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2019年2月

2019年2月27日 (水)

松任谷正隆氏のコラム

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クレジットカード会社はじめ色々と加入している機関や会員組織から毎月のように送られてくる冊子に、よく1~2ページの小エッセイが連載されている。名前が知れた作家やエッセイストを始め、医者、タレント、音楽家などが執筆を担当しているのだが、それらの文章は総じて毒にも薬にもならず、たいして印象に残らないものが多い。斜めに読み飛ばして数秒後には忘却の彼方というコラムがほとんどなのだが、その中で日本自動車連盟(JAF)から毎月送られてくる"JAF MATE"に連載されている音楽プロディーサー・松任谷正隆氏の文章はなかなかインパクトがあって楽しみにしている。


その"JAF MATE"の昨年末の号では「クルマとトイレ」という題で、行けない状況の時に限って行きたくなるトイレ(大)にまつわる話がおもしろおかしく書かれている。とくに通学の電車の中で強烈な便意を催し「差し込み」が来た時の松任谷氏の状況描写は秀逸で「顔は青ざめ、脂汗だらだら…。トイレが間に合わないと思ったこと数知れず。しかし人間の底力というものは侮れないところがあって、一度として〇〇〇(原文ママ)をしたことはない」などとある。文章をニヤニヤ読みつつ「これ、わかる、俺にもあるよな」と思わずうなってしまうのである。


続いてそのコラムでは、高速道路で渋滞にはまった友人が便意に切迫される事件が紹介されるのだが、事の顛末はリアルなれど文章はユーモアに満ちていて、妻は傍らで文章をのぞきこみながら「奄美大島ではあなたも同じようなこと(奄美大島決死のキジ撃ち事件)をしたわよね」とニヤニヤ笑うのである。そんなわけで松任谷氏のエッセイには日頃から注目しているのだが、昨日の読売新聞夕刊の「今風」というコーナーに、氏は「初めてのマナー・座席倒す声かけに当惑」と云う一文を寄せている。新幹線の車中でいきなり前の座席の人から「すみません席倒していいですか」と聞かれて、知らないうちに新しいマナーができたのかと、その当惑ぶりをユーモラスに綴っているのだ。


私も最近、新幹線で時々「座席倒して良いですか?」の声を聞くから、リクライニングシートを倒す時のマナーが徐々に広まっているのは感じていた。ちょっと調べてみると飛行機のエコノミークラスのシートピッチ(スパン)は80センチほど、普通の観光バスが75センチくらいで双方ともかなり窮屈ではあるが、新幹線は普通車でも104センチ(東海道・山陽新幹線)もあってそう手狭ではない。なので前の座席のリクライニングが一番後ろまで倒れてもさして圧迫感はないし、いちいち声掛けなぞせずともよいと私も思う。何でも事前にエクスキューズをする世の風潮が新幹線の中まで広まったものなのだろう。まあ、あまり意味のないマナーを気にするよりも、電車の中で高齢者や妊婦をシルバーシートの前に立たせて、元気な人たちがスマホに熱中するような光景こそ気にするべきでは、とコラムを読みながら考えていた。

2019年2月19日 (火)

安倍首相、トランプ大統領に大いに推薦状を

毀誉褒貶あいなかばするトランプ大統領であるが、ノーベル平和賞を受けるに相応しい人物だと安倍首相が推薦状を送ったことが取り沙汰されている。例によって「安倍のすることはなんでも気に食わない」派の人たちはネガティブな反応を示しているようだが、私はこのニュースが本当だとすれば時宜にかなった行動だと拍手を送りたい。


ここ数年来我が国を取り巻く環境は厳しくなる一方だ。まず中国である。中国が地域の覇権だけでなく世界ルールの新たな支配者になろうとしている事に対し、初めて真正面から異を唱え、米中貿易戦争を仕掛けることができたのはトランプ氏が政権を率いているからだろう。まことに結構な事である。日本としても、中国との貿易額が大きくとも、反日を国是とする共産党の一党独裁体制の下、自由が制限される監視社会で、民族の弾圧が繰り返されるこの国と親しくなるのは無理な事である。こんな国に表立って敵対する事を始めたトランプ大統領は、やはりノーベル賞ものだと云えよう。


