中国4.0 暴発する中華帝国
クルーズで3ヶ月半ほど留守をしたので、この期間に出版された本を求めて本屋に通うのがこのところの楽しみだ。と云う事で文春新書の2月新刊で、アメリカの戦略家であるエドワード・ルトワックの 「中国(チャイナ)4.0(暴発する中華帝国)」 が出ていたので早速購読してみた。かつて日中の国交が正常化した時、日本の人々から強い親近感を持たれた中国だが、今や近隣諸国を脅かしながら独善的に振舞う国となってしまった。友好的に行動していたあの中国から現在の暴力を奮う国家に至るまで、中国の指導者達は何を考え何に突き動かされたのか、古今東西の他の大国と比較しながらこの国がいかに変化したかをルトワックは独自の視点から分析する。
それによると1970年代から2009年までは、中国は政経分離で国際社会での平和的台頭を目指した時期(チャイナ1.0)であったとされる。2008年に北京オリンピックが成功裡に終わり自信を深め、2009年リーマンショックで世界の経済が落ち込むものの、その影響をいち早く乗り越えた中国は経済力を国力と勘違いして対外強硬路線をとり始め、周辺国との軋轢を生みだす事になる(チャイナ2.0)。ところがその路線が各国から予想外の反撃に合った為に攻撃する対象をベトナムなど一部に制限するとともに、アメリカとの二大国関係(G2)を構築しようとするが、アメリカには拒否されているのが現在のチャイナ3.0時代なのだそうだ。
ルトワックは、*中国のような大国が小国を攻撃すると周囲の国はほとんどが小国側を支援するので結局大国は小国に勝てない、*大国が攻撃を仕掛けても相手は予想した行動に出る事はなく状況はダイナミックに変化する *中国が海軍をいくら増備してもそれを支援する国際的ネットワーク(海洋パワー)がなければ勝てない *アヘン戦争以来欧米の列強に踏み荒らされた歴史を挽回するという感情的な行動が国を誤らせる *アメリカは独裁国家である中国とは国体が違うのでG2体制などを決して容認しない、と安全保障の戦略家としての立場でチャイナ2.0や3.0の致命的欠陥を示す。いざ来たるチャイナ4.0はどうなるのか、はたまた尖閣はどう守るのかなども言及されているが、それは決して我々にとって簡単なものではない事が本書では示唆されるのである。
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