松任谷正隆氏のコラム
クレジットカード会社はじめ色々と加入している機関や会員組織から毎月のように送られてくる冊子に、よく1~2ページの小エッセイが連載されている。名前が知れた作家やエッセイストを始め、医者、タレント、音楽家などが執筆を担当しているのだが、それらの文章は総じて毒にも薬にもならず、たいして印象に残らないものが多い。斜めに読み飛ばして数秒後には忘却の彼方というコラムがほとんどなのだが、その中で日本自動車連盟(JAF)から毎月送られてくる"JAF MATE"に連載されている音楽プロディーサー・松任谷正隆氏の文章はなかなかインパクトがあって楽しみにしている。
その"JAF MATE"の昨年末の号では「クルマとトイレ」という題で、行けない状況の時に限って行きたくなるトイレ(大)にまつわる話がおもしろおかしく書かれている。とくに通学の電車の中で強烈な便意を催し「差し込み」が来た時の松任谷氏の状況描写は秀逸で「顔は青ざめ、脂汗だらだら…。トイレが間に合わないと思ったこと数知れず。しかし人間の底力というものは侮れないところがあって、一度として〇〇〇(原文ママ)をしたことはない」などとある。文章をニヤニヤ読みつつ「これ、わかる、俺にもあるよな」と思わずうなってしまうのである。
続いてそのコラムでは、高速道路で渋滞にはまった友人が便意に切迫される事件が紹介されるのだが、事の顛末はリアルなれど文章はユーモアに満ちていて、妻は傍らで文章をのぞきこみながら「奄美大島ではあなたも同じようなこと(奄美大島決死のキジ撃ち事件)をしたわよね」とニヤニヤ笑うのである。そんなわけで松任谷氏のエッセイには日頃から注目しているのだが、昨日の読売新聞夕刊の「今風」というコーナーに、氏は「初めてのマナー・座席倒す声かけに当惑」と云う一文を寄せている。新幹線の車中でいきなり前の座席の人から「すみません席倒していいですか」と聞かれて、知らないうちに新しいマナーができたのかと、その当惑ぶりをユーモラスに綴っているのだ。
私も最近、新幹線で時々「座席倒して良いですか?」の声を聞くから、リクライニングシートを倒す時のマナーが徐々に広まっているのは感じていた。ちょっと調べてみると飛行機のエコノミークラスのシートピッチ(スパン)は80センチほど、普通の観光バスが75センチくらいで双方ともかなり窮屈ではあるが、新幹線は普通車でも104センチ(東海道・山陽新幹線)もあってそう手狭ではない。なので前の座席のリクライニングが一番後ろまで倒れてもさして圧迫感はないし、いちいち声掛けなぞせずともよいと私も思う。何でも事前にエクスキューズをする世の風潮が新幹線の中まで広まったものなのだろう。まあ、あまり意味のないマナーを気にするよりも、電車の中で高齢者や妊婦をシルバーシートの前に立たせて、元気な人たちがスマホに熱中するような光景こそ気にするべきでは、とコラムを読みながら考えていた。
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