一方でこれまた反日国家の韓国がある。文政権の下、このまま行けば遅からず核を保有したままの北と、経済力を持った南が統一される事が予想される。休戦状態にある朝鮮半島の南北が一つになれば在韓米軍が撤退する可能性は大、その後は中国があらゆる面で半島に勢力を伸ばすことであろう。そうなれば我が国は、日本海や東シナ海を挟んで中国と中華圏内の朝鮮という反日を国是とする二つの国家と向きあわねばならない。東西冷戦に代わって西側勢力と中華勢力がぶつかる新しい壁が、日本と大陸の間に造られることになる。


潜在的な中華華夷思想に基づき、日本人とはまったく違うメンタリティーを持つ二つの国と日本が対峙すれば、いま以上に地域の軋轢が強まり混乱が生じる事を我々は覚悟せねばなるまい。一方で北方のロシアはと見れば、日本はこれまで裏切られ続けたという苦い歴史を持ち、到底信頼できる相手とはみなせない。こういう情勢のなか、韓国軍艦の自衛隊機へのレーダー照射があったように、何かの折に周辺各国と我が国の間で軍事的摩擦が起きる事が容易に予想される。日本は核を持つ三つの大国に囲まれるという大変な状況になる可能性が高いのである。


但し我が国に米軍が展開していれば、日本への攻撃はただちに米軍への攻撃と見なされるから、いかなる大国と云えどもそう簡単に戦火を交えようとしないであろう。米軍に人質としていて貰わなければ日本の防衛が成り立たないのが現実で、それが嫌なら日本が自ら強大な軍事力、なかんずく核を持って対抗するしかない。「なんでも話し合いで解決」などというお花畑的発想が、外交で役にたたないのは最近の韓国の敵対的態度を見れば明らかである。日本の軍備の大幅な拡大、特に核の保有が反対ならば米軍に居てもらうしかないではないか。推薦状などカネのかかることでなし、海外に展開する米軍の縮小を企図するトランプ大統領をノーベル賞級だと推薦し、貸しを作っておくことはまことに日本の国益にかなった事なのである。

2019年2月17日 (日)

桜田大臣発言は悪くない

都立高校の50代の教諭が高校一年生の男子生徒を殴った場面がネットで拡散し「暴力教師」と非難されたが、実は高校生のワルガキどもが先生を怒らせるためにわざと仕組んだものだと云う事件があった。当初は劇画のようにパンチを放つ先生が悪いと非難されていたものが、その場面に至るまでの映像が公開されると、殴られた方の生徒がひどすぎることがわかり、一転して先生に同情が集まった。言葉で言っても判らないワルガキなどは、少々痛い目に合わせた方が本人の為にも良いと私は思うが、はやりのポリティカルコレクトネスとやらで「殴るのは絶対の悪」とする風潮が蔓延する世の中だ。そんな中で当初の切り貼りされた場面だけでなく、前後が公開された事で真相がわかった結果、先生は悪くないと云う論が優勢になったのは痛快な出来事である。


また政治家、特に自民党の議員の発言の一部を切り取って、いかにもひどい考え方の持ち主であるかの報道がしばしばされるが、問題のコメントの全体や前後を含めて見ると、実は趣旨がまったく逆である事が多い。今も水泳の池江選手の病気に対して桜田五輪担当大臣の「がっかりしている」と云うコメントだけが切りとりされ非難されている。しかし、これも発言の全部を見ると趣旨がまったく違っている事がわかる。桜田大臣は冒頭で池江選手に対して「正直なところ、びっくりしました・・・。本当に病気のことなので、早く治療に専念していただいて、一日も早く元気な姿に戻ってもらいたいというのが、私の率直な気持ちです。」と明言している。コメントの最後は「とにかく治療を最優先にして、元気な姿を見たい。また、頑張っている姿をわれわれは期待してます。」とも述べており、メディアが喧伝する「がっかり」というニュアンスとは正反対である。


