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2014年6月11日 (水)

働くタグボートの世界:神戸”布引丸”

”さんふらわあ・ごーるど”を神戸・六甲ターミナルで早朝下船した日は、神戸港で念願のタグボート乗船である。永い間、海運界に身をおき、またクルーズ船に乗船した際にはタグボートの活躍を目にしながら、実際にその船内ではどういう作業が行われるのか、タグから見た本船はどんなものなのか体験した事がなかった。昨年10月初めに苫小牧で停泊中のタグボート船内を見学する機会を得て大いに勉強になったのだが、何といっても動いているタグを是非見みたいものだと思いが強まった。


無理を承知でタグボート会社に働く知人に乗船をお願いしたら、ありがたい事に我々夫婦の申し入れを受け入れてくれ、”布引丸”という最新鋭のタグの実際の作業見学を許可された。小型船舶1級の操船免状を持つ妻は、夢がかなったとばかり乗船前から興奮している。


見学は”布引丸”に乗って、客船ターミナルにほど近い基地から、ポートアイランドのコンテナバースで荷役を終えた一万トンクラスのコンテナ船を引き出し、基地に帰投するまで一行程である。2012年に竣工した”布引丸”は、長さ34米・208総トン・3600馬力で、当日は基地を出て港内を行きかう他船や神戸空港を離発着する飛行機などを眺めつつ、コンテナバースで荷役をするコンテナ船へ向かった。


コンテナ船から10米ほど離れた沖で待機していると、ほどなく荷役も終わり岸壁にはパイロットを乗せた車が来て、係船索をはずすラインズマン達が現れるといよいよ出港作業の開始となる。コンテナ船のブリッジに上がったパイロットと無線の感度を確認する間もなく、パイロットから布引丸に「頭をつけて下さい」と指示が飛び、タグボートのタイヤ張りの船首がコンテナ船に接舷する。コンテナ船のデッキからするすると細いロープが垂らされ、その端に布引丸の係船索(ホーサー)の先端が結ばれると、タグボートとコンテナ船は一本のロープをとおして息を通わせた一つの有機体になった様な感じがする。
20140611

コンテナ船のスクリューが海面を掻き乱し始め「布引丸、デッドスローの2分の1で引いてください」などと船内のモニタースピーカーにパイロットの声が響き、布引丸の船長はトーイングウインチを操作しながらホーサーのくり出す長さとその張力を調整している。タグ前面のガラス窓を通して、ホーサーが怖いほどぴいんと張り、タグの牽引力が大きなコンテナ船に伝わっていくのが体感できる。布引丸はただ真後ろに引くのでなく、強力な牽引力を効率良くコンテナ船に伝わるかの様に、ややジグザグとバックしていくのがプロの技らしい。
20140611_2

入船で接岸していたコンテナ船を引き出し回転させるまでの約10分間、布引丸の船内でも4人のクルーが息を合わせて作業を進めるうち、ほどなくコンテナ船の船首が港外に向かう針路に定められた。両船を繋ぐホーサーがはずされ、今度はコンテナ船の船首に廻って辺りを警戒しつつ併走する布引丸から「周囲には特に危険な船は見当たりません」と報告をパイロットに送ると本日の業務もお開きとなる。今日はコンテナ船をいとも簡単に引き出したかに見えたが、プロの腕をしても風の強い日などな大変な作業に違いない。
20140611_3

布引丸は基地に到着する直前でも6~8ノットほどの速度で岸壁に直角に近づく。あわや岸に激突かという瞬間に急減速と回頭で岸壁にピタっと横づけさせる船長の腕とゼットプロペラ推進による布引丸の敏捷な性能にひたすら驚いたのだった。


余談:案内をして頂いた担当部長の方に「他にタグの見学者はしばしばあるのですか?」と聞いた処「いや新入社員の研修くらいですかね。」とのご返事。どうも我々の興味は人とはちょっと違うのかもしれないと苦笑いながらも貴重な体験であった。担当の部長殿、布引丸船長に感謝する次第である。

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船・船旅」カテゴリの記事

コメント

もう一度 送信をトライします。

タグボートのレポート 興味深く読みました。
私も昔は 海軍兵学校を志願した軍国少年だったので 終戦まで焼津にあった海軍海洋道場へ志願して入隊しました。旧制中学校2年の夏です。
帝国海軍の管理下にある施設で 軍艦の中の水兵さんと同じ生活を2週間体験しました。
ハンモックに寝たり 手旗信号 モールス信号 カッター・通船(和船の事)そう艇 結索術等を教えられ 一人前の水兵さんになったつもりでした。今でも時々思い出します。
当時は岩田豊雄の「海軍」や清閑寺健の「江田島」が愛読書でした。
景色として タグボートは見掛けます。押される経験をしたのは 飛鳥(