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2018年2月11日 (日)

保守の真髄 西部邁

20180210

西部邁氏が先月亡くなった。1980年代の終わりごろから「朝まで生テレビ」などで大島渚や姜尚中らを相手にディベートを繰り広げたおなじみの保守の論客である。アメリカのくびきを離れ真の独立の為には、日本も核を持つ事やむ無しとする西部氏の考えには耳を傾ける点が多い。西部氏が関わった雑誌「表現者」などを通じてその主張のいささかでも聞きかじった私としては、最後に氏が自裁死と称して自ら人生を終えた事がかなり衝撃的であった。


その西部氏の「最期の書」とされた「保守の真髄」が講談社現代新書から出されたので早速購読してみた。神経痛のために書くことができなくなった西部氏が、娘を相手の口述筆記で出した本で、「死の覚悟」を以って「本気度をできるだけ強く表面に出して語ろう」と冒頭にある。「文明の紊乱(ぶんらん=みだれること【広辞苑】)を語る」とサブタイトルにある本書は、なるほどとうなずく箇所が多いものの、正直言って私の凡庸な理解力ではついていけない文章も多かった。


例えば「人間の意味行為といい社会における価値活動といい、水平軸にあっては意味価値の『同一化と差異化』の対比によって、垂直軸ではその『顕在化と潜在化』の対比によって行われる。」(75頁)などとある。そのような難解な部分は悲しいかな読み飛ばすしかないのだが、ただ古今東西の思想に通暁した西部氏が考え抜いた現代文明に対する思いが「本気」で述されている本である事は間違いない。


本書の最後は西部氏の惜別の辞である。紊乱の世の中を正視するに堪えない氏は、先に奥さんを亡くしているそうで、手が不自由になった自身の事もあって今回の決断をした事がうかがえる。保守の評論家・江藤淳氏が亡くなった時にも思ったが、どんなに立派な思想をもった人物でも、妻に先立たれると男は弱くなるのだろうか。それにしても舌鋒鋭いコメントの後に、ちょっと照れたようにニヤっと笑う碩学・西部氏の表情が、テレビ画面から見られないのは寂しいものである。

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