南極クルーズ
南米大陸の最南端ホーン岬をかわしてから丸1日半、アイスパイロットを乗せた飛鳥Ⅱは南下を続け、南極大陸から突き出る南極半島の沿岸に到着した。半島とはいえここは正真正銘の大陸の一部だから、我が人生において初めて南極という極地に来たわけである。その昔、作家の北杜夫氏だったであろうか、母親が当時としては時代の先端の船好きで南極に行ったとのエッセイを読んで「ヘェー」と感心したものだが、まさかその地に自分が船で来るとは想像もしなかった。
砕氷艦”しらせ”の元艦長による船内講演などでは「吼える(南緯)60度」と教えられ、どんなに時化る海域かと思ったが、幸い思ったほど揺れる事もなく南極に到着し、極地2日目の今日は南極晴れとなった。本船の周りに聳える岩山はびっしりと厚い雪に覆われ、海面には時々青く光る氷山があるかと思うとクジラやアザラシ、ペンギンが見え隠れし、その光景はまさに本や写真で見る南極そのものである。荒れた海を越えてわざわざ寒い所に行くクルーズはどうも気分が乗らない、などと内心それほど期待もしていなかった南極でも、やはり来てみると感動ものである。
こうして初めて訪れた南極も、キャビンにあるテレビモニターを見ると、周囲に多くの探検クルーズ船がいる事がわかる。数マイルの範囲にハパグロイドの”ハンゼアティック”、シルバーシークルーズの”シルバーエクスプローラー”などの小ぶりな豪華探検クルーズ船、さらにはノルウエイの沿岸急行船フッティルーティンの”フラム”も北極の冬場はここ南極に出稼ぎに来ている。最近は世界のどこに行ってもそれぞれの海域に応じたクルーズ船が見られるが、日本が保有するのは僅か3隻の外洋クルーズ船のみで大きな進展もない。わが国の客船マーケットの細々とした業態とその保守性に、海洋国とは名前ばかりだとクルーズファンの一人として嘆きたくなってきたのだった。
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