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2019年1月

2019年1月31日 (木)

飛鳥Ⅱ新春の伊勢クルーズ(3)ワンナイトチャーター編

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料理の説明をする落合シェフ

某メガバンクによるチャーター・クルーズは2015年の1月以来二度目である「飛鳥ⅡA-Styleクルーズ~冬彩~ (2人だけのダイニング)2015年1月14日」。 一介の勤め人にすぎぬ私は特段この銀行のお得意様と云うわけでもないのだが、新入社員時代以来の永年の付き合いでいろいろ催し物の案内が来る。振り返ってみれば昔はほとんどの会社の入口はオープンで、今のように事務所に入るのに受付を通せだの、セキュリティがどうだのという事はなく、ヤクルトや牛乳配達、生命保険のおばちゃんなどが毎日事務所に顔を見せていたものだ。当時、近所にあったこの銀行の聡明そうな若い女性も社内を廻っていて、通帳と印鑑を渡しておくと必要な時に金を引き出して自分のデスクまで持ってきてくれる。銀行の彼女となるべく口を聞きたいしサービスも便利なので、給与振り込み先をこの銀行にしたのがそもそもの付きあい始めなのだが、若い日のいささか不純な動機が今日のクルーズにも繋がるとは縁は異なものである。


閑話休題(それはさておき)この銀行の一泊チャータークルーズは、料金的には他のクルーズと比べて特段のメリットはない。ただ「日本で一番予約がとりにくい」と云われるイタリア料理店”ラ・ベットラ”の落合シェフによるフルコース・ディナーが出されるのが目玉である。実はクルーズの一週間前にたまたま銀座・宝町にあるベットラ本店に行ったばかりで、その時の料金は前菜、パスタ、メインの3品で一人4千円ちょっとだった。飛鳥独自のディナーも相応の値段はするだろうが、いつもと変わらぬクルーズ料金でベットラのコース料理が味わえるのはちょっとお得感がある。出されたディナーはデザートを含め少しずつ八品もあり、実にどの皿も美味しかったが、落合さんが「スパゲティは飛鳥のギャレーでストップウォッチで計りながら30秒ごとに順番に茹で始めて出しているのです」とダイニングで乗客に力説した通り、ウニのスパゲティが秀逸で妻はお替りを頼んで二皿平らげてしまった。


さて今回の乗船中に飛鳥Ⅱを所有する郵船クルーズ社から、株式のうち50%を船舶投資ファンドに譲渡し、このファンドとともに客船事業を運営していくと発表があった。ファンドマネーにより飛鳥Ⅱの大規模な改装と、さらに今後の新造船計画を練るのだそうだ。このファンドは旧ジャパンラインにカネをつぎ込み海運界の泥沼にどっぷりと浸かった旧興銀やら、ロッキード事件で疑惑にまみれた海部軍団の旧日商岩井のメンバーがトップらしく、百選練磨のなかなか手練れた陣容に見える。修羅場をくぐった面々が繰り出す一癖も二癖もある大技・小技を駆使して、このあと飛鳥クルーズの興隆を図ってもらいたいところだ。私が聞いたところでは、飛鳥Ⅱ船内の関係者からは、新しい体制になり念願の新造船の計画が大きく進展するのでは、とのニュアンスが強かったが、いよいよそうなることを期待しつつ下船の舷門をくぐったのだった。

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ラ・ベットラ名物 ウニのスパゲティ

2019年1月30日 (水)

飛鳥Ⅱ新春の伊勢クルーズ(2)乗り継ぎ編

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今回のクルーズは新春の伊勢クルーズとメガバンク主催のワンナイトクルーズの乗り継ぎで、最初のクルーズの乗客が午前中に下船したあと、ワンナイトクルーズの乗船が始まる夕方まで本船にいることができる。この乗り継ぎの間、我々は例によって山下公園や港みらい地区を一時間ほどジョギングし、飛鳥Ⅱに戻って昼食を楽しみ、一番風呂に入るなど船内でのんびりする事にした。


