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2019年11月11日 (月)

にっぽん丸の事故(4)米国運輸安全委員会調査報告書

20191111nipponmaru

昨年12月30日にグアム・アプラ港で起きた”にっぽん丸”桟橋衝突事故に関して、10月23日に米国運輸安全委員会・NTSB(National Transportation Safety Board)から事故報告書が出された。このブログでも今年1月に3回アップした通り本件に対して興味を持って見守ってきたが、今回のNTSB事故報告は簡潔明瞭に作成されているでその概要に沿って以下所見を述べたい(日本の国交省運輸安全委員会の事故調査報告書は現在調査中)。
にっぽん丸のグアム事故(2019年1月12日)
にっぽん丸のグアム事故(その2)(2019年2月2日)
にっぽん丸のグアム事故(その3)(2019年2月11日)

<事故概要>
事故はニューイヤー グアム・サイパンクルーズ催行中、昨年12月30日夜21時13分にグアムのアプラ港で発生した。当時の気温は摂氏27度、北西の風5メートルで海上は静穏であった。本船は次港サイパンに向け出港準備を整え2050にパイロットが乗船、船首には一等航海士、船尾に二等航海士、ブリッジには船長の他に三等航海士が出港ワッチに当たっていた。2104に最後の係船索が解かれ本船は船長がウィングブリッジにあるジョイスティックを操作し離岸、港内で後進・回頭して出港しようとするなか(画像)、船は後進で対岸の米沿岸警備隊(COAST GUARD)のドルフィン(係船岸壁)に2113に船尾から衝突、50万ドル以上とされる被害を岸壁に及ぼした。

<事故時操船状況>
船長は本船に28年間、船長として6年乗船し当港には10回寄港、同じパイロットの嚮導で操船した事もあって港内の状況は良く知っていた。またパイロットが乗船した時間に船長はブリッジにおらず、にっぽん丸の会社=商船三井客船(MOPAS)の品質管理基準で必要とされる船長とパイロットの出港手続きに関する確認はなかった。ジョイスティックを握る船長は後進旋回中に見当識を失った(lost sense of orientation)らしく、ジョイスティックを誤ったポジションである後進をかけたままにし、行き足がつきすぎて3ノットで船尾から対岸にぶつかった。

後進中、パイロットはDead Slow Ahead(微速前進)、Hard Port(左舵一杯)、Half Ahead(半速前進)など、後進衝突を止めるべく船長に指示をしたが、船長のエンジンに関する復唱はなく操船は変らなかった。この間、船尾の二航士やタグボートから対岸が迫ってきた事を告げる報告が数度あり、パイロットはタグに衝突回避のためよりパワーを要求、ブリッジの三航士もジョイスティックの位置がFull Astern(全速後進)になっている事を船長に告げ、船長からジョイスティックを取り上げようとしたが船長に阻止(rebuff)された。

<事故後の検証>
怪我人が出ず本船の浸水もなかったため、にっぽん丸は一旦出港した岸壁に戻り、Coast Guardの調べを受けている。そのインタビューで船長は、当日1300に缶ビールを1本、1700~1800にウイスキーのソーダ割缶を1.5本、事故後に"To calm mind"(落ち着く)の為に缶ビール1本呑んだと供述しているが、事故後5時間の呼気アルコールは0.071ℊ/dlで、もっとアルコールを呑んでいたのではないかと報告書は推測している。なお米国の操船基準は0.04ℊ/dl、MOPASの基準は0.03ℊ/dlとの事で、我が国のクルマの酒気帯び運転は0.015ℊ/dl、飲酒運転は0.025ℊ/dlである。

NTSBの報告書は船長が飲酒の上、ジョイスティックを誤って操作した事が事故の主因としているが、ブリッジの三等航海士の証言では「船長にはブリーフィングや報告は要らない」と云われ、船内のコミュニケーションが良くなかった(power distance)状況があった事や、パイロット乗船時に打ち合わせがなかった事、本船オフィサーが日本語で報告しあっているのに対しパイロットやタグは英語でお互いに状況把握が十分でなかった事も事故の要因に挙げている。

<私の感想>
こうして見ると、この事故は最近のアクセルとブレーキの踏み違いの自動車事故と似ているような気がする。ドライバー本人は一生懸命ブレーキを踏んでいるつもりでも、足はアクセルを踏み続けてクルマが暴走し事故が発生すると言われるが、本船の船長も周囲から度々危険が迫っている指摘を受け、ジョイスティックをAstern(後進)からAhead(前進)にしているつもりが、実際はAsternのままで手が動いていなかったのではなかろうか。飲酒していることや日頃からブリッジ内のコミュニケーションが良くない事が、冒進の歯どめを失わせる事に繋がったのだろう。

さて今年の夏に小笠原クルーズで久しぶりに”にっぽん丸”に乗った際は、船長を補佐する副船長が乗船している上、着桟の際のエンジンの速度調整はジョイスティックでなく、ウイングの船長がブリッジ内の3航士ないしはクォーターマスターに口頭で指示する伝統的なやり方になっていた。MOPASも事故に懲りて様々な事故対策を実施しているようである。戦前から一貫して貨客船・移民船を運航し続けて来たMOPASは、この事故を機に見直すべき点は是正して今後は安全運航を期してもらいたい。

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