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2016年12月12日 (月)

明治維新150年とカジノ法案 (北岡伸一氏のコラムを読んで)

12月11日付け読売新聞朝刊の「地球を読む」欄は、日本の政治外交史を専門とし、JICA理事長を始め各方面で活躍している北岡伸一氏の「明治維新150年」「開国と民主的変革に意義」というものであった。そのコラムのなかで再来年の2018年に迎える明治維新150周年にあたり、北岡氏は明治維新の意義をわかりやすく解説した上で、今後すすめるべき事業についての構想を述べており、私にはその内容がとても興味深かった。  


氏は明治維新とは「積極的に国を開き、西欧諸国と対峙するために、国民すべてのエネルギーを動員すべく、既得権益を持つ特権層を打破した民主化革命であり、人材登用革命であった」という。武士社会の既得権益を覆した上で、王政復古から廃藩置県、憲法の制定と内閣制や選挙の導入、職業選択の自由や義務教育の導入など「要するに、明治の偉大さは、開国と民主的な変革によって、国民の自由なエネルギーの発揮を可能ならしめたこと」だと纏めている。


北岡氏の文章を読むと、徳川300年の眠りから覚め、改革に向かった当時の強いエネルギーがわかる一方、冷戦後この20年に亘る日本の停滞をどうしても思いおこしてしまうのである。文中で氏も指摘するごとく「多くの既得権益に手がついておらず、海外の事物の導入にも消極的であり、弥縫策で現状を糊塗」してきたのが最近の日本のありようだろう。同じ様に永い停滞に陥っていた英国がサッチャー革命で「英国病」から脱出した如く、日本も高度成長期やそれ以後の時代を通して溜まってきた既得権益や社会のひずみを、強いエネルギーによってただす必要がありそうだ。


北岡氏は今後、日本の近代化経験などを世界に発信しかつ共有するプロジェクトを推進したいとしているが、それはそれとして、コラムを読んでふと現実に立ち返ると、いま安部首相が取り組んでいるのは、戦後パラダイムのなかで溜まりきった社会的な澱(おり)から、日本を脱出させる試みなのではないかと思われる。アベノミクス、集団的自衛権、年金改革、ロシア関連、真珠湾訪問などの一連の施策は(中にはうまくいかぬものもあるものの)、新たな時代へステップアップするために、首相のエネルギーをもって断行される平成の維新活動だという気がする。そしてその施策がおおむね国民にも理解できるところが、安部政権の支持率が高いゆえんではないだろうか。


その観点から話題のカジノ(IR)法案は、まか不思議な景品交換システムや、半島に多くの金が流れる噂があるなど、とかく不透明と云われるパチンコ業界に大きく影響を及ぼすから、戦後パラダイムへの挑戦ともなるべき法案であろう。これが成立して公営のカジノが開かれれば、パチンコに使われていた金のうち、かなりの額がカジノへ流れるだろうから、競馬などと同じ明らかな金が国や自治体に入る事になる。カジノによって巷間云われる巨大な既得権益の構図が揺るがされる事は、戦後利権に挑戦する安部政治にとって維新の一里塚となること間違いない。反対論者が云う「依存症」の心配は、病気や性格の問題でまったく別次元の話であろう(なんと依存症の一位はパチンコ!だそうだ)。安部首相の指導力に期待したい。


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