戦後リベラルの終焉
当ブログでもアップした 「 リベラルじゃダメですか?」 の著者、香山リカ氏が先ごろ放送中に喋った事について番組の関係者から批判され、その言いわけの内容がネット上で大炎上している。まさに退潮するリベラル(=サヨク)を象徴する様な出来事だが、おりしも「戦後リベラルの終焉」という興味深いタイトルの新刊がPHP新書から出たので早速買ってみる事にした。著者の池田信夫氏は、東大・経済学部の学生時代に社会科学研究会(社研)の部長だったとあるから、まさに正真正銘の元サヨクである。かつてのサヨクが、なぜリベラルがいま受けいれられなくなったのか、「敗者の戦後史」について著書自身の経験も踏まえ、多様な切り口から考察を加えているのが面白い。
著者の定義する「戦後リベラル」とは「日本的なサヨク」で、「反戦・平和を至上目的とし、戦争について考えないことが平和を守ること」という錯覚を抱いた人達だと云う。彼らはその空想的アジェンダに固執するあまり「反原発」やら「辺野古移設反対」などの固定観念にとらわれ、結局は何も時代を変える事ができなかったとある。それに対する自民党は特定のアジェンダやイデオロギーを持たず、そのレーゾンデートルはまさに日本の各地の地元代表でありつづけた事だと著者は分析する。人々は「平和憲法」だとか「秘密保護法」などという理念より、イデオロギーに立脚せず結局のところ『地に足がついた』政策を期待してきたと云う事なのだろう。
リベラル敗北の根底には彼らの原点である「悔恨共同体」的な思考方法(戦争を止めるどころか煽ってしまった悔恨)が、もはや時代の趨勢に合わなくなり風化してしまった事にあると著者は指摘している。先の朝日新聞の問題は、正にその悔恨共同体的思考が自爆してしまった典型なのであろう。私自身考えても、なぜ曽祖父の時代に日本が近隣諸国に行った事を、戦後70年も経って我々以下の世代が虚心坦懐に反省しなければならないのか今一つピンと来ない。そのリベラルの教条主義からは、「反原発」しかり「辺野古」でも「憲法改正」においても、反対のための反対ばかりで未来に向けて実現可能な対案がみえてこない。空想的理念に埋没し現実を見据えた対案が出せない彼らが、世の中から消えていくのは時代の流れだと「戦後リベラルの終焉」を読んであらためて意を強くした。
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