ベンチャーか伝統か?
1月17日付けの読売新聞は内閣府がまとめた「世界経済の潮流」と云う報告書から、米国では企業の新陳代謝が雇用拡大などを通じて経済成長に重要な役割を果たし、また設立から20年以下の歴史が浅い企業による雇用が約7割(日本は2割)を占めていると報じている。と云う事で内閣府から発表されている報告書の「アメリカ経済」(URL)の項目を読んでみた。それによるとそもそも起業に対する心理的抵抗がアメリカ人は少なく、ベンチャーキャピタルなどが資金的な後盾になって若い新しい会社が増えているとある。また会社設立後20年以下の企業の数を比較したところ、米国は全体で9割を超えたが日本は2割にとどまっているという。
アメリカではM&Aなどを通してエネルギー分野や小売・卸売・ヘルスケアなどで短期間に世界的企業に成長する会社も多いと報告書は述べ、「企業の新陳代謝が経済成長に重要な役割を果たしており、このようなビジネスダイナミズムを維持・強化するための環境整備が重要であると考えられる」と結んでいる。たしかに私も1990年代にアメリカに駐在していた経験からすると、世界各地から移り住んできた多様な人種から成り立つその社会は、さまざまな分野で日本より冒険精神が富んでいるとしばしば感じたものだ。周囲にはよい年をして永年勤めた会社をフッと辞めまったく違う事を始める人が何人もいたし、東部がいやになったから好奇心で西部に移ってきたなどという家族もいて、純日本式のサラリーマンである私はアメリカ人の自由な精神に驚かされる事が多かった。もともと移民というのはそれぞれの国で食えなかった人たちだから、新天地アメリカでは自由な気持ちで上昇志向を保ち続けるのだろうし、起業家精神も富んでいるに違いない。
一方で報告書は、日本人の起業に対する抵抗感がアメリカのみならずフランス・ドイツ・イギリスなどより強い事をデータを用いて示している。老齢化や成熟した社会を背景に子供が大事にされ、なるべく無難に生きるように薦められる今の教育システムによるものだろう。もっとも日本には老舗企業ランキングでは世界でダントツでギネスものだという事実もかたや存在するのである。現存する世界最古の企業は寺社や文化財の復元・修理を手がける金剛組という会社だそうで創立は紀元578年と云われるが、ほかにも旅館や清酒製造など多種の分野で200年以上の歴史を持つ多くの会社が活躍し、古い会社が元気なのは日本が世界一だと云う。創業者一族のみで会社を受け継ぐ事なく、年功序列で従業員が永く在籍する日本式システムが古い企業が時代に即して生き残るポイントだと云われ、会社が社会の公器のようになっているのは日本の良き伝統と云えるだろう。これからの我が国では、日本の古き良きシステムとアメリカの起業家精神がミックスして、新しい活性化の仕組みができないものかと報告書を読みながら考えていた。
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