飛鳥Ⅱ九州島めぐり・長崎花火クルーズ(3)五島福江島の灯台と教会
九州各地には出張や観光で幾度となく来た事があったが、天草諸島や五島列島を訪問する機会はなく、いつの日か来島したいものだとひそかに思っていた。で、夏休みに九州島めぐりの飛鳥Ⅱに乗船したのも、このクルーズが五島列島の福江に寄港するのがその理由の一つであった。五島と云えば隠れキリシタンとなるが、殊に宗教心のひたすら薄い私でも、遠藤周作の「沈黙」はかつて2度ほど読んだ事がある。若い日に感銘を受けた小説の舞台がこの地である事から、五島と聞くと今でも何やら特別な響きを胸に感じるのである。
飛鳥Ⅱが接岸できる大きな桟橋がない福江港には本船のテンダーボートで上陸である。港から30キロあまり離れた島の反対側にある大瀬崎灯台を見学し、かつ妻が希望する4箇所の教会を半日で廻るにはレンタカーが必要、という事で港に程近いレンタカー屋で予約していた車をピックアップする。島の道はほとんどが50キロ制限で集落に入ると40キロとなり、レンタカー屋の話ではスピード取り締まりは結構厳しいとの事だから、カーナビに従いまずゆったりと大瀬崎を目指す。すれ違う車も少ない快適なドライブを小一時間続けると断崖絶壁の向こう、島の西端に立つ大瀬崎灯台を望む駐車場につく。かつて遣唐使がわが国の見納めと振り返ったであろう岬の灯台まで、この先の駐車場から1.2キロの山道を歩かねばならない。
「地元の人でも滅多に灯台のある先端までは歩かないよ、まして夏は暑くて行かない」「時々、修学旅行の生徒が駐車場から灯台まで歩かされてるけど、あそこまで行くと疲れてしまい、その晩は皆おとなしく寝るから」と後から港の売店のおばちゃんに聞いた通り、30度を越す蒸し暑い日に灯台への往復は汗だくの苦行である。しかし7世紀には遣唐使の為に防人が夜間にかがり火をともし、明治9年に近代的な灯台が建てられた岬から一望する東シナ海は、わざわざ山道を難業して来る価値がある絶景であった。因みにかつてここには日露戦争の際、ロシアのバルチック艦隊が対馬海峡に向かうのを最初に発見した信濃丸の「敵艦見ユ」の無線を中継した無線局もあったそうである。
さて帰船の時間も心配になるという事で、「日本最古のルルド」があると云う井持浦教会に急ぐ。ルルドとはフランスの地名で、その地の洞窟に聖母マリアが出現し数々の奇跡を起こしたとされており、世界でその洞窟を模したものをルルドと云うそうだ。次にやや離れて島の北側にある白亜の水の浦教会に立ち寄ったが、ここは木造教会としては全国でも最大級だそうである。続いて赤レンガの重厚な楠原教会を訪れるものの、幼児洗礼を受けた妻と違って私はこのあたりで 「 どれも教会の中はそんなに変わらないから車で待ってるよ 」 と云う心持ちになっていく。最後に五島のシンボリックな存在である堂崎教会へカーナビが示すまま道を取ると、地元の人も稀にしか通らないような狭い山道が延々と10キロも続いて、私は教会よりもむしろカントリードライブが印象に残ったと云う俗人であった。
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