にっぽん丸で航く小笠原JTBチャータークルーズ(碧彩季航)その3 船体編
さて久しぶりの”にっぽん丸”である。2014年以来5年ぶりの乗船とあって顔見知りのクルーもゼネラル・マネジャーの川野氏だけだ。最近はもっぱら飛鳥Ⅱや外国船に乗っているので、”にっぱん丸”の雰囲気はどうなっているのか楽しみな乗船であった。”にっぽん丸”は1990年の就航で、その後改装されたものの、船体そのものは30才近いからさすがに外部階段などは老朽化が目立つ。しかし船内通路の絨毯は張り替えられたとみえ、擦り切れた箇所も見当たらず清潔で気持ちが良かった。また今回は400名の満船に近い乗客だったにも拘わらず、食事や催し物の入り口で長い行列ができるという場面はほとんどなく、なかなか合理的な船内プログラムや船内の動線配置がなされている事を感じた。2010年に新設されたEカフェ・ライブラリーは、ちょっと知的で快適な空間だったし、乗船したJTBのアテンダントたちも気を配って案内にこれつとめてクルーズを盛り上げていた。
ただ世界的にこのサイズの古い船は、全室スイートのラグジュアリー船となって生き延びるか、カジノなどを楽しむばくち船に転用されるケースが多いようだ。”にっぽん丸”は、とりあえず小改装して同じようなレベルで事業継続することをごく最近発表したが、このインフラで客船事業をこの先どう展開するつもりなのだろうか。たとえば今回”飛鳥Ⅱ”に比べると船体が小さい分、パブリックスペースの少なさがやはり気になった。船の楽しみの一つであるダンスをとってみると、会場のドルフィンホールは催し物のメイン会場でもあるから、ショーやコンサートの片づけが終わった夜の10時半にならないとダンスタイムが始まらない。さらに生バンドの登場は11時からとあって、こちらはもう眠りたい時間となってしまう。やはりダンス会場とショー会場が同じであるというのは無理があるのではないか。
更につねづね感じるこの船の運動する空間の狭さは、航海日が続く長期クルーズには不向きな気がしてならない。本船はデッキをジョギングすることが禁じられているから、運動不足解消にはフィットネスマシンが必須である。しかし”にっぽん丸”のマシンは冷房があまり効いていないごく狭いジムに申し訳程度においてあるだけで、これからの時代に長期クルーズを実施するにはお粗末だと思う。仮に同じ客層や同じ程度の料金でこれからのクルーズを展開するなら、一層のパブリックスペースや運動施設の充実がのぞまれる。
”食のにっぽん丸”と云われている点については、私の好みに合っているのか総じて”飛鳥Ⅱ”よりダシが効いた濃いめの味で美味しく感じた。さて今回発表された小改装を行った後”にっぽん丸”は今後に向けてしばらく様子を見ていくのだろうが、それにしても2万トンそこそこの船体規模で、このままのサービスや価格を維持していくのはなかなか難しいであろう。いっそ全室スイートルームの小型ラグジュアリー船に大改装して、金持ち老人向けに国内、近海のクルーズ船に特化したらどうであろう。最後に、正月のグアム事故以来であろうが副船長が乗船しており、船長も東京湾パイロット不要のベテランらしく、安全体制再構築への意気込みも感じた今回のクルーズだった事を記しておく。
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