ランチは乗り継ぎ客3組6人のために飛鳥Ⅱがメインダイニングで無料で用意してくれるのである。今回出てきたのは茶碗蒸しや大根のそぼろ煮に豪華なマグロ丼、野菜天ぷら盛り合わせとふだんのクルーズ中に出される昼食よりも品数もボリュームも多く、とても得した気分であった。通り掛かった日本人のメートルディに「凄かった、ご馳走様でした」と言うと「今日は特に豪華ですね、厨房ではなんか一生懸命やってましたよ」とのことだった。


乗船した2つのショートクルーズは週末にかけて行われたものだから、いつもの雰囲気とはやや違う。孫を連れた3世代乗船や働き盛りのカップル、子供の姿もあちこち見えて船内がちょっと賑やかである。常連のリピーターはほとんどおらず、船内ガイドを片手にあちこちの施設を見て回る人たちが多いのも新鮮だ。食事やショーなどの合間には、多くが一斉に売店やフォトショップに駆け込み、今まで見たことないほど人でいっぱいの場所もあった。


こんな船内ではこちらは、あまり「通」ぶったフリはしたくないものだが、遠くから知った顔を見つけると「ア、○○様~」と日本人もフィリピンクルーも笑顔で声かけてくるのが飛鳥流である。そうなると思わずそこで近況を話しこんだり、数少ないタガログ語で挨拶を交わしたりしてしまうものだ。かつて初乗船の際、この船は随分とクルーと馴れ馴れしい常連客がいるものだと感じていたが、当方がそうなってみると決してこれ見よがしでそうしているのでない事に気づく。きっと当時の常連さんも同じだったのだろうなと改めて思いだすのである。


さて船に乗るからには覚えてみようかと始めたのが社交ダンス。最初はマンボさえもどちらの足から出してよいのか戸惑うほどだったが、何回かのロングクルーズのダンス教室や陸上の個人教授で最近はなんとか中級クラスに入ってきたようだ。かつてフォークダンスでさえ逃げ回っていた我が小中学校時代を知る旧友は、「エ~?おまえがダンスぅ?」とのけぞるが、生バンドをバックにダンスホール(クラブ2100)で踊れるのは船旅ならではである。初めて船に乗って船内見学をする乗客の好奇の目にさらされつつ、カラー光線が交錯するホールに出ても、最近は「旅の恥はかきすて」せっかくだから「踊らにゃ損々」と開きなおれるようになったのはレッスンのたまものだろう。


それにしても日本人のダンスはしょせん西洋の借り物、若い頃からプロムで自然にダンスを経験した欧米人のさりげないダンスとはかなり違う。朝食時にたまたま近くのテーブルにいた夫婦が「ダンス会場の雰囲気ってなんか変だよね、何とかならないかね」と交わしていた会話を聞きながら「確かに変だよ、俺もキモイと思ってたよ。それでも船上で踊れるようになると段々ハマっていくんだなあ」と内心共感しつつもちょっと反発も覚える船上のダンスである。

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2019年1月28日 (月)

飛鳥Ⅱ新春の伊勢クルーズ(1)四日市編

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第二の我が家?

2018年のワールドクルーズから帰国して早くも半年以上が経過した。帰って早々思わぬ病気で手術をし、なんだかあの旅行が遠い過去の事にも思えてきたが、病も一段落すると今度もまた「クルーズに行きたい病」が頭をもたげてくる。と云ってもまだ仕事もしており、そう休みもとれないから横浜を木曜日午後に出て四日市に寄港し、横浜に土曜日に帰る2泊の「新春の伊勢クルーズ」と、さるメガパンクが主催する横浜発着の土・日のワンナイト・チャータークルーズを合わせ3泊の乗船にした。2つのクルーズの乗り継ぎといえども、同じキャビンにそのまま居られるし、クルーズとクルーズの間では船で昼食も出してくれるからちょっと得した気分でもある。


こうして半年ぶりに乗船し、クルーたちに「お帰りなさいませ」と出迎えられて一歩船に踏み入れると、なんだか「第二の我が家」に帰ってきた気持ちになってくる。「第二の家」といえば、かつて別荘を建てようか、はたまたタイムシェアのリゾートの会員権を買ってみるかなどと考えた事もあったが、馴染みのクルーズ船ができると、船はあちこち行けるし豪華な料理付き、別荘よりこちらの方が遥かに楽チンだと思えてくる。おりしもある船舶融資ファンドと郵船クルーズ社が、飛鳥Ⅱの代替を見据えて共同事業を開始すると云うニュースが発表されたから、いよいよ数年後には新しい飛鳥Ⅲも期待出来そうで、新造船への楽しみも募るところである。


