砂漠を船で行く
さてスエズ運河である。パナマ運河はすでに何回か通ったことがあったが、スエズの通航は人生初めての体験だ。地図をよく見ればアラビア半島とアフリカ半島の付け根にあるスエズ地峡は紅海と地中海の距離が約150キロあまりで高い山もない。途中には自然の湖もあるから運河を掘削すればインド洋とヨーロッパの海が大幅にショートカットされる事は明らかである。現に千年前のペルシャ王朝ダリウス大王時代には、ここに運河があったようだが、現在の運河は1869年にフランス人のレセップスによって造られたものである。
ソマリア沖海賊の活動が盛んだった2011年の飛鳥Ⅱのワールドクルーズは、横浜を出て喜望峰を廻り39日目にポルトガルのリスボンに着いたのに対して、今回は25日目でスエズを通過し地中海に入ることができたからやはりこの運河は便利なものだ。飛鳥Ⅱの船内紙ASUKA DAILYによるとナポレオン時代にもスエズ地峡に運河が計画されたものの、当時はなぜか紅海の水位が地中海より9米高いとされたため、運河の開通で紅海の水が地中海に流れ大災害をもたらすと考えられ計画が挫折したそうだ。その後この測量が誤りと判ったため、現運河が建設されることになったと云う。
運河は北行きの船と南行きの船が、複線になった水路地帯ですれ違えるように当局の指示に従って船団で通峡する。飛鳥Ⅱは4月19日の北行き船団の一番船としてパイロットを乗せ早暁に紅海側の錨地を出発したが、本船の右舷側は荒涼たる砂漠地帯、左舷側は灌漑された土地に畑や木々が見られる大地であった。砂の世界と反対側に広がる人工的な緑の景色を見ていると、自然は征服するものとする西欧の原理主義・合理主義やイスラムやキリスト教などの一神教が、この地で生まれた理由が判る気がする。良くも悪くも緑や水に恵まれ八百万の精霊に囲まれたわが国の自然とは、あまりにも違う風景の中を日本の船に乗って行くスエズの旅である。
砂漠の中をコンテナ船が行く
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世界一周の旅をあなたのブログで楽しませていただいています。後10年後に飛鳥Ⅱの世界一周を計画していのる55歳です。でもあなたぐらい博識でないと世界の旅も退屈そう。ちなみに2017初めてアジアパシフィックグランドクルーズに乗船してその余韻を引きずっています
投稿: トカイトヨコ | 2018年4月21日 (土) 20時24分
トカイトヨコさん
コメントありがとうございます。
船上では新しい出会いがあり、旅そのものとは別の楽しみもあります。
船上でお目にかかる日を楽しみにしております。もっとも我が家はワールドはこれで最後と妻に宣言しています。
投稿: バルクキャルアー | 2018年4月22日 (日) 00時57分