アデン湾の観艦式
ソマリア沖海賊問題を描いたトム・ハンクス主演の映画「キャプテン・フィリップス」は、今回寄港したオマーンのサラーラのコンテナターミナルから話が始まる。ケニアのモンバサに向かうマースクラインの米国籍コンテナ船”マースク・アラバマ”号のフィリップス船長が、海賊に誘拐される実話に基づいた話題作だったが、いよいよ飛鳥Ⅱもこの辺りからソマリア沖海賊に対する警戒海域を航行することになった。
以前我々が乗った2011年の飛鳥Ⅱワールドクルーズも、海賊問題のため急遽アフリカの喜望峰を廻る航路に変更となった経緯がある。その折にはいつの日か紅海を渡ってスエズ運河を通り地中海に行きたいものだと思っていたところ、今回やっとその願いがかなう事となった。そのためにはまず海賊多発海域であるアラビア半島の南端イエメンとアフリカ大陸のソマリアの間にあるアデン湾を通航する必要があり、ここを飛鳥Ⅱは他の数隻の商船とコンボイを組んでジプチに駐在する我が海上自衛隊の護衛艦に守って貰うことになる。
今回コンボイに加わるのは飛鳥Ⅱの他、商船三井のVLCC(超大型タンカー)”IWATESAN”、それに外国船主のハンディ・バルカー(ばら積み貨物船)の三隻で、速力は最も船速の遅い満載のVLCCに合わせ12ノット強である。サラーラ沖から始まって紅海の入り口までの間、まる2昼夜を青森県の大湊基地から派遣された護衛艦”せとぎり”を先頭にして、左側に”IWATESAN”、右側に飛鳥Ⅱ、後方2マイルほどに位置するバルカーによる護送船団で進んだ。この間、飛鳥Ⅱには英国の警備会社のガードマンが乗船したうえ、夜間の灯火管制、暴露甲板への立ち入り制限などの対策が都度取られた。
もっともここ数年ソマリア海賊の発生件数はめっきり減っており、外国の貨物船やタンカーはコンボイに加わらないのが多いようだがそこは飛鳥Ⅱである。万全の措置の甲斐あって何事もなく無事に紅海に入る事ができた。コンボイ解散の朝、4月15日は飛鳥Ⅱに接近した”せとぎり”が観艦式のような大回頭で一旦後ろに廻り、再び速度を上げて飛鳥Ⅱを追い越しつつ登舷礼が行われた。飛鳥Ⅱからは多くの乗客が手を振り、護衛してもらった自衛艦に礼を述べる感動の場面である。我々もこの日のため日の丸と旭日旗(軍艦旗)を持参し、”せとぎり”から視認できるように懸命に振ったのである。日本を遠く離れたアデン湾で出会う日本の軍艦は何とも頼もしく胸の熱くなる瞬間で、これだけでもこのクルーズに乗船してよかったと感じたのだった。
飛鳥船上の持参の旭日旗。”せとぎり”がマストに大旭日旗を掲揚するまで当初は”危ない人?”のような他の乗客からの視線を感じた。
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