さて今回のクルーズは、寄港地の四日市から松坂牛と新春の伊勢神宮初詣、あるいは桑名の蛤と熱田神宮に行くのがオプショナルツアーの目玉らしい。ただどちらも値段が高い上に一日仕事だから、私たちは午前中に伊勢一ノ宮・椿大神社への無料ツアーに参加した後、午後は例によって四日市の街をジョギングして廻ることにした。という事で船で昼食をとり、岸壁から町の中心部めがけて足の向くままジョギングを開始すると、ほどなく目の前に国道一号線・東海道に行きあって驚いてしまった。東海道線は在来線も新幹線も、名古屋から関西に向かうときは関ヶ原を抜けて米原・琵琶湖へ行くし、名神高速道路も同じルートだから、はるか南方にある伊勢路に東海道がある!!という事実は奇異に感じられる。


さっそく調べてみると、江戸時代の東海道は名古屋の熱田から一旦伊勢湾を海路で渡り、桑名から四日市を通り鈴鹿山脈を超えて甲賀から琵琶湖畔の草津に通じていた事が判った。たしかに東京から京都まで直線をひくと、岐阜・関ヶ原・米原廻りにより、鈴鹿超えの方がまっすぐで近い。ただ明治になって鉄道を敷く際、鈴鹿山脈超えが難工事であること、当時すでに阪神地区から琵琶湖方面には既存線が在り費用が節約できたこと、大陸への玄関口となる敦賀への接続が便利なことなどを考えて京都・名古屋間は米原周りルートが選択されたそうだ。クルーズ船に乗って港から町に入ると、有名地を回る旅行で来るのとは違う視点から、その地方の思わぬ歴史を知る事ができる。四日市などは出張ででもなければ訪れない都市なのに、船が連れてきてくれたおかげで思わぬ発見があって、こんな点もクルーズの楽しみの一つである。

東海道の行く手を遮る鈴鹿山脈(飛鳥Ⅱより)
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2019年1月21日 (月)

2019年 大学入試センター試験 英語筆記

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久しぶりに何も予定のない週末であった。ゆっくりと日曜日の新聞を眺めていたら、数ページに亘って「2019年大学入試センター試験・第一日 問題と正解」という特別面がある。どうやら国語・外国語・地理・歴史など、今年行われたセンタ―試験の初日の全題の出題とその回答が掲載されているらしい。暇にまかせて最近の大学の入試はどのくらい難しいものなのかと、ちょっと問題を読んでみるが、地理や歴史など暗記ものは忘却の彼方で、紙面を前に「ウーン!?」と考え込んでしまう。ならば英語の筆記試験ならどの程度できるのか、チャレンジしてみようという気持ちになった。


コンピューター処理をするためなのだろう、センター試験はすべての回答が択一で正解に当たる数字をボックスに記入していく方式である。永年仕事で使ってきた英語だしアメリカにも駐在した事があるから、他の科目と違って何の準備がなくとも、まあそこそこは行けるだろうと高を括って始めると、しょっぱなから単語の発音とアクセントに関する出題だ。4つ並んだ単語から、他の3つと違う単語を選べという設問なのだが、明らかにそれと判るものもあれば「あれ!」と首を傾げて、イギリスの高校を出ている妻にちょっと尋ねたくなるものもある。一人で全問題を解こうと思っていたのに、そんな気持ちになるとは、早くも前途多難の様相である。


その後の問題もブランクに動名詞を入れるのか不定詞なのか、或いは形容詞を入れるか副詞なのかなど、普段の会話ではどうでも良さそうなものもあり、時々答えを書くペン先が鈍る。解き進むうちTOEICほどのひっかけこそないが、4択から正解を選ぶ為には、時間をかけて文意を計るべき箇所が多いことに気づく。複数の出題者がいるようで、やけに易しい部分と細部にこだわる問題があるのも気にかかる。面食らうのは長文読解であった。文中に難しい単語はまったくないが、ダラダラと続く起承転結に乏しい文章がどうにもなじめず頭にピンと入ってこないのだ。文に含意される微妙な点を解きほぐす為に、ぶつぶつと口に出して幾度か音読みを繰り返すうち、今度は80分という時間制限が気になってくるのだ。


