南米での中国のプレゼンス
20年ぶりにアルゼンティンのブエノスアイレスに来た。前回来た時は、現地の荷主と長期契約の締結サインのため、NYで乗り換えて一人で日本から飛行機に乗って来たが、その時ホテルの窓から見たラプラタ川の泥色をした水がひどく印象的だった。その泥色の川を通って20年後に飛鳥Ⅱでブエノスアイレスを再訪するとは考えもしなかった事である。今回、飛鳥Ⅱが停泊した岸壁は、町に程近いガントリークレーンや港湾機器に囲まれたコンテナターミナルの一画で、我々のキャビンからは積荷を待っていたり荷繰りされる多くのコンテナの山と、その間を縫って作業する各種の重機械の様子が間近に見える。
それにしても窓を閉め切っても船のキャビンまで作業車の音がやけにうるさく響くと思っていたら、どうやらこれはコンテナーを構内で移動させるストラドルキャリアーという機器から出るエンジン音のようである。あまりにその音がけたたましいのでよく観察して見ると、機械に掲げられた製造業者のプレートには”ZPMC”とあり”上海”と云う2文字の漢字に続いて日本では使わない漢字で綴られた中国のメーカー名がある。ここは南米のアルゼンチンだからお馴染みのIHIとかMITSUBISHI製の機器でなくとも、少なくともヨーロッパのクレーンメーカーLIEBHERRなどが設備を席捲しているのかと思ったら、中国の機械がこんな場所にも進出して騒音をけたたましく奏でていたのであった。
翌日ブエノスアイレスからラプラタ川を下ってウルグアイの首都モンテビデオに入港する時、何隻かの小型作業船が港を出たり入ったりしているのに気付いた。何をする船なのか目を凝らしてみると、その船のデッキ上に置かれた設備や多数のパイプが川の泥色で汚れているのが見える。船名はとみると”航浚(漢字)○(数字)”とあり中国の旗が船尾に翻っているから、どうやらラプラタ川の浚渫を中国の企業が引き受けているらしい。海の様に広いラプラタ川は、上流から土砂の流れ込む量も多いので川の色も土色であるし、大型船が航行する航路もいつも浚渫作業を繰り返さないとすぐに土砂で浅くなるのであろう。国のインフラと云うべき航路維持の浚渫作業をするのがいまや中国船とあって、南米での中国のプレゼンスをここでも感じるのである。
そのほか中南米では鉄道車両の入札にも中国の企業が売り込みを図っているというが、いくら安値で請け負っていたとしても、鉄道はもちろん港湾や航路の維持という一国の基本的インフラを中国人などに任せて良いものだろうか。そういえば中国が中心になって先に創設されたAIIBも、こういうプロジェクトの融資に積極的に絡んでくるのだろうが、かつては日本や欧米の機器で運営されていた現場が中国製にとって代わられるのを見ると、日本人としてはなんとも複雑な気持ちがしてくるものである。それとともに破綻寸前の中国経済はその実態も判らない上、中国人の気質を考えるとその後のメンテナンスなどで「安いから中国製を導入したが、結局彼らに頼んで大失敗だった」と南米の人々がいずれほぞを噛む日が来る様な気がしてならない。
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