ダイヤモンド・プリンセス騒動
2014年4月基隆港の”ダイヤモンド・プリンセス”
Holland America Lineの”フォーレンダム”号船上から
新型コロナウイルスの感染で、「初春の東南アジア大航海16日間」から帰ってきた11万6千トンのクルーズ船”ダイヤモンド・プリンセス”の乗客2700人が14日間も船内に留め置かれることになった。乗客はこの間、自室から出られず、窓のない内側キャビンの乗客などは外の様子をうかがおうとしても、部屋のテレビに映るブリッジからの映像しか見られないはずだ。僅か16㎡の内側キャビンの乗客たちは閉じ込められた2週間、ただテレビを見るか、無料開放されたと云うネットでパソコンやスマホで無聊を慰めるしかない。食事は部屋に配られるようだが、アルコールなどは注文できるのだろうか。洗濯はどうするのだろうか。クルーズ船だけ悪く目立っているが、この調子なら飛行機の機内の感染はどうなのだろうか。※注(下記)
数年前、乗船した飛鳥Ⅱがホノルルでコーストガードの検査により一晩出港差し止めになったことがあった。乗客は町の喧騒を前に上陸できず船にとどまっているしかなかったが、自由に船内を移動できるその一晩でさえ待っている時間はイライラしたものだ(もっとも妻はクルーズが延びてゆっくりできるとよろこんでいたが)。今回は長期にわたる自室留め置きで、楽しいはずのクルーズなのに、乗り合わせた乗客の気持ちを考えるとまことに同情の念を禁じ得ない。一方で1000人以上乗っている本船のクルーはどうしているのだろうか。食堂のサービスクルーやデッキクルーの一部も「濃厚」に乗客と接しているはずである。下の職位のクルーはふつう数人で部屋を共有してるが、彼らも部屋から出られないのだろうか。船内感染を防ぐためなら乗客だけでなくクルーも同じ処置になるのかと思うも、その辺りのことはまったく報道されない。
閉ざされた小ワールドであるクルーズ船では集団感染がおきやすく、しばらく前にノロウイルスによる食中毒事件も話題になったことがある。現在も香港の啓徳クルーズターミナルでは大型クルーズ船がダイヤモンド・プリンセスと同様に、コロナウイルス騒ぎで立ち往生していると報じられている。もっとも世界はクルーズ船ブームで、新造客船を作る造船所はどこも数年先まで建造予約で一杯だ。ことに中国人マーケットを意識した新造大型船の案件が目白押しのなか、今回の中国を発端とする騒ぎでこのブームも冷や水を浴びせられるのかもしれない。建造計画がキャンセルされたり複数船を建造するオプション契約の行使が見合わされたりする事も想定されるが、考えてみるとこういう時こそ船台の空いた造船所で船を造るチャンスではある。船の価格はブームか否かで大きな差がでるもので、飛鳥Ⅱやにっぽん丸など老朽クルーズ船の代替に頭を悩ます邦船社には、新造発注の好機がやってくるかもしれない。
さて”ダイヤモンド・プリンセス”は乗ったことがないが、本来ダイヤモンド・プリンセスと命名されるはずだった姉妹船の”サファイア・プリンセス”には10年ほど前にロス発着のメキシカンリビエラクルーズで乗船したことがある。この時は日本人はごく少数だったが、天気に恵まれ広く大きな船体で楽しい思い出が一杯だった。同型船である渦中のダイアモンド・プリンセスは日本近海でクルーズを展開するために、改造工事を経て大浴場など設置され人気も高く、我々もいつかは乗ってみようかと思っていたところだ。今回のコロナウイルス騒動は春にかけてなかなか治まらないという予想もあるし、欧米では中国人だけなく今後アジア人全体が差別的取り扱いを受ける危惧もありとの観測もあるようだ。しかし高齢者に優しく家族で乗っても楽しくラクチンな旅行形態がクルーズである。一刻も早く事態が収拾され気兼ねなく世界の国々をクルーズする日が早く戻って来るように祈りたい。
※注)その後のニュースで内側キャビンの乗客は、時間を限りプロムナードデッキに出られるようになったとされている。まずは良かった。
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