そのほか自民党の杉田水脈議員が「LGBTは子供を作らない、生産性がない」と月刊誌「新潮45」に書いたことが問題になったが、これも前後の部分を読めば真意はそうでないらしい。「新潮45」は廃刊となり当該論文の全文を読めないので正確な論評はできないものの、その後の報道を纏めると、水田氏は子供ができないカップルへの治療や子育て支援に税金を使うべきであり、特別にLGBTを取り上げて何らかの政策を施すのは適切でない、と至極まっとうな趣旨の意見を述べているようだ。また多くのLGBTの人たちはごく普通に生活を送っており、この問題をことさら取り上げるのはマスコミや一部活動家だという事もわかってきた。出来事の背景にある本当の問題には目をつむり、一部の切り取った場面、発言をことさら取り上げ「言葉狩り」を行う人権派とかリベラルと云われる人たち、なかんずく左翼メディアの風潮は何とかならないものだろうか。

リンク「新潮45を支持する」

2019年2月11日 (月)

にっぽん丸のグアム事故(その3) 

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飛鳥Ⅱはじめクルーズ船で知り合った人たちと、時々食事会や飲み会をおこなっている。この3連休は2018年の飛鳥Ⅱワールドクルーズで再会を期したグループの集まりが都心であったが、その中に年末の”にっぽん丸”のグアム事故に乗り合わせていたご夫妻がいて話を伺った。この時の話を紹介してみたい。


『12月30日の夜に桟橋と衝突した時は船内ではさして衝撃を感じなかった。だが船の後部で見ていた乗客によると、迫りくる桟橋に「あー、ぶつかる、ぶつかる」と叫ぶ間もなくぶつかったそうだ。事故後に別の岸壁に係留されたが最初は状況がよくわからなかった。翌日、JG(国交省)と米国コーストガードの出港許可がおりないので本クルーズはここで中止という発表があり、船長の説明会があった。会場では厳しい声も乗客から上がったが、船長は気もそぞろ、魂の抜けたようなボーッとした風情で大丈夫だろうかと思った。船長一人に任せて他のオフィサーや上級クルーがアテンドしないのは危機管理上いかがなものか、不思議な光景だった。』

『1月1日に飛鳥Ⅱが入ってきて乗客が楽しげに観光に出かけるのに、岸壁の端に追いやられた”にっぽん丸”の乗客は船内から出られず惨めだった。翌日は朝5時に起きて空港へ案内された。自分達はよい部屋だったから帰りのフライトの空いた席に優先的に案内されたが、キャンセル待ちの30名~40名は結局乗れずに船に戻ったようだ。荷物はパッキングをしてキャビンに残し船とともに横浜に着いた後で、自分で通関する必要があったので横浜まで取りに行った。大桟橋に止めて置いた自家用車のピックアップなどもあって大変だった。』


概略以上の通りである。同船に乗り合わせていた別の人によると「後進の勢いをつけすぎてしまい穴を2つあけてしまったと船長の説明があった。会場では『慰謝料は?』『保障は?』で殺気だっていた」そうである。またこれとは別に、2016年飛鳥Ⅱの南極・南米クルーズで知り合った友人からは、「昨年”にっぽん丸”の小笠原クルーズがこの船長の操船だったが、乗客を楽しませてくれてとても良かった」というコメントももらった。


さて起こしてしまった事故は仕方がないとしても、その後の対応がしっかりしているか否かが問題である。この事故が起きたのは、たまたま年始早々でグアムからの帰国ラッシュが始まる前だったから、帰りのフライトの席もなんとか確保できたのはラッキーだったといえよう。ただ事故を起こして動転している船長一人に説明させ、乗客の不安を増したとするのが本当ならば”にっぽん丸”の対応も心もとなかったのではないか。


もともと”にっぽん丸”ファンだったのに私達が最近乗らないのは、2014年2月の悪天候の際の本船の素っ気ない対応が原因のひとつである。この時は2泊3日で相模湾を周遊するクルーズだったが、雪や低気圧のため2晩とも横浜港外で碇を下ろしたまま動かなかった。このこと自体はやむ終えないものの、そうであればオンボードクレジットなりアルコールのサービスなどの一切提示ないその素っ気なさに、以後乗船する気持ちがやや萎えてしまった。2014年2月16日 (日)にっぽん丸 OASIS ( 横浜沖レストラン船)”にっぽん丸”はこの事故を奇禍として、より安全で良いサービスを心掛けて欲しいものだ。

2019年2月 9日 (土)

