「中国外交の大失敗」PHP新書 中西輝政著
月刊誌などでその名前をよく見る京都大学名誉教授・中西輝政氏による新刊 「中国外交の大失敗」 (PHP新書)が大変面白かった。日々のニュースをただ眺めているだけでは判らない日中間の真相、報道される出来事の裏にある本当の意味を解き明かし、「日本の保守派よ、いまこそ戦略的になれ」(帯のサブ・タイトル)と説くこの本は、コンパクトな新書ながら内容充実の時宜を得た著であろう。
思えば、かの「日中国交『正常化』」以降、中国が日本のあらゆる層に働きかけて醸成した「日中友好」のムードとは一体何であったのか。それに対して著しい反日の姿勢を貫く最近の中国はどう連続しているのか、若い頃より一貫して中国共産党の存在や活動に懐疑的であった私には、中西氏の解説が「ははーん、そうだったのだな」とストっと腑に落ちるのである。
この本によると日中国交回復の流れの中で隠されてきた中国共産党の覇権的な本質を、経済的大国になった今、いささか乱暴に体現しようとしているのが習近平だそうだ。結局のところ彼の拙速で雑な政権運営は日米の他、アジア各国に敵をつくり、日中関係で云えばその第一ラウンドは文句なく安倍首相の「勝ち」に終わった事を、昨年11月の日中合意文書を例に中西氏は教えてくれる。
さすがに東アジアの「友愛」を説くおバカな元首相などは消えていったものの、いまだに孫崎亨や丹羽宇一朗らの親中派は利敵行為を繰り返していると中西氏は指摘する。そういえば丹羽氏が元社長だった伊藤忠商事が中国へ大変な投資をするらしいが、公式発表以上に実態経済が悪いとされる中国で伊藤忠が本当に大丈夫なのか今後を注目したいところである。
今だに国連至上主義や 「国家の止揚こそ21世紀の流れ」 とサヨクやリベラルの人達は軽薄かつユートピア的な発想に埋没するなか、この本で中西氏は国家の再浮上こそが21世紀の潮流であると予測している。その際、日本の生きる道はアメリカ側にたつ事を確認するとともに、憲法9条を改正して普通の国になるべしとの事で、この提言に私は諸手を挙げて賛成したい。
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