沖縄の不都合な真実
沖縄県の翁長知事が突如、国の辺野古基地建設に対して作業中止命令を出したとニュースになっている。私には知事の判断がどう考えても理解不能で、沖縄の基地問題はまるで魑魅魍魎の世界に思えてくる。という事で最近出版された新潮新書「沖縄の不都合な真実」を読んでみる事にした。大久保潤氏(日経新聞)と篠原章氏(評論家)によって書かれた本書は、特定のイデオロギーから書かれていない様で安心して読めるが、二人の著者によって数々指摘された沖縄の実態を読みすすめるうち、日頃大メディアが伝えるものとはまったく違う面が沖縄問題にあるのに驚いた。
まず沖縄には日米あわせ我が国にある軍事基地のうち17%が集中しているそうで、これは島の小さい面積に比して大きな負担であるのがわかる。歴史的、地政学的に我が国は沖縄に軍事面で依存しており、この割合を減らす事がわが国に課せられた課題であるのは多くの国民が理解できるものである。ところが本書によると事態はそう簡単ではないようだ。軍事基地が多くある事、そして基地の問題でもめればもめる程、国の税金や補助金が増やされ、沖縄は本土からの金に依存する体制にどっぷり浸かるのだと云う。
その本質は 「 基地政策をめぐる対立 」 などではなく、基地反対派が政府と対峙し、それを利用して沖縄の保守が政府から金を引き出すという 「 阿吽の分業体制 」 が築かれている事だと著者は喝破する。本書では巨額の税金が沖縄につぎ込まれている事が示されるが、こうしてみると数年前に物議をかもした米国務省日本部長ケビン・メア氏の 「 沖縄はゆすりの名人」 との発言は、けだし正鵠を得たものだった事が改めて思いおこされる。「 基地がなくなれば沖縄の存在意義もなくなる 」 と引用された基地反対派の労組発言こそ、どうやら沖縄問題の核心を突いているようである。
なかんずく基地反対運動を担う中核が公務員や教員という沖縄の支配層であり、それを支えるのが地元メディアという構図で、本当の弱者である貧困層や若者・婦女子の問題はおきざりにされ、格差がますます広がるのが現状だそうだ。支配階級の最大の主張は 「 日本の沖縄に対する構造的差別 」であって、それをベースに基地反対運動は 「 資金獲得のための政治的用具 」 となり、「 政府と基地反対派が共犯関係 」になって沖縄を補助金漬けにしているとの事。なるほどこうしてみると本来は保守のはずだった翁長知事が、なぜ今になってイチャモンの様な中止命令を政府につきつけるのか、その無理筋の真相がかなり理解できるような気がするのである
しかし、それゆえに沖縄の真の自立は阻げられており、事態打開の為には軍事基地を減らす努力とともに、本土からの振興策を減らす事が大切であると本書は纏めている。アメリカの海兵隊は普天間から移動しなくとも痛くも痒くもないとか、普天間基地に隣接する学校は基地の後に出来た事、多くの辺野古の人々が海兵隊の基地移設に賛成であるなどと聞くにつけ 「 一粒で三度も四度もおいしい普天間カード」「 振興策をもらい続けるためには基地反対といいつづけなくちゃ 」 と革新と保守が一体となって本土の金をあてにする本音が透けて見え、沖縄を支援する気持ちが大きく萎えるのである。「 沖縄の不都合な真実 」 は一読の価値ある新書であった。
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