飛鳥Ⅱ30周年オープニングクルーズに乗船して(改装リニューアル編)
武漢ウイルス禍で遠い過去のことのようになってしまったが、飛鳥Ⅱは今年正月明けから3月までシンガポールのドックで改装・リニューアル工事を行っている。燃料油の環境規制が今年1月から世界中の海域で適用されることになり、スクラバーと云われる排煙から硫黄酸化物を除去する装置装着が必要になったが、その工事に合わせての本格的改装・延命工事である。本船も船齢すでに30歳となって各種設備の検査・交換期限も迫ってきたうえ、船体は錆が目立ち、内部も時代に合わせて改装する必要があったはずだ。もっとも諸外国のクルーズ船が行う大幅なリニューアルに比べるとよほど簡単かつ小規模な改装工事に見えるのだが、それは飛鳥Ⅱのコンセプトがこれまで日本人の顧客に受け入れられてきた証左ともいえよう。今回は感染症対策が脚光を浴びていたが、この改装後の船内を体験したいとの気持ちは今年の春以来とても強かった。改装工事後の姿を思いつくままに列挙してみる。
①目につく船体外部のほとんどの部分は、錆うちして白いペンキで初々しく再塗装されている。デッキのハンドレールもやすり掛けの上、丁寧にニスが塗られて見栄えも気持ちも良かった。それでもペンキ厚塗りだけで済ませた部分もちらほら見られ、早くも錆汁が垂れている箇所も目に付いた。特に看板のファンネルは手が付けられていないようで、二引きの塗装周囲もうす薄汚れていたのは残念なところだ。新造船並みに修復するのは無理としても、せっかく時間は有り余るほどあったのだから、ファンネルや錆汁はドックでクリーンアップしたらよかったのではないだろうか。現状はデッキクルーの人数も半減らしく十分なメンテができないだろうから、余計にドックで全船さび落とし研磨を行わなかった事が残念に思える。
②新装露天風呂はとても快適であった。遮るものがない風呂から流れる雲や広い海を眺めるのは極楽といってよいだろう。広くとった開口部から適度に吹き込んだ海風が火照った頬をなでて流れて行くのがとても気持ちが良い。フェリーの露店風呂は何度か経験したが、今までで一番素晴らしい船上の露店風呂であるといえよう。10ノットくらいで走っている時もそこそこ風を感じたので、20ノット近い全速航海の時や荒天時は風が吹き込んで寒くならないかはちょっと心配である。ただ風呂前は広く開口されているので湯舟から立ち上がれば外からは裸が丸見えになっててしまい、港内や停泊中は鍵がかかって使用禁止となる。大きな橋が連続する瀬戸内海などを昼にクルーズする際に、どういう運用方法を採るのか興味は募る。
③Wi-Fiの接続環境が改善し、以前はPCルームなど一部の公室でしか使用できなかったのが客室からも利用できるようになった。また、衛星経由のインターネット接続は従量(時間)制で課金されていたものが、1日に30分×10回(回数は客室カテゴリーにより異なる)まで無料となったのは時代に即した進歩といえよう。ただ今般の感染症対策プランの中に「客室内に設置している印刷物の一部を撤去し、お客様のスマートフォン等によるQRコードの読み取りで内容をご確認いただきます」との一文があり、船内設備やデッキプランは各室に置かれていない。これにはさほど不便を感じなかったが、リドやバー、メインダイニングでもメニューを出さず乗船当初は「QRコードでお読み取り下さい」と言われたのにはちょっと驚いた。戸惑っているとウエイターは一息おいて「紙メニューもあります」とおずおずと印刷物を出してくる。もっとも翌日には最初から紙を出してくれるようになったが、ふつうスマホは船内で持ち持ち歩かないし、そもそもスマホなど持っていない高齢者もいる。外国船のように何でもスマホで諸情報を伝達しようとやり方は今の段階では無理があろう。
④飛鳥プラザの大スクリーン設置やリドグリルの全面改装、パームコートの家具新替えなど船内あちこちで新しい飛鳥の情景が見られる。内装は総じて重厚正統派からコンテンポラリーかつカジュアル指向に進んでいるようだ。一方でフォトショップは来年早々にクローズとなるのは、とても残念である。IT化の進展に伴い紙の媒体の販売が減少しているのが原因との事であるが、規模を縮小してもプリントした写真を撮影・販売する設備は船内に残して欲しい。また各部屋からもDVD再生機が撤去され、ベッド前の大画面でオン・デマンド映画を観ることになったが、肝心のプログラムはあまり見た事のない邦画ばかりが並んでいた。洋画の拡充やお笑い・コメディなどのソフトの充実がなければ、ロングクルーズに乗る際は私たちはDVD再生機に自前のソフトを持ち込む必要がありそうだ。オンデマンドTVは今後ラインアップの充実を望みたい。
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