飛鳥Ⅱ2020年世界一周クルーズ・説明会

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先日、目黒にあるJTBクルーズ本店で飛鳥Ⅱ2020年世界一周クルーズの説明会があった。冷やかし半分で会場におもむくと我々を含め16名ほどの参加者で、平日の日中にも関わらずまだ現役世代とおぼしき若い人たちも出席している。冒頭、2018年以来2年ぶりに催行されるワールドクルーズだが、世界一周する旅は飛鳥Ⅱの諸クルーズの中でももっとも人気の高いもので、発売と同時にすぐにキャビンが埋まることが予想されるとの説明である。考えてみればJTBだけでこの説明会を日本全国20数箇所で行うので、一社だけの顧客で数百人が興味をもっていることになる。多くの旅行会社が同じような説明会を開いているから、それだけで飛鳥Ⅱの乗客定員700名をかるく超えてしまいそうだ。


JTBの説明によるとワールドクルーズ参加者の平均年齢は約70歳、初めて船旅をする人が20%もいるし、スタビライザーもあって揺れないから安心してお申し込みを、と云うことだ。たしかに私達が船内で貰った資料によると、南極・南米ワールドクルーズこそコースが特殊で初乗船者が14%と少なかったが、オーソドックな西回り世界一周だった2018年は26%が初乗船で、船旅経験の有無に関わらず「いつかは船で世界一周を」と思う人が多数参加していたことが判る。一方で船上で知り合った人たちの中には「長いクルーズは全部予約を入れるように旅行社に頼んでいる」などというツワモノもいた。概して世界一周などの長期クルーズに幾度も参加するのはオーナー企業をリタイアした元社長や元病院院長などが多いという印象を受ける。


こうして2020年のワールドクルーズの説明会に来たものの、実際に乗船に向かってアクションを起こすかというのは別問題だ。それでも 「キャンセル率は40%、キャンセルしても料金を取られるのは11月初めからだからとにかく予約だけはして下さい」 と薦めるJTBの言葉に乗ってとり合えず申し込み書に名前を記載しておくことにした。「また行くの?」という周囲の顰蹙の声が聞こえそうだが、私の病後経過も順調のようだし、周囲に死にそうな人もいないから「夢よ、また一度」である。考えてみれば今年の”サンプリンセス”の世界一周クルーズをキャンセルしたことから、キャンセルすることの抵抗感もやや薄らいだ。新入社員の時に関わったインドの鉄鉱石の積み地ゴアに寄港地するのも良いし、それまでダンスのレッスンを続けると云うポジティブな気持ちをキープするためにも、2020年の飛鳥Ⅱ世界一周を一つの目標とすることにしてみた。もっとも前回より一段と高くなった料金がとても気にかかる点ではあるが。

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2019年2月 6日 (水)

ピースボートのエコシップ

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2016年2月リオデジャネイロ(ブラジル)に停泊中のピースボート(中央・赤いファンネル)

週刊文春の2月7日号に「ピースボート570億円豪華客船計画が座礁」という記事が載っている。北欧のアークティック造船で計画されていたピースボートの新造船エコ・シップの完成が2020年3月から2年遅れになるとの発表がなされ、本当にこの計画がすんなり進むのか疑問を呈している。2015年にピースボートが発表したエコシップは、太陽光発電などで二酸化炭素の排出を約4割減らすとされているが、この造船所はしばらく客船も建造していないところだし、建造契約も決まらない段階でエコシップに乗りたい人から金を集め、就航が遅れるのを知りながら募集を続けた姿勢が問題だと記事は報じている。


ピースボートと云えば、辻元清美と云う私の嫌いな政治家が始めたプロジェクトで、中古の客船をチャーターして世界一周クルーズを催行していることは広く知られる通りだ。飛鳥Ⅱのワールドクルーズでも、以前にピースボートで世界を回ったという人たちに幾人か合ったが、誰でも料金を払えば乗れるものの、船上では「憲法改正反対」とか「環境保護」などを訴えたりするそうだから、ちょっと気持ちの悪い船でもある。ただJTBのサンプリンセス世界一周チャータークルーズが「ピースボートよりは高いが飛鳥Ⅱのワールドクルーズよりは安い」と喧伝するように、料金面では我が国の世界一周クルーズである種の指標になっているのも事実である。


