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2015年10月20日 (火)

『ドイツ帝国』が世界を破滅させる

20151020

シリアの難民がドイツに押し寄せているとニュースが伝えている。東ドイツの崩壊で安価な労働力を得たドイツがいまEUで一人勝ちしているように、次は中東から来た人々を使ってこの国はより栄えようとしているのだろうか。「『ドイツ帝国』が世界を破滅させる」という刺激的なタイトルの新書が文藝春秋社から出版されて本屋の店頭を飾っているので、欧州の出来事には極めてうとい私でもそこで何が起きているのか知りたくなり、ついこの本を買ってしまった。筆者のエマニュエル・トッド氏は最近わが国でも名前が知られているフランスの歴史・人類学者で、世界の諸民族の家族形態が、各地域の国民性や経済にどう関連するかなど彼の独自の理論が注目されているそうである。


そもそも先のギリシャの国家財政破綻に関する騒動でも明らかな様に、ユーロという単一通貨を使ったEUという仕組みがいつまでもうまく行くと私にはとうてい思えない。国家の成り立ちや民族性の相違はもとより地理的条件も異なる国家同士なら、本来なら外国為替を通じて経済的な不均衡を調整するはずなのに、その手段をEUは持っていないようである。であるならば我が国の地方交付税交付金の様な各種の助成金などがあって、富んだ国からそうでない国への予算措置や財政支援があって然るべきだが、そういう仕組みもここにはないらしい。英国がユーロを採用せずポンドを基軸にしているのはけだし先見の明があったと言うべきではないだろうか。


トッド氏は本書でヨーロッパは「すべての国家がそれぞれのパワーの大きさにかかわらず平等に扱われる中、それらの国家間の力関係を度外視するリベラル民主主義の空間・・・。」を目指したはずだったと云う。しかし現実は「今言ったような創設神話とは似ても似つかぬもの・・」「今あるのは、信じがたいほどの階層序列システム」で「一方には弱小国、そして他方には強国(絶対的強国はドイツ)。弱小国が追い詰められ、自らの民主主義を奪われる一方で、社会を牛耳るべく現れてくる新しいタイプの人間はブリュッセル(ヨーロッパ委員会の所在地)、フランクフルト、ベルリン・・・」で、その結果ドイツ経済がヨーロッパの民主主義を破壊すると警告している。たしかに先のギリシャの混乱を見ると、トッド氏の指摘がいま大変な危機感をともなって現実になった事がわかる。


フランス人であるトッド氏が分析するところに拠ると、直系家族なかんずく長男が重視されるドイツと日本はとてもよく似た社会形態だと云う。そう言えばドイツ人と日本人がスイスのレマン湖で一緒に釣りをしながら「今度は日本とドイツでもっとうまく戦おうぜ、ただし次はイタリア抜きでな」と話すブラックジョークが以前はやったが、本書においても様々な箇所で日本がドイツと良い意味で較べられている。その一方で中国が新しい秩序を作らんとする東アジアにおける危機感について本書ではあまり言及されていないが、大陸の彼方の人達には難民の問題やフォルクスワーゲンの排ガス事件など、目の前でおこる問題に目が奪われてアジアは遠い世界の出来事なのだろうか。しかし文春編集部が本書のあとがきで述べている通り、最近のドイツの動きはアジアでの中国の台頭ともリンクしており、ユーラシア大陸の両側で二つの新しい覇権国家が出来ているという事実は注目すべき事である。

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