カエルの楽園
100日間のクルーズを終えて、まず最初に読んだ本は百田尚樹の新刊 「カエルの楽園」 (新潮社)である。帰ってくるなり義妹が 「義兄さん達がいない間に出版された中で、これがとても面白かった」 と薦めてくれたもので、私も 「永遠の(ゼロ)」 以来の百田ファンであるから早速彼女から本を借りる事にした。本書は登場するのが主にカエルであるという寓話仕立てなのが変っているが、日ごろ百田氏の憂国の心情に私は共感を覚えていたので大いに期待しつつページを繰ってみた。
話はアマガエルである主人公が国を追われ、ツチガエルが作るナパージュ(NAPAJ→JAPAN)なる平和の楽園に辿りつく処から始まる。ナパージュが楽園なのは「(他の種の)カエルを信じろ」 「(他の種の)カエルと争うな」 「(そのために)争う為の力を持つな」という、犯す事が出来ない三つの教義(三戒)がここを支配しているためとされていた。その三戒を信望するリーダーがデイブレイク(日の出→朝日新聞)と云われるカエルで、デイブレイクは他のカエルが攻めてきても悪いのは自分の方だと謝り続け、襲われても決して争わないならケンカにならない、よって武器も必要ないと説く。デイブレイクは敢えてそこだけを切り取ってみれば、守備一貫するかの如き平和的かつ敗北主義的な詭弁を弄してナパージュのツチガエル達を束ねている。
そんな折、ウシガエル(中国)の大群がナパージュに浸入を始める。対してナパージュ国を憂うプロメテウス(→安部首相)ハンドレッド(→百田)らは、同盟であるスチームボートというワシ(禿頭ワシが米国のシンボル→米国)に助力を請い、ウシガエルを追い払おうと努力する。この動きにデイブレイクを中心とする勢力が反対するあたりは、集団的自衛権の限定的行使を決めた先の安全保障法案を、”戦争法”などと言いたてて反対する我がサヨクを模していて実に面白い展開である。こうして議論だけが錯綜して徒に時が経過するうちに、ウシガエルは次々とナパージュに侵入し、ツチガエルに対して残虐に振舞い始めるのだが果たしてその後はどうなるか?
「永遠の(ゼロ)」で見られたような深遠かつ迂遠な筋立ても良いが、今回カエルに託して我が国が置かれている危機をより直裁に説明した本書は率直で気分が良い。何度もこのブログでアップした様に、祖父の代よりもまだ前の時代の我が国の間違い( 私はわが国だけが間違いを犯したなどと思っていないが・・・ )を後生いつまで大事に引き継ぎ、反省や謝罪を近隣諸国にせよと迫る勢力など私は真っ平ごめんである。また第二次大戦直後とまるで情勢が変っているのに、憲法一つ改正できないのもおかしな話である。評論家の桜井よし子氏が「 軍事力の究極の目的は戦争の抑止にある 」「 核兵器は戦争回避の手段である 」と言っている通り、行き過ぎた平和主義はただ徒らに紛争や戦争を引き起こす元になるのであろう事をこの本は示唆してくれる。本書の一読を是非お勧めしたい。
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