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2018年7月19日 (木)

「保守の行方」と「保守と大東亜戦争」

20180719

物心ついてから私は一環して保守を自認している。かつて学生運動が盛んなりし頃は、機動隊に石や火炎瓶を投げる全共闘のヘルメット姿を見て、こちらから全共闘に石を投げていたものだ。今でも霞ヶ関などを歩くと、あまり身なりがきれいでない初老の人たちから「安保法制反対」だの「原発反対」だののビラを手渡されそうになるが、「俺は法案も原発も賛成だよ」とそんな紙は突き返してしまう。かつての革新、今で云うリベラル派の時流に乗ったような主張が嫌なのである。


といっても自分が誇りに思ってきた「保守」とは一体何なのか、本来の保守、保守の本質は何かという疑問にいつも突き当たる。ソビエト連邦が崩壊するまではアメリカに代表される自由主義経済と民主主義体制を信奉するのが保守で、平等に価値を置き計画経済のソ連や中共を模範とするのが革新だというはっきりした分類があった。日本でも「保守」は総じて「親米」だったし経済開放の勢力で、「革新」は社会主義・共産主義的社会をめざし全体主義志向の人たちだった。


しかし今や状況はかなり違う。東西冷戦が終焉しマルクス・レーニン主義は消滅、その後に出現した新自由主義や経済のグローバル化などによって「保守」とは一体何をさすのか定義する事が難しくなった。殊に自国第一主義を掲げるトランプ大統領の保護貿易を批難し「自由貿易を守るのは中国」などと云う最近の中国の発言を聞くと、プロパガンダに過ぎないのは判るが「自由を規制するのがアメリカで自由を守るのが中国か??」と苦笑する。


「保守」という概念を本当はどう捉えたら良いのかとの思いに、最近読んだ新書2冊がとても参考になった。「『保守』のゆくえ」(中公新書クラレ)の佐伯啓思氏は、今日の進歩主義やグローバリズムは従前の確かな価値や秩序原理をこわし、世の中を混沌状態に陥いらせているから、進歩主義を牽制すべきなのが保守者の基本だと言う。保守はそれぞれの国や地域で、歴史的に生成してきた慣習や社会構造、文化や価値観を急激に変更してはならない、改革は漸進的であるべきだと佐伯氏は述べる。


「保守と大東亜戦争」(集英社新書)の中島岳志氏も人間は不完全で間違いを犯すものだから、理性に万全の信頼を置く事は間違いであるとしている。信ずるべきは伝統や慣習、良識などであり歴史の風雪に耐えた社会的経験値で、やはり改革は漸進的に行うのが保守の態度であると云う。急進的変化、ラジカルで極端なものの中には必ず理性への過信が含まれており、それに依拠してはいけない事を、戦争反対を貫いた「保守派」の言葉から中島氏は導きだしている。


二つの書を読んでわが身を顧みたが、私は常々ラジカルな言動にはついて行けず社会変化はゆっくりが良いと思っているし、年齢が進むに連れて伝統や慣習にこだわる様になってきた。かつての革新派、今のリベラルの主義主張にはもとより賛同できないし、やはり自分は保守主義派だったかと再認識したのだった。

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コメント

初めまして。陸酔いは収まりましたか。船旅は楽しいバルクさんの元気なブログを最近見さして頂き楽しみにしています。一度飛鳥の船上でお話を聞けたら幸せです。一環して保守を貫く姿勢を尊敬します。日本三景クルズ予定しています。保守の行方読みます

第二海堡さん

コメントありがとうございます。9月の日本三景クルーズは予約で満船との事。どうぞお楽しみ下さい。

私たちは次の飛鳥Ⅱの乗船予定が決まっておりません。その前に稼がなくては。夏は友人の会社の仕事を手伝う予定です。

保守の件、西部邁さんの死を聞いて彼に連なる一連の著作家の本を読む気になりました。

中国の覇権主義、朝鮮半島の動向、ロシアの行方、なにより民主主義で選ばれる米国の大統領の奇矯な存在などを見るにつけ、日本はいま大変な曲がり角にいる事を認識しなければと思っています。その中でどういう立ち位置をとるのか考えさせられます。

バルクさん、初めまして。今回の世界クルーズのレポート楽しく読ませていただきました。私は過去2回ほど飛鳥Ⅱのクルーズを経験しました。実は、飛鳥Ⅱの和田機関長とは、高校の時の同級生であり、彼が休暇中は酒を酌み交わす仲でもあります。先日下船して休暇中の和田機関長に電話をし、無事に帰れて良かったねと言いました。そして、今回のクルーズは、アデン湾航海中は、アサギリが護衛していたようだねとか、ミコノスは波が強くて寄れなかったそうだねとか、今回のクルーズは時化る事が少なくてナイスクルーズだったそうだねとか、船長や船のスタッフが乗客を喜ばすためかなりの努力をしていたようだねとか話したら、何でお前そんな事知ってるんだと言い返してきました。(笑)あと和田機関長も、フェンウェイスタジアムに試合を見に行ってたようですよ。また飛鳥Ⅱで和田機関長に会う事があるようでしたら、私の名前を出してお話ししてみて下さい。いろいろ話してくれると思いますよ。追伸、今回のクルーズは時化が少なくナイスクルーズだったですが、7月4日、横浜を離れて神戸に向かうクルーズがかなり揺れたそうですね。最後の最後に災難でしたね

いりえさん

コメントありがとうございます。
和田機関長はどちらかと云うといじられキャラに見え、私の妻は郵船クルーズのロゴが入った作業用のつなぎをくれ、と幾度も彼に迫っておりました。
仮に捨てるものでも、さすがに会社のマークの入った作業着の横流しはまずいと思われたのか、船内で妻と目が合うといつものらりくらりと逃げる和田機関長の様子が面白かったです。
いい人なのでしょうね。

またコメントをお願いいたします。

パルクさん、返信ありがとうございます。又、、コメントいたします。今月11日は、和田機関長はじめ、高校の時の同級生と飲み会です。また、和田機関長ネタ書きますね。

いりえさん

和田機関長によろしくお伝え下さい。

私たちは4月17日のディナーがチーフエンジャーと同じテーブルだった、ツナギを欲しがる変った妻の夫婦です。

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