ビジネスで使う英語は、しょせん売るか買うか、クレームがあるかないか、受諾するのか拒否するかなど目的がはっきりしている。英文契約書や裁判・仲裁の判例なども双方の立脚点や争点・論点が明らかだから、少々長くても最後に結論が明確に分かる。それに比べると散文的に展開されるセンター試験の長文は、当方が慣れないせいもあってかなり冗長である。こんな抑揚のない緩い文章を実際に職場で書いていたら「もう少し難しい単語を使っても良いからもっと簡潔に書けよ」と上司に怒られそうだ。しかしこのような大した意味のない文章から、作者の意図や細部の違いを見分ける英文読解力をここでは試しているのだろう。このあたりが試験の英語たるゆえんである。


軽い気持ちで始めたセンター試験英語も、と云うことで時間ぎりぎりで終わった時には結構エネルギーを使ってぐったりしてしまった。高校から一貫教育校(付属高校)に入って大学入試はなかったから、入試問題などを解いてみるのは50数年ぶりのことである。終わって新聞のあちこちのページを繰ってバタバタとぎこちなく答え合わせをやっていると、大学入試を経験し、銀行に入ってからも各種の資格試験を経験した妻は、「実際の試験では音読は許されないわよ」「あなたって本当に試験慣れしていないのね」「ある意味恵まれた人生よね」などと傍らで呟いている。さて答え合わせの結果は200点満点で170点ほどだった。今年の平均点はまだ発表されていないが、昨年の英語筆記平均は110点くらいだそうだから、(難易度が同じ位とすれば)受験勉強せずとも英語だけは、なんとかどこかの大学に入れるのかもしれない。さて、次は国語もチャレンジしてみようか。(と思ったが、ちよっと読み始めたら難しすぎ、即あきらめた)

2019年1月17日 (木)

認知症予防の新・生活習慣

朝、いつものように勤めに出る準備をしていると、かたわらで新聞を読んでいた妻がニヤニヤしながら紙面を指さしている。見ると週刊文春の広告が紙面下部に大きく掲載されており、その中の「認知症予防の新・生活習慣12」という特集の見出しを読めという事らしい。どれどれと活字を追ってみると認知症予防には「運動:チームスポーツに挑戦、社交ダンス、エスカレーター断ち、食事:柑橘類は毎日摂取、カレー、乳製品、大豆・発酵食品 医療:早めに補聴器、3カ月に一度は歯医者」とある。生活習慣12のうち広告の見出しには10項目しかないが、この特集はなにを書いているのかの紙面をみれば大体の見当はつく。


さて船上で優雅に踊ってみたい、という事で妻と二人で習い始めた社交ダンスも、ワールドクルーズが終わってしまうと次は何を励みにしたらよいのか、ちょっと目標喪失のような状態である。このままレッスンを続けようかと逡巡しているところなのだが、妻は社交ダンスが認知症に良い、と云う見出しを私に見せて、このままレッスンに引き留めておこうと云う魂胆だろう。まあ、しょせん週刊誌の記事だからそれなりの内容であろうが、たしかに社交ダンスを習ってみると、予想以上に體育會系で今まで意識した事もないような筋肉や神経を駆使しなければならないから、ボケ防止には効果的だろうと想像出来る。


同様に新しい事を、頭で理解しつつ筋肉や神経を使って実践していくこと、例えば楽器の演奏なども認知症予防には効果があるだろう。などと考えながら、取敢えず週刊誌の見出し10項目のうち自分は何をやっているのか数えてみると、まずチームスポーツはやっていないが、エスカレーター断ちは実践中である。これは60歳代後半になって、筋肉量が減っている事を実感し、通勤時の地下鉄は階段を二段飛びで上る事にしたからである。と云っても最近の都内の地下鉄はかなり深い駅もあって、長い階段を見上げてうんざりする事もあるが、そのような階段は途中で2段飛びをやめ各段をコツコツ上がるのである。


