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2015年7月23日 (木)

自動車船船内見学 M/V APHRODITE LEADER

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船乗りは陸上勤務をしていると潮気が恋しくなるとよく云う。船乗りではないが、(夏休みで毎日家にいるのも結構よいものだと前のブログで書いたものの )私にもジョギングや近所に行く以外ちょっとは外出、できれば夏なので海がみたいなどと云う気持ちが湧いてくる。そんな折、日本船主協会主催「海でつながるイベント」で、共催する日本郵船が運航する『 自動車船船内見学in TOKYO 』の見学チケットを船好きの妻がゲットしたので、先日は会場である晴海ふ頭の客船ターミナルへ二人で行ってきた。


商売がら、船にはしばしば訪船するから今さら他社の商船に行くのもちょっと億劫な気もしたが、普段はバラ積み船ばかりなので、たまには自動車船を見学してみるかと妻に付いて東京港へ向かったわけである。そう云えば自動車船に訪船するのは20数年ぶり、それも前回はアメリカに駐在していた時にたまたま日本人船長の乗った自動車船が寄港したので、みやげもの欲しさに船に行ったくらいだから、最新の巨大な自動車船の内部などは未知の分野である。


晴海の客船ターミナルに横付けされた”APHRODITE LEADER”号は2007年の建造、全長が200米、6000台も積める大型の自動車船でクルーはインド人や東南アジア人である。巨大なガレージにエンジンとブリッジがついた様なその異様なフォルムは、普段この岸壁で見慣れている7万トンクラスの客船より一層威圧感があるようだ。受付を終え車両が積みおろしされるランプウエイを通って船内に入ると、そこに広がる車両甲板は横須賀で見学した米国空母の艦載機格納デッキを彷彿とさせる広さである。


今回の見学で興味深かったのは、乗船した下層デッキからブリッジ直下の高層デッキまで往復するのを、手配されたクルマで移動できた事である。名人芸的なドライバーたちによる車両の積みおろしをニュース映画などで見るが、今回はその実際に僅かでも触れる事ができ、ドライバー視点から船内を見るという貴重な体験をさせてもらった。さっそく運転するドライバーに普段の荷役では何人のギャングを何組用意するのか、積み込みにどの位の時間がかかるのか、積み込んだ後はクルマで戻って次のクルマの荷役にかかるのかなど僅かな時間に質問攻めにしてしまった。


ブリッジでは本船のオフィサーの他、郵船から応援の船乗りたちが解説に忙しい。それによると自動車船は風袋が大きい割りに重さがないので、風の影響を受ける上に舵が効きにくくて操船が難しいとの事である。たしかに巨大ガレージの様な本船の排水量は2万トンで、同じくらいの長さの一般貨物船の半分ほどしかないから軽いわけである。クルーズ船の飛鳥Ⅱでさえ3万トンの排水量があるから、自動車船の中はガランドウの様なものだと云えよう。タイ人のチーフ・オフィサーと話すと各港では揚げ残しの車両があるかなどに神経を使う事とのコメントで、自動車船にもまた特有の仕事があるものだと気づかされた。その他、日本の輸出産業の最前線で働く自動車船は、車両を効率良く積むためにデッキの高さを変えられるなど様々な工夫がこらされているのに感心し、夏休みの社会科見学をした気分で下船したのだった。

クルマで船内を走るのは貴重な体験
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コメント

7月20日横浜、大桟橋での同じ船の見学会に行きました。自動車船は初めてで、その大きさと様々な工夫には大変興奮しました。
効率・品質を極め、低コストで輸送できることが、日本の自動車の輸出競争力の強さの一因となっているのが良く分かりました。
このような船に磨き上げてきた方々に敬服します。

(プードルの)健ちゃん様

お久しぶりです。コメントありがとうございました。

一見すると何十年たってもあまり代わり映えしない船でも、少しずつ改良が加えられ時代の要請に応えて競争力を高めている事に今回あらためて驚きました。

海運だけでなく様々な分野でこうした改良があって日本の輸出入が成り立っているのだと思います。

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