東京時代MAP(大江戸編)
「(江戸の)歴史地図と現代地図を重ねた新発想の地図」と謳われる「東京時代MAP・大江戸編」を買ってみた。「紙に印刷された幕末の地図と、半透明のトレーシングペーパーで印刷された現代地図を重ねて構成」したこのタイムトリップMAPは、江戸時代末期の街と現代の街路を簡単に比較するため古地図をある程度変更したり省略しており、今の東京中心部がかつてどういう地理であったのかが一目で判る様になっている。
これを見ると現在の東京駅は幕末には北町奉行所や松平伯耆守らの屋敷があった事、徳川将軍家の菩提寺である上野の寛永寺は、往時は今の動物園や文化会館、美術館などを含む広大な敷地だった事、千代田区や中央区に所々あるごく狭い横丁は、かつては堀割りや川であり、江戸の町は水辺に満ちていた事などが一目瞭然にわかる。その一方で月島などは当時まだ海の下で、東京は浅瀬に向かって干拓造成されてきた事が実感できるのである。
また江戸市中の飲み水のために関口(文京区)で神田川に堰をつくり水位を高め、水戸藩の上屋敷(現在の小石川後楽園)まで水を導いた神田上水の水路も、この地図ではそれとわかる様に実に簡単明瞭に記載されているのである。こうした地図編纂の大胆さとまとめの巧みさ、なによりトレーシングペーパーを利用したアイデアに感心し、まさに江戸のいにしえを巡る「散策手引き書」としてぴったりの本だと思った。
巻末には「江戸時代歩き」として、花見・月見の名所、目黒・目白・目赤など五色不動やいくつかの「江戸の『粋』」な場所が紹介されていて興味深い。その中には忠臣蔵や桜田門外の変の舞台となった本所松坂町や桜田門周辺が事件の詳細と共に記されていて、これらを読むとかつての江戸の光景が目の前に浮かんでくる様な気持ちになる。こうして江戸の地図を眺めているうち、赤穂浪士が松坂町から浅野内匠頭の菩提寺である泉岳寺に引き上げる道順を、次は私がジョギングで辿ってみようかという気持ちになるから不思議である。
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