« 飛鳥Ⅱ2015-16南極南米ワールドクルーズ終盤 | トップページ | 日付変更線通過 »

2016年3月12日 (土)

カタフリ

160311_083816
カタフリ場

どの業界でもそうである様に、船の世界でも船乗り達が使う独特の用語がある。船の前部を「オモテ」後部を「トモ」と呼ぶのは古来から言い習わされた用語だし、そのほか陸上では使わない様々な言い回しが船内では使われる。例えば物を落ろすとか処分する際は「レッコする」と言って、「このごみをレッコして」などと使うが、その語源は錨を降ろす際に「レット・ゴー、アンカー」(英語的にはレット・アンカー・ゴーが正しいのだろうが)という如く、何かを船外に繰り出す専門用語から来ている。そのほか港に着いて上陸する際のイッチョウラの服装を「ゴーショー(go shore)着」と言ったり、apprentice(見習い士官)が語源となって実習船員を「アプさん」と呼んだりと独特の用語が行き交うのである。


そんな言葉の一つに「カタフリ」と言うのがあって、大海原で他に慰めがない船乗り達が、これまで経験した事を「あーでもない、こーでもない」と長々と語り合う事を言うのである。このワールドクルーズも最終の行程に入って、乗客同士でもこの航海の様々な場面や、乗り合わせた人々に関する情報でカタフリに忙しくなって来た。つい3ヶ月前まではまったく接点のなかった見知らぬ同士も、同じ船に乗リあわせて共に旅し経験を共有すると最後は親密になるものである。2011年のワールドクルーズで乗り合わせた人達とは、今でも定期的に飲み会を開いているように、今回の100日のクルーズで仲良くなった船友とは下船後もお付き合いが続く事であろう。そんな同じ波長の友人たち同士が集まって、船内あちこちでカタフリの輪が華やかだ。 


「怒られた」とか「私もにらまれた」とあちこちで評判になっていて、他人の行動にはやたら厳しい老婆が連れにはごろにゃん声を出しているとか、杖をついてよぼよぼと歩く老人が、カーニバルに行くバス乗り場まで他人を押しのけてダッシュしていたなどと、彼らの日頃の行動を知っている人々には「見た見た」と腹を抱えて笑う情報が船内を飛び交っている。まことに人の口に戸は立てられないものである。考えてみれば世界一周を共にした460名の乗客数といったら、学校なら1学年か2学年の生徒にあたる数字で、それがたかだか長さ200米、幅30米の世界で100日間、生活のかなりの部分を共有したのである。愉快だった事や不快だった事、それぞれの乗客がそれぞれの場面で経験した事や感じた事がカタフリの中で共振し、それが最後の太平洋横断の無聊を補って余りある飛鳥Ⅱの船内である。

« 飛鳥Ⅱ2015-16南極南米ワールドクルーズ終盤 | トップページ | 日付変更線通過 »

船・船旅」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 飛鳥Ⅱ2015-16南極南米ワールドクルーズ終盤 | トップページ | 日付変更線通過 »

2018年12月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