球春
球春である。球春と云えばセンバツ甲子園やプロ野球となるが、私にとっては毎年四月の第2週より始まる東京六大学野球リーグ観戦である。という事で寒さも残る昨日は、開幕カードの明治-東大戦と慶応-法政戦に神宮球場に足を運んだ。通いなれた球場の内野席に腰をおろすと、いつもレフト側外野席の向こうにあった国立競技場が建て替えでなくなり、上空の一角がポカッーと気の抜けたような空間になっている。代わってレフトの向こうには新宿富久町の新しい高層ビルが見えるし、ネット裏2階席の鉄傘もいつの間にか白い樹脂製になっていて、ここ神宮球場にも時代の波が押し寄せている事を感じる。ただ相当な費用を費やしたであろうネット裏の真新しい白い屋根を見ると、2020年以降に神宮球場を建て替えるという東京都の発表は、本当に球場側の合意を得ているのであろうかと心配になるのである。
昨日たまたま座った席は、後ろに40歳台と思われる慶応野球部のOBが大勢陣取っての応援で、試合に出ている選手の内輪話や最近の野球部の事など様々な解説がよく聞こえて来る。耳は後ろの声にダンボのまま眼を前に転じると、丁寧にスコアブックをつける”通”らしき老人、その前には神宮で53回無失点・5試合連続完封など数々の大記録を達成した慶応の元エース・志村亨氏がさりげなく座っている。こういう玄人っぽい雰囲気があたりに漂っているのを感じるのも、神宮球場で六大学野球を観戦する楽しみの一つである。かと思うと選手のガールフレンドらしい若い女性が祈る様に試合の展開をみつめていたり、下級生の部員が学生服姿できびきびと用務をこなしたりと、いつの時代でも変わらぬ光景と両校の応援合戦がわが心を故郷にいるかの如く落ち着かせてくれる。
今年から慶応の監督に就任した大久保氏は同じ桐蔭学園出身の志村投手の少し後輩にあたるが、ノンプロの日石やプロ野球を経て、ふたたびKEIOのユニフォームで神宮に出るのは何十年ぶりか。そういえば最近は第一試合開始が午前11時なので暗くなってからの試合は少ないのに、この日は雨の影響で昔の様に第一試合の開始が午後一時となり、二試合目の慶-法戦は暮れなずむ中で行われた。薄暮にかすむ球場で指揮をとるなつかしい大久保監督の姿を見ていると、何やらこちらも若き日の80年代にタイムスリップしたような不思議な気がするのである。慶-法戦といえば昭和46年(1971年)春の慶応・池田選手(習志野)の劇的なホームランや平成10年(1998年)の法政・根鈴選手(新宿山吹)の代打逆転サヨナラホームランなど幾多の名場面が脳裏に蘇ってくるが、母校慶応の応援もさる事ながら、孫に近い両校選手たちの一途なプレーぶりに敵味方なく拍手を送りたくなるものである。
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