食べ物の項目にいくと柑橘類こそ毎日意識して食べはしないが、果物は毎日必ず何かしらとっているし、カレーも週に一度は昼食に食べる。乳製品と云えばヨーグルトは毎日食べ、みそ汁や納豆もほぼ毎日である。補聴器はまだご厄介にはなってないが、歯医者には三カ月に一度定期検診に通い歯周病はゼロだ。と数えると、週刊誌が謳うボケ防止に役立つことはすでにほぼ実践しているようだ。週刊誌の広告を前にそれを自慢気に妻に話すと、「ボケ防止のためにはますます張り切って取り組まないとね」と社交ダンスレッスンの継続を仄めかされたのであった。

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2019年1月12日 (土)

にっぽん丸のグアム事故

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2008年正月乗船した「にっぽん丸グアム・サイパンクルーズ」 アプラ港着桟中、今回衝突したと思われる対岸桟橋を船尾からのぞむ (画面左に見えるのは飛鳥Ⅱの船首)

商船三井客船(MOPAS)の「にっぽん丸」(22,000トン)が、昨12月30日夜「ニューイヤー グアム・サイパンクルーズ」でグアム・アプラ港を出港する際、操船を誤って対岸の米軍岸壁に衝突し、岸壁に300万ドルと云われる損害を与えたと報道されている。この事故で本船の船尾右舷下部にも大破孔が生じ、堪航性の維持が困難なため現地で修理が必要になってクルーズは中止、乗客はMOPAS手配のチャーター機などで帰国したそうだ。不幸中の幸いは乗客・乗員に死傷者がなかった事だった。事故後に船長のアルコール検査を行ったところ、船員法に基づく安全基準を超える濃度が検知されて問題になっているところである。


私が初めてクルーズ船に乗ったのが20年前、MOPASがかって運航していた「ふじ丸」で、以来同社の「にっぽん丸」にもたびたび乗船してきたので、他人ごととは思えない事故である。これまでも内外のクルーズ船に乗って狭水道や難しい場所にある岸壁に行き、そのたびに各船長の操船ぶりに拍手を送ってきたのだが、今回はどうしたことだろうか。クルーズ船は、離着岸の際に船長が自ら船橋ウイングのジョイスティックで操船するので、もし本当に「にっぽん丸」の船長が当時酩酊して操船を誤ったのならばこれは大問題である。後進離岸で行き足がつき過ぎたという噂もあるが、ただ船長の指揮下とはいえ、パイロットが乗船してタグが本船をアシストしている状況で、なぜ対岸の岸壁に衝突したのか、事故の解明にはまだ確認しなければならない点が多い。


私は永らく海運に携わって貨物船の海難事故に幾度となく関わってきたが、ニュースを聞いて客船ではこういう場合にどういう事故処理が行われるのかにわかに気になった。ということで、まず「にっぽん丸」の旅客運送約款を読んでみると、その第6条に「天災・火災・海難・本船の故障その他やむを得ない事由が発生した場合には、予定の航海の中止、短縮の措置をとる事がある」とある。また第13条で「前条に基づき航海を中止・変更などの措置によって生じた損害はその賠償する責めに負わず」とされ、第16条で「航海を中止した時は、既航海の部分は徴収し、未達の分は払い戻す」としている。


海難事故を起こした場合にはそれまでの運賃は頂きますが、その後は知りません、自力でなんとかして下さいというのが「建て前」になっているようだ。他の日本船2隻「飛鳥Ⅱ」や「ぱしふぃっく・びいなす」の約款を見ても内容は同じで、「航海過失は免責である」というヘーグルールなどに代表される海運の伝統に根ざした運送約款だと理解できる。ただ事故が船長の飲酒による過失によるものだと認定され、乗客が損害賠償を申し立てた際に、「航海過失の免責」を盾に約款通りの対応をMOPASがとれるものだろうか。この点を知人の海運に関わる法律家に意見を聞いたところ、「それは程度問題・ケースによる、ただし約款の準拠法が日本法なので、日本の法廷ならば損害賠償が認められる事はありうる」との事。


