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2015年8月 6日 (木)

またエアセクション事故

20150806
エアセクション表示表

8月4日夜、横浜市内の京浜東北線で架線事故があり、列車が駅間で停まるなど35万人もの人たちの帰路の足が奪われたとニュースになっていた。当初から事故のおきた場所は架線が二本平行に張ってあるという事で、まさかエアセクション内における停車による架線短絡(パン・オーバー)ではないだろうなあ?と思っていたところ、その後の報道では予想通り、正にパンオーバーが事故原因だと云う。


電車に乗って運転士のすぐ後ろ、いわゆる「かぶりつき」から前方を見ていると、しばしば「エアセクション」表示が目に入る。エアセクション区間は各変電所からのき電区間の継ぎ目で、数十米に亘り架線がダブルに並行(間隔数十センチ)に張られており、この区間を電車が走り抜ければ問題ないが、もし停車するとパンタグラフが2本の架線を短絡するので、両電線の電位差で火花が散ったり熱が生じて断線事故がおこるのである。よってこの表示がある区間は、電車や電気機関車は停止禁止となる。


最近では2007年にJR東北線・大宮付近で、セクション内に止まった電車による架線事故が起きたが、部外者から見ると運転士はセクションの場所を知っているだろうし、セクションを示す線路際の表示にも注意しているはずなのに、何故このような初歩的な事故がおきるのか不思議なところである。今回はデジタル式のATC(列車自動制御装置)が設置されており、先行電車に接近した当該運転士は運転台の表示に従ってセクション外で停車するべきところ、これに従わず手動で200米手前のエアセクション内に停車してしまったと報道されている。


一方で横浜のこのATC区間では、他線区にはある電柱の「セクション」表示がなかったとされている。200米も手前に一旦停止したのが妥当だったのか当夜の状況はよく判らないが、ラッシュアワーの様な稠密な運転間隔でなければ、運転士は安全への余裕をもって規定の位置より手前に停車したくなるのは人間心理としては理解できる。今回はもし「ここで止まるな」との従来のアナログ表示が電柱にあれば防げえた事故と思われ、システムとしてのデジタルATC化は万全であっても、勘違いなど想定外の事が起こった際に、悪い方向に事態が進まない仕組みを造る事が必要であろう。


先の東北線での事故を踏まえ、2007年にJR東日本は「運転士に注意を喚起する表示板をエアセクション区域の全ての電柱に設置する」「エアセクション内停止に関して運転士への音声アラームを導入する」「架線が破断しないよう剛体化を促進する」との対策を発表したが、一番簡単で真っ先に行えるはずの「表示板の設置」はこのATC区間において為されなかった。


当該運転士がこの区間をどれだけ周知していたのか知る由もないが、他の線区ではふつうに表示されているものがデジタルATC化ゆえに必要ないとされ、その結果事故を誘発したのなら、今回は正にシステム化に伴う陥穽にはまった事例といえる。世の中には完全なシステムなどなく、人間とのインターフェイスをいかに構築するのか、我々の周囲のデジタルシステムは、「人間は間違うもの」という前提で開発してほしいものだ。

セクションに関する過去の記事

万世橋マーチエキュートN3331とセクション外停止位置(2014年3月10日)
定通確認(2010年1月20日)
鉄道標識(2)停車禁止(2008年4月3日)

20140310_2
セクション外停止位置表

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鉄道」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。「人間は間違うもの」。まさにその通りで、仕事柄いつもそれを念頭においております。あとは間違ったあとのフォローアップを速やかにできる手順の作成と更新に日々悩んでおります。

あきらさん、

いつもコメントありがとうございます。

もし本当にデジタルATCを装備したからセクション表示不要と当局が考えていたら、「人間は間違うもの」「機械より感覚で運転するかも」という大事なポイントが欠けていたのかもしれませんね。

飛行機でもこの点でボーイングとエアバスの思想が違うと聞いた事があります。自動化にはしばしば穴がある、という事を関係者が認識する必要があるのではないでしょうか。

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