皇居ランの思わぬ幸福
都心できわめて便利、警官がそこかしこに配備されているので夜間でも安全、1周するとちょうど5キロと切りが良い皇居周回のコースは、早朝から深夜までつねにランナーで溢れている。以前は神田あたりの銭湯で着替えて走る人もいたが、最近ではコース周辺にロッカーやシャワー設備を備えたジョガー用の店も多く、遠方から走りに来た人にも便利になった。私が陸上競技を始めた1960年代には「欧米ではジョギングと云って、選手でもないのに趣味でゆっくり走る人達が増えてきたんだって」と話題になったものだが、正に隔世の感の皇居周回コースである。
皇居周回を走っていると乾門か半蔵門の辺りでちょっとした人だかりと、多くの警官が配置についている光景に出会う事がある。皇室の方々の皇居への出入りがあるのだが、一団が首都高を利用する際には北側の乾門、赤坂の東宮御所や都内各地を訪問される際はここ半蔵門を通るからランナー達と交錯するのである。そんな場面に行き当たると、よほどタイムを計って先を急ぐ走りをしていなければ、警官か周囲の刑事に「誰がお通りになるのですか」「あと何分ですか?」と聞いて待つ事にしている。警官はこちらに一瞥をくれ、まあ怪しそうでないと見ると「○○宮様です」「あと何分でここを通過します」と親切に教えてくれる。門の脇には見学者用の一角が簡単に仕切られており、そこで皆で手を振っていると、皇室の方々は車のブラインドガラスを下げて我々に手を振って下さるのである。
これまでも皇太子殿下・妃殿下はじめ宮様たちを何度か拝見したが、先日はたまたま天皇皇后両陛下がお通りになると云うので、ジョギングを中断して手を振る事にした。見物の中国人の観光客などもちらほら見られる中、スマホの動画を熱心に操作し動画を撮ろうとする白人の中年男性がいたので「今日はlucky dayだね。天皇皇后両陛下だよ」と英語で話しかけると「知ってます、今回で両陛下の通過を見るのは2回目ですよ」とまことに流暢な日本語が返ってきて、欧米にも皇室マニアがいるのかと驚いたのだった。などとしばしそこで佇むうちにいよいよ車列は近づき、一台の窓がスルスルと下げられると、見慣れた皇后陛下のニコヤカなお顔とその奥で会釈される天皇陛下のお姿を拝見できたのである。
平日こそ車の排気ガスがやや気になるものの、緑近く適度な高低差ありかつ信号一切なしの上、運がよければこうして天皇陛下をお見受けできるとあって、ジョガーにはとっては素晴らしい環境のコースだといつもここを走る度に思うのである。天皇皇后両陛下を拝見できたこの日は、それからの走りにいつの間にか力が入ってしまい「♪起て一系の大君(おおきみ)を、光と永久(とわ)に戴きて、臣民われら皆ともに、御稜威(みいつ)に副わん大使命、往け八紘(はっこう)を宇(いえ)となし四海(しかい)の人を導きて・・・・・・♯」などと愛国行進曲を思わず口ずさんで速度を増している自分に気がつくのである。いや皇居ランは良いものだ。
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