一方この事故で蒙ったMOPASの損害については、船体の破孔は船体保険で、300万ドルとされる岸壁の損傷はPI保険(船主責任保険)でカバーされるであろう。乗客に関する保険としてかけている船客傷害賠償保険は、旅客の死亡・障害・疾病などで賠償責任を負った際の保険のため、今回は適用されるのだろうか?特約がない限り、帰りのチャーター機の費用などはMOPASの持ち出しになるであろうが、その他、本クルーズ後予定されていた数航海のクルーズが中止せざるを得なくなった期待利益に関する保険や、オフハイヤー保険(船舶の休航に伴う損害をカバーする保険)のような保険をMOPASがかけていたのかはわからない。


事故当初MOPASは約款に基づき、事故までの運賃は徴収、事故以後のものは返金するとしていたが、その後対応を変えクルーズ代金全額返戻するとしたそうだ。クルーズ代金全額を返金し、乗客の帰国費用まで商船三井客船が支払った場合、かなりの金額をMOPASは自腹で支出したのであろう。ネットであっという間に事故の対応が拡散する時代、これからも日本で客船ビジネスを続けていくために「約款にない道義上の責任」をとったものと思われる。あるいは飲酒上での操船となれば、「航海過失免責」とも主張し難い事を考えたのかもしれない。


戦後、航空機時代が来て、郵船が客船の運航から遠ざかっていた時にも、細々ではあるが南米移民船以来、途切れずに客船事業を続けてきた商船三井である。正月の繁忙期に即座に大型機をチャーターし、代金全額を払い戻した事も彼らの矜持なのだろう。今回の事故を契機に副船長を配置するなどMOPASは体制をたてなおし、これからは安全なクルーズ船事業を提供して欲しいものだ。

日本のクルーズ船は離着岸の際、船長自らウイングの操舵スティックで操船する
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2019年1月 9日 (水)

切腹最中

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新橋で大正初めから営業している新正堂の名物「切腹最中」を、さる新年会のみやげにもらった。以前にも新橋近辺のマンションに住む友人からいただいたことがあり、この界隈ではけっこう人気の和菓子のようだ。菓子の名前として「切腹」と云うのもちょっと変だが、そもそも新正堂のあるあたりは元禄時代、田村右京太夫の屋敷だった場所で、殿中で刃傷沙汰をおこした浅野内匠頭がここで切腹させられたので、それに因んで命名された菓子だそうだ。
「12月14日 赤穂浪士の討ち入り(2018年12月14日)」


「…皆様の口の端に上ればという思いを込めて、最中にたっぷりの餡を込めて切腹させてみました」と同封の「切腹最中のしおり」にある如く、包装箱をあけると小さめな皮から溢れんばかりの餡がみえる。最中のお腹を切り裂いたかのように餡子が詰め込まれているその形状と、浅野内匠頭が切腹した場所であることをかけたあたり、江戸っ子のしゃれっ気たっぷりの菓子で、なかなかのアイデア商品だと云えよう。一口食べると最中の皮はさっくりで求肥を包む餡子は新鮮、腹切りと云うネーミングとは思えぬ上品な味が良い。洒落の判る相手なら、何か失敗した折にお詫びの印で切腹最中を持参するのも面白い。


さて、しおりに「本品が話しの花を咲かせるよすがともなればとと心を込めておつくりしております」とある通り、もらった最中をつまみながらあらためて忠臣蔵の事を思い出す。そういえば今読んでいる百田尚樹氏による話題書「日本国紀」の「赤穂事件」の項目には、江戸時代に江戸城での刃傷事件は七回あり、内匠頭が切腹というのは当然の処置だったとある。内匠頭が刃傷沙汰をおこした理由は「いじめ説」「怨恨説」など様々あるが、単に「精神錯乱」だったのでは、というのが百田説で面白い。彼の云う「錯乱」がなければこの切腹最中もなかったのかと歴史の綾の面白さを感じつつ一挙に二つ食べてしまった。

2019年1月 6日 (日)

