国交省・舟運社会実験 水道橋~羽田空港~横浜 その(2)
さて羽田空港で国交省の係員と大半の乗客が下船し、横浜まで通しで乗るのは我々含めて僅かな人数になってしまった。せっかくの天気だし、皆このままクルーズを楽しめば良いのにと思うが、羽田から横浜まで4,000円もするし、実験航海とあって料金は以前に支払い済のため、船上で行き先を変更できないのはとても残念だ。こうして我々数名だけを乗せたJET SAILOR号は多摩川に面した空港の船着場を出ると、すぐに右に回頭し浮島の上流側から京浜運河に乗り入れた。
このあたり京浜運河の周囲には石油化学コンビナート、発電所、製鉄所などが林立して、重工業地帯の真っ只中を進んでいる事がよくわかる。埠頭で荷役する大小さまざまな船や陸上の施設を見ていると、原料入荷や製品出荷で臨海地区をフルに活用してきた日本の基幹産業の優位性が実感できて、アジア諸国の追い上げがあろうと、これらの設備があればまだまだ日本も捨てたものではないと思えてくる。
ただ、京浜運河と云えば昭和37年11月に起きたタンカー同士の事故が脳裏に浮かぶ。これはガソリンを積んで徳山から川崎に向かっていた第一宗像丸(1,972総トン)と、川崎で原油の荷役を終えたノルウエー籍のタンカー、ブロビーグ号(21,643総トン)が運河の中で衝突事故を起こしたもので、第一宗像丸から漏れたガソリンに付近を航行中の小型船舶の火種から引火、あたりが爆発炎上した大事故だった。この事故で周囲の船舶を含む船員41名が犠牲になったが、子供の頃のニュースのインパクトは大きく、今でも”京浜運河”と聞くとこのタンカー事故を連想してしまうほどである。
大黒ふ頭の自動車運搬船を眺めつつ、横浜港地区に来るとまだ予定の到着時間よりやや早い。という事で、ここは船長の粋なはからいで、JET SAILOR号はベイブリッジの下をぐるっと廻る事になった。普段この橋をくぐるのは飛鳥Ⅱやにっぽん丸などのクルーズ船に乗っている時なので、同じ橋を見上げても高さが違って景色はまったく別物である。こうしてちょっと高価ではあったが、初夏の午後に水道橋から羽田空港経由、横浜みなとみらいのぷかり桟橋まで、大人の社会実験を充分に楽しんだのであった。将来は料金や到達時間をもっと現実的なものにして、羽田空港への観光・交通手段としてこのルートが実現される事を望みたい。
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