは一安心である。事故の原因究明はこれから始まるのだろう。私は航海や操船については門外漢ではあるが、事故の原因を探る上でのポイントを素人ながら下記に推測列挙してみた。
①遮るもののない砂漠地帯での突風と砂嵐が原因と云われているが、地中海向きの船が船団を組んで一列で航走していた中でなぜ"EVER GIVEN"号だけが針路を違え事故をおこしたのか。パイロットの指示は?船長とパイロットは協調できていたか?
②水深が24米と浅い水路の中で船団を組んで8ノット程度の速力で走っているときの本船の舵の効きどうであったか。一般論としては水深が浅く船の速力が遅いと舵が効きにくくなる。突風が吹いていた時に本船の速力がどうだったのか。もっと遅かったのか?サイドスラスター(船体を横向きに移動させるプロペラ)を使用するような状況ではなかったのか?
③スエズ運河通峡には万一に際に備え、タグボートとの間でもやい綱を遣り取りするためにムアリングボートマンと呼ばれる作業員が乗船して来るが、タグボートやこれらボートマンは規則通りに機能したか。
④狭い水路で突風が吹き荒れた際には錨を降ろすことができず(錨をおろせばそこを起点として本船が振れ回る)、大型船はただ前進あるのみで非常に危険な状態になると考えられる。当日の朝の天気予報では突風や砂嵐の吹く可能性はどうであったのか。
⑤"EVER GIVEN"号はまだ船齢も若いので重要な航海計器や舵の故障は考えにくいものの、ブリッジやエンジンルームの乗員配置を含めて本船は運河通過のための堪航性が保持されていたのか。
⑥本船は10段ほどコンテナをオンデッキに積んでいるようだ。この状態で、ブリッジから狭水路を航行するのに十分な視界が得られていたのか。(かつて北米航路コンテナ船の配船担当だった時代に、ミーティングで各船船長から怒られたのは寄港地のスケジュールが厳しすぎて寝る暇がない、ブリッジ前に荷物を積みすぎて前が見ない、オンデッキの荷物が過大で船の重心が高すぎ復元性が心配だ、の3点だった)
⑦オンデッキ10段積みの状態では横風に対して水面上に長さ400米x高さ50米ほどの巨大な壁ができる事になる。同じ20万重量トンクラスでも原油タンカーなら満載状態において風に流される面積は水面上10米ほどの高さ(乾舷)にしかならない。そもそもこのような巨大「コンテナ船」が、オンデッキにコンテナを高々と積み上げてスエズ運河を通る際に、風に対する安全性は確認されているのか。船舶の排水量に応じたオンデッキの高さ制限が必要でないか。
以上である。
砂漠の中を地中海から紅海に向かうスエズ運河通峡中のコンテナ船。マースクラインのこの船はデッキ上8段積んでいる。ブリッジからの視界は十分なのだろうか?
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