JTB2019年サン・プリンセス世界一周と飛鳥Ⅱ2020年世界一周クルーズ

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昨12月なかば、飛鳥Ⅱが2020年春から103日間のワールドクルーズを行うことを発表した。飛鳥Ⅱによる世界を一周するクルーズは私達が乗船した2018年以来2年ぶりである。この2018年の飛鳥Ⅱワールドクルーズは、アデン湾で海上自衛隊”せとぎり”の護衛を受け、初めて念願のスエズ運河を通行し、地中海から北米・南米を廻った素晴らしい旅であった。ただその前に夢は何度も、と云うことで、私たちは今年2019年に催行される”サン・プリンセス”世界一周チャータークルーズも、一昨年のJTB の説明会場で勢いで申し込んであったのである。こちら”サン・プリンセス”の世界一周チャータークルーズは、ドバイやエーゲ海のドブロクニク(クロアチア)、ベニス、バーリ(共にイタリア)、さらにはカリブ海でオーチョ・リオス(ジャマイカ)など、これまで我々が飛鳥Ⅱで経験した港と違う場所に寄るのも魅力的に思えたのだ。


ではあるものの、やはり友人の会社の手伝いとはいえ、毎年のように仕事をほっぽり出して3ヶ月も家を空けるのも、ちょっと?という気がしないでもない。ごく普通の勤め人だった我々夫婦には、まず先立つ物の問題もある。妻はなによりも”サン・プリンセス”の洗濯場の問題が気になってしょうがないと言っている。というのも我々二人は船内でもジョギングをするため、大汗かいたウエアを毎日洗濯する必要がある。飛鳥Ⅱの場合は各フロアの洗濯場に洗濯機が6台と乾燥機が8台あって、いつでも利用できるが、それでも寄港日の昼間や深夜を除き常時フル稼働であった。これに対してサンプリンセスは、各フロアーに洗濯機と乾燥機が各2台しかないそうで、それも有料のものである。600人から700人の乗客でもいつも満杯だった飛鳥Ⅱの洗濯に対し、2000人の乗客となると毎日のように下着からトレイニングウェアまで船の有料ランドリーに出す事必定で、妻はこれが何とも気が重いらしい。女性の視点は、男とまた違うのである。


その他アルコールの船内持ち込みができないとか風呂がない、ウオシュレットがないなどという不便も考えて、残念ながらキャンセル料のかかる直前の11月に”サン・プリンセス”をキャンセルしたところへ、飛鳥Ⅱ2020年世界一周クルーズの発表である。今回発表された旅程を見るとこちらもインドのゴア、前回は荒天のため抜港されたミコノス(ギリシャ)、パルマ(マヨルカ島)など魅力的な寄港地が多い。私はかつて仕事で関わった鉄鉱石輸出で賑わった旧ポルトガル領のゴア(インド)に興味があるが、妻はリボルノ(イタリア)からフィレンツエやベニスにランド・ツアーをしたい、はたまた今回はマチュピチュにも行ってみたいなどと、パンフレットを前に夢を膨らますのである。それにしても、飛鳥Ⅱの今回発表された価格は、一段と高いのが気に懸かる。硫黄酸化物の規制で2020年から高価なバンカー(燃料)油を炊く必要がある事や、クルーの人件費が上がっている事などを考えても、2018年に比べて10%~20%の値上がりは懐具合に大きく響く気がする。


しかし先の飛鳥Ⅱワールドクルーズから帰国した後、思わぬ病気で入院・手術や治療を経験してみると、元気なうち、身体が動かせるうち、自由が効くうちに出来ることは大いにしておくべし、と云う思いも一段と強くなった。また年齢的に不自由なく旅行などができるのは男性は80歳台前半位まで等という統計を聞くと、心置きなく遊べるのもあと10数年で、そんな時間はあっという間なのかもしれない。若い頃と違ってユースホステルや山小屋泊まりというわけにも行かず、ちょとした海外旅行をすると結構高いものになるから、いろいろ総合すると飛鳥Ⅱのロングクルーズも決してそう高くはないなどと自己の考えを肯定をしてみたりする。毎日の海上生活を楽しみつつ、朝目が覚めると知らない国、美しい港にいるという海外のロングクルーズの魅力はやはり捨てがたいものだ。飛鳥Ⅱの2020年世界一周クルーズを前に、思い切ってまた申し込んでみるかと逡巡しつつ、そうなると遊ぶために、まだ暫く働かなくてはいけないのか、などと悩む新春である。

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僚船サファイヤ・プリンセスのコインランドリー(2009年)

2019年1月 2日 (水)