ということで、一体何がおこっているのか興味が湧いてピースボートを主催するジャパングレイスという会社のホームぺージを読むと「新造船計画の遅延は安全基準の変更に伴うものであり」週間文春の「『計画が座礁』という表現につきましては、実情を著しくゆがめる表現で」「新造船の建造計画は新日程において順調に進んでおり、新日程でのお客様の募集も再開しております」とある。また同社の別のページには「週刊文春での報道について」としてアークテック造船所とは造船契約を締結しており、その造船所は過去に客船の実績があり、現在エコシップの募集はしていないし、エコシップ予約金の使途は造船契約に充てる予定はあるが、全員に払い戻しても資金繰りに何ら影響はない、と記載されている。


ピースボート側の主張に沿って調べてみると時系列的にこういう事になる。

  1. 2015年10月にピースボートがエコシップを2020年4月に投入すると発表

  2. 2017年5月にピースボートよりアークティック造船所にLETTER OF INTENT(LOI=発注内示書)が出される

  3. 2017年6月IMO(国際海事機関)で2020年1月以降に「建造契約」する客船の構造要件の変更が決定(浸水しても船の全損にならない区画を従来より拡大させる事など)

  4. 2018年央 アークティック造船所よりエコシップを新基準に合致させるために引き渡し遅延をピースボートに打診

  5. 2018年末 ピースボートと同造船所が正式に2022年4月に引き渡すことで合意

という事になるが、ここで幾つかの疑問が湧いてくる。
  1. 契約から完成まで普通の貨物船でも最低2年はかかる。仮に2015年10月以前から内々で打ち合わせを開始していても、デザインも推進方法も新しいコンセプトの船をつくるのに、当初の4年半という工期はあまりにも短かすぎないか。最初から2022年引渡しありきでなかったか。

  2. 新基準に合致させる新造船は2019年末までに契約をしておけば免れるから、それまでに契約を済ませてしまうのが造船・海運の常識で、コストのかかる新しい基準にわざわざ合わせる例はこれまで聞いた事がない。造船契約で合意していた建造費用はアップするし、引き渡し遅延のペナルティは誰が負担してどう扱うのか。

  3. そもそも造船契約は交わされたのか。法的効力のあいまいなLETTER OF INTENT(発注内示書)は交わしたとピースボートは公言しながら、正式に契約した事が発表されないのはなぜか。(船価は守秘義務があるも、契約したこと自体は特段守秘する必要はない)

  4. 今回の遅延に関して造船所がピースボートに出したLetter(英文)がホームページで公開され、そこには「我々の造船契約に基づきプロジェクトは進展中」とあるも、ビジネスレターなら「何年、何月、何日付けの造船契約に基づき」と書く筈なのにその記載がないなど体裁が奇異。

  5. これまでのチャーターから自社の運航になるから、船舶管理はじめ運航やホテル部門のクルー手配や乗り出し諸準備は当初計画の2020年に向けてすでに開始されていたはずだが、どうなのだろうか。

などなど疑問がつきない。


さて造船所への支払いは分割払で、契約時は(双方の信用力などによっても異なるが)船価の10%程度を造船所が受け取ることが多い。通常は船主はこの資金を自己資金でまかなうが、570億円とされる船価ならば契約時支払いは57億円である。キャッシュがよほど潤沢でないとこの資金を準備するのは困難だろうから、ピースボートはその引き当てもあって週刊誌が指摘する全額前払いのエコシップのクルーズ代金を集めていたのだろう。一方で造船所では自己都合で船が出来なくなった場合の返金保証(REFUNDMENT GURANTEE、造船所側の銀行による保証になることが多い)が準備出来ず、これが契約を遅らせる要因になっていたのかもしれない。仮にすべてうまくコトが運び、造船契約がすでに交わされているとすれば新基準に合わせる必要はないのに、両者は敢えて安全性向上ために設計を変更して引き渡しを遅らせた事になる。そうだとすれば造船業界でこれまでに聞いたことがないことが起こっているわけで、今後どう話が展開していくのか野次馬根性全開である。

2019年2月 2日 (土)

にっぽん丸のグアム事故(その2)

