サラーラにて
これまでのところ奇跡的なほど凪いだ日々が続いている2018年飛鳥Ⅱワールドクルーズである。クルーズ20日目、インド洋を西に向かって航海を続けた飛鳥Ⅱが到着したのはオマーンのサラーラ港であった。サラーラに入港するとインド洋やアラビア海を航海する独特の小型船の傍らに、多くの巨大なコンテナ船が荷役している光景が見られた。ここは世界有数のコンテナ船会社マースクラインの一大ハブ港である。地図を開けばサラーラはインド洋やペルシャ湾、遠くは西豪州などの東半球各地とヨーロッパの間の結節点のような場所にあり、なぜマースクラインがここに積み替えの拠点を設けたのかが改めて理解できた。
船乗りシンドバッドの話はオマーンの船員をモデルに描かれたという通り、この辺りは古くからアジア・中東とヨーロッパの文化、物流が交差する海域だったのである。以前にも何度かアップしたが海外でも国内でもクルーズ船に乗って旅すると、なぜそこに町ができたのか、初めてなるほどと気付かされることが多い。近世以降に発達した鉄道や飛行機などの交通手段に乗っていては判らない地理を船旅は教えてくれるのである。その要衝であるサラーラはかつては乳香の一大積み出し港として発展したそうで、町の郊外には中世に栄えた都市アルバリードの遺跡がある。キリストの生誕に東方の三賢人から送られた物の一つが乳香で、木の樹液から生成される乳香は以前は香や香水のほかに医薬品として珍重されたと云う。
町を観光するツアーに参加すると、そこはやはりアラブの世界である。西欧的な高層建築はあまり見られず、町のあちこちにモスクの尖塔が目につく。男はクーフィーヤと呼ばれる白いかぶりもの又はターバンを頭に乗せ、白い衣装を着けている者が多い。なにより女性が町の中にあまり見れらないのが何とも異様である。港を離れると椰子やバナナの畑以外は周囲に砂漠の様な景色が広がっているが、現地ガイドの説明では石油などからの収入で医療費・教育費は無料という羨ましい国でもある。もっともここから1000キロ離れた首都マスカットにいる商社やトヨタなど日本人の駐在員は、休暇にはドバイに息抜きに行くそうで日本人にはやはり遠い国という感じがしたオマーンであった。
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