« ブラタモリ(2)東京駅地下 | トップページ | 上野東京ライン »

2015年8月 1日 (土)

岩波新書「右傾化する日本政治」

20150801

以前、香山リカの「リベラルじゃだめですか?」の読後感をアップした通り、私でも”WILL”や”正論”など右寄りの本や雑誌ばかりをいつも読むのは如何なものか?と自問自答する事がある。たまにはリベラル派の代表、岩波書店の本を手にして「サヨク」とか「リベラル」と云われる人達の主張はいったい何なのか、それが考慮に値するものなのか知りたくなるのである。という事で久しぶりに岩波新書の新刊で政治学者の中野晃一著「右傾化する日本政治」を買ってみる事にした。私自身は安部政権による日本の現状については、我が国が普通の国になる正常な過程だと捉えているので、著者が冒頭で「本書は、日本政治が大きく右傾化しつつあるという立場をとる」と批判するなら、その根拠を聞きたいものだと思ったのだった。


本書では、まず中曽根、橋本、小泉ら歴代の「新自由主義」ないし「国家主義」的ないわゆる右派と呼ばれる政権が、どの様な経緯で誕生したのかについて縷々説明がなされる。そう言えば当時はそんなニュースもあったかとさまざま思いだすが、一方でそれらの右派政権に対峙しつつ一定の勢力を維持したサヨク政党は冷戦構造体制下にあってどの様な存在意義があったのか、また世の中が成熟するに従ってこれらサヨクがなぜ劣勢に陥ったかについて知りたいところなのに、突っ込んだ考察がこの本ではあまりみられない。政治史的概論だけでなく冷戦が終わり米国が世界の警察の役割を担えなくなった事、なかんずく中国の軍事的台頭がアジアの安全保障に深刻な危機をもたらしている現状、さらに「格差」問題は我が国の急速な老齢化に深く関連している構造などに重点をおいてこの問題を論じてもらえれば、私ももう少し筆者の説に共感できたかもしれない。


さて、本書の文章はよく整理され判り易く読み応えはあるのだが、一方で「これって時代的背景は違うけど、その昔大学で聞いたマル経の先生の講義とそっくり同じ論調じゃない?」というのが読後まず浮かんだ感想だった。右傾化は「政治主導」の結果とか、多国籍国際企業がもっぱら悪者だ、はたまた格差が拡大しているとの論旨は、40数年前のマルキスト先生たちとそっくり同じような言いまわしで、筆者の属する大学の先生の世界では未だにマルクス主義の亡霊が闊歩しているかと思わずのけぞってしまった。せっかく買った岩波新書であるからITの進歩や社会の成熟、人口動態やコンプライアンス意識・社会のマニュアル化、特に中国の動向なども視野に入れ、「おーっと!」と瞠目されるユニークな分析が披露されるかと期待して本を取ったのに、やはりサヨクのドグマはいつの時代もあまり変わらぬ様である。


政党の離合集散を通じて社会理念がどう実現されようとしたか、または失敗したのかの部分においては筆者の考察は良くわかり、政治とはそういうものかと再認識させられたが、結局のところ共産党や社民党が云うがごとく、世界情勢を完全に無視しての安倍政権批判には最後まで寄り添えなかったのである。この本の最後には小選挙区制の廃止や新自由主義との訣別、その他「民主化」諸活動の「連帯」を通じ、今一度健全なリベラルの勢力を取り戻したいと筆者の願望が美しく語られる。しかし「このまま・・・新右派連合の暴走がつづくようになると、右傾化のステージは、対米追随路線で抑えきれないところまで復古主義的な国家主義的的情念が噴出 」 し世論が転換するという筆者の期待は、現在の中国の軍国化、東アジアの情勢を考えると実現することはないだろうと私には思え、やはりサヨク陣営の言う事は「負け犬の遠吠え」に近いかとちょっと安心したのであった。

« ブラタモリ(2)東京駅地下 | トップページ | 上野東京ライン »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« ブラタモリ(2)東京駅地下 | トップページ | 上野東京ライン »

2019年6月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
無料ブログはココログ