にっぽん丸で航く小笠原JTBチャータークルーズ(碧彩季航)その2
大神山展望台からの一望(手前がおがさわら丸、右がにっぽん丸)
父島の一日、午前中はガイド付きの「人と自然の共生を学ぶツアー」に参加したあと、いったん”にっぽん丸”に帰って昼食をとり、午後は再び上陸して恒例の寄港地ジョギングである。ということで午後はまず通船が着く岸壁の目の前、大神山神社にお参りすることから始めたが、神社に続く参道は、都内新橋の愛宕神社より急な階段である。エッチラオッチラと酷暑の下、大汗をかいて石段を上り神社でお参りを済ませると、その裏手から展望台への小道が伸びている。ここまで来たからには、展望台で二見湾の遠望を楽しもうと、さらに歩を進め頂上にたどり着くと、目の前ににっぽん丸が浮かぶ青い海と、それを取り囲む緑の山が広がった。相変わらず気温は高いものの、ここは海洋性気候とあってほほを撫でる風は心地良い。父島の人口2200人ほどのうち8割が新島民だとガイドから聞いたが、この青い海と緑の山を目の前にすれば、島に移住しようという人が多いのもわかる気がする。
もっとも島の生活はそれなりに苦労も多いようで、島の診療所で処置できない傷病は八丈島か都内の病院にヘリや船で運ぶとのこと。また出産をする人は予定日のかなり前から都内の提携病院に移されるそうだ。ガソリンは現在リッターあたり180円くらいで都内より40円くらい高いが、これも50円の離島補助があっての価格である。島の道路は良く整備されているものの、クルマを買う際にも輸送コストのほかに防塩処理が必要だし、廃車にするにも輸送費がかかる。品川ナンバーの地域といえば、日本でも有数のベンツやBMWなど外車が多い場所だが、同じ品川ナンバーでもここでは軽自動車や商用車ばかり目につく。車検の検査場は島に一か所だそうだし、クルマが故障した際の部品取り寄せも大変だから、外車などは論外で汎用車が多くなるのだろう。というわけで、我々が父島でみた最も高級そうな車は、小笠原警察のクラウンのパトカーであった。
ジョギングの際に、町に「小笠原に空港を」という横断幕があったので、走り終えて立ち寄った”小笠原ビジターセンター”で空港建設を皆が望んでいるのか係員に尋ねてみた。女性の係員はなんとも答えに窮したように、あいまいな笑みを浮かべるので「空港ができれば島民が便利になり観光客も増えるが、一方で自然破壊や島の良さが消えることも心配なのでは?」と問うと「そうですね」とシャイにうなづいていた。美しい自然と便利な生活、観光振興と自然保護など南の島にもさまざま課題があるようだ。
翌日”にっぽん丸”は父島の南50キロに浮かぶ人口500人ほどの母島に停泊し、ここで我々は「元地自然観察ガイド」ツアーにした。森林地帯に入り小笠原固有の植物や小さな動物を観察しつつ、ガイドは「小笠原は陸地と隔絶していたから、ここに住む固有の生物は、人間が持ち込んだり衣服について入ってくる外生物に免疫がなくとても弱いのです」と言っていた。小笠原は世界自然遺産に指定されたので、さまざまな対応も取られているようで、またいつの日にか訪れたいと思いつつ船に戻ったのだった。
島で一番の高級車?クラウンのパトカー
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