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修理なった”にっぽん丸”の船尾(1月27日横浜・大桟橋にて)

飛鳥Ⅱのチャータークルーズで横浜港大桟橋へ帰ってくると、グアムの事故でドックに入っていた商船三井客船(MOPAS)の”にっぽん丸”が修理なって、次の航海「世界青年の船」の乗客を待っていた。みると船体後部の破孔もきれいに修復され、本船の堪航性が完全に回復してまずは一安心である(写真上)。事故で怪我人が出なかった事はもちろんだが、もともとこの時期にドックが予定されていたからその点はMOPASにとって不幸中の幸いだった云えよう。ただ「船長の酒酔い操船か?」と大きく報道されたこの事故で、同社の評判が毀損されたことは間違いない。事故の原因は何なのか、金額的にどの位の損害が出たのか、個人的に興味を覚えたので推測してみたい。


おりしも国土交通省の運輸安全委員会より「旅客船にっぽん丸衝突(港内施設)事故について」の第一回目の報告が出され、本船の事故に至る経緯が概観できる。これによると、昨年12月30日夜9時すぎにグアムのアプラ港をサイパンにむけ出港しようとした本船は、タグボートの支援を受け後進を開始している(下図)。当時の天候は快晴だから視界は良好だったことであろう。海上としては特別に強風というほどでもないが、風が北東(図面の右上)から8米以上10.8米未満吹いている事が報告書からわかる。F4岸壁に入船左舷で着岸していた本船は、離岸後に後進で岸壁の端を交わしたのち左回頭し、港の出口に向かおうとしている。報告書に記載はないが、パイロットは乗船しているはずである。


注目されるのは(多分後進の行き足がある)離岸7分後、左回頭中に左右2基あるプロペラの両方が全速後進となっている事である。以前のブログでも書いたように一般商船と違ってクルーズ船では、ウイングにあるジョイスティックやエンジンテレグラフを船長自ら操作するから、ここでも船長は自ら操船していたものと考えられる。報告書には、この後「いったん左舷プロペラが前進になった」との記載があるが、左に回頭中に、左舷前進・右舷後進の操作をすれば本船は右に回る力が働くはずで、この操作も不明である。その後ただちに両プロペラは全速後進となって、離岸後9分で米軍の燃料補給桟橋(下図D桟橋)に本船の艫(とも)から衝突した事が報告書に記載されている。


大型コンテナ船や巨大タンカーに永年乗っていた知り合いの船長にこの航跡図を見てもらったところ、やはり「不思議だなあ。港の中ではふつう全速後進などはかけない」「パイロットがどういう指示をしていたかもあるけど、ちょっと理解できない」との事である。船体の重さに比べ上部構造物の嵩が大きい客船で、後ろに向かって北東の風が吹く中、なぜ全速で後進したのかがやはりポイントのようだ。一般商船から乗ってくる飛鳥Ⅱの船長と違い、MOPASは船長が自社養成だから、本船に慣れていないということもないだろう。事故原因については船長が本当に飲酒の影響下にあったのか、パイロットやタグボートの関与はどうだったか、艫(とも)でワッチに入っていた2航士からの報告が適切だったかなどが、航海情報機器の記録解析とともに必要になろう。


さてもし仮に船長のアルコール摂取が事故の主因で、これが船長の重過失だと認定されれば、本船に生じた破孔を填補する船舶保険の支払いに影響がでるかもしれない。一方で3億円と云われる米軍の桟橋の修理費用は、PI保険(Protection and Indmnity=船主責任保険)の領域となるが、この約款を読むと保険金支払いの免責事項として「不穏当かつ慎重を欠く航海」が掲げられている。とは云え1989年にアラスカで起きたエクソン・バルディーズ号の油濁事故は船長の酒酔いも事故の原因の一つだったが、PI保険だけでなく船舶保険も適用されていた実例もある。ただしPI保険は社会的・道義的責任には適用されないから、億の単位になるかも知れぬ乗客の帰国費用負担がMOPASの負担になるのだろう。今後の調査の進展を注視したい。

下図・国交省・運輸安全委員会の当該報告書より推測される”にっぽん丸”の航跡(一部合成、青線は筆者の加筆、 D桟橋に衝突)
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