沖縄旅行・にぎわう沖縄の本質

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暮れから正月にかけて沖縄に行ってきた。毎年親族一族の誰かが2月末~3月に行われる東京マラソンの抽選に当たるので、その走りこみ練習を兼ねて正月は南の地方に合宿兼観光旅行を恒例にしているのである。これまでにも宮崎や石垣島、長崎、伊豆大島などで正月を過ごし、昨年はしまなみ街道の今治で元旦を迎えたが、今年は東京マラソンに出る義弟の走力強化の一環として皆での沖縄合宿である。


目的の走る事は”それなり”にこなしつつ、合宿ではご当地を観光して廻ったり、旨いものを食べるのが大きな楽しみだ。という事でレンタカーで島内を廻ってみると、沖縄の道は広く、街道沿いには大きなショッピングモールがあちこちにあって、なんだかハワイやグアムにいるような気がしてくる。驚いたのは大晦日でも街道は車の流れが絶えず、飲食店はどこも賑わっており、今まで毎年、暮れ・正月を過ごした本土の各地とはちょっと年末・年始の風情が違う。


そういえば昨年の今治合宿では、大晦日は夜の町がひっそりと暗く、ご飯をどこで食べられるのかひどく心細かったものだった。反対に沖縄のこの元気さはどこから来るのだろうか。沖縄には幾度か来た事があったが、これまで訪れたのは那覇市内が主だったから、初めてそれ以外の地に触れて、島内総じて活気が充ちているのを実感した。なので「沖縄の県民所得は全国でもかなり低い」「全国の米軍基地の70%以上が沖縄に集まっている」など、ふだんインプットされる当地の悲観的なニュースに、今回の旅で違和感を感じたのである。


それもそのはず、いまや沖縄は「観光・基地・公共事業」の従来型の経済に加えてIT産業も伸び、経済が好調、失業者が減って地価上昇、成長率も高いそうである。目を見張るのは道路事情で、ここでは高速道路に加え都市部の国道は何車線もある立派なものが伸びているし、新しいバイパスも完成しているようだ。また各地のきれいな海辺は大規模な護岸工事で造成されているし、さらに今後は空港の拡張などの公共事業計画も多いと聞く。島内あちこちに米軍関連の地元業者も多く、ショッピングモールでは多くの米軍人や家族が買い物をしている姿も見られて、彼らも経済に貢献していることだろう。


これを見ると、どうやらここでは貧しさや米軍基地問題をサヨクがことさら大きく取り上げ、それを沖縄の2大新聞が煽り、自民党が反対運動の盛り上がりを背景に国から多くの補助金や助成金、税の優遇措置を引っ張ってくるという利権の構図ができているのではなかろうか。「辺野古の自然は貴重で基地反対」とサヨクは騒いでいるが、沖縄ではすでに各地で護岸工事が行われ、多くのきれいなさんご礁の海が埋め立てられているのである。ただ辺野古だけ大反対するのも、騒げば騒ぐほどカネの種になる、という仕組みがあるのだろう。ローラとか云うタレントの「美しい辺野古埋め立て反対」のツイッター騒ぎも、何だか事の本質から外れた頓珍漢な出来事に思われる。


パスポートなしで気軽に国内から行ける南国のリゾート、米軍が展開するのでその経済的貢献の上に国から多くの支援があることなどなど、普段のネガティブなメディアの情報操作とは違う将来性ある地である事が今回の旅で感じられた。このような地理的・地政学的なメリットがあるのだから、これからは税制その他で恩典などをもっと得られる土地にしたらどうなのだろうか。例えば沖縄では現在、観光客だけが得られる関税免税があるが、その他すべて島内で消費される商品も消費税なしにするとか、船舶の船籍地とすれば各種免除を得られる地とするなどが考えられよう。またカボタージュ対象外地区として、国内を周遊する外国籍のクルーズ船が沖縄に寄れば一旦日本国外に出た事と同等にし、韓国など外国に寄港する必要がないようにするなどというアイデアもある。その他、簡単なところではオープンカーのレンタカーを多数用意、カジノ解禁など素人でもいくつかアイデアが出てくる。百聞は一見にしかず、基地反対ばかり報道するメディアからは正しい姿が見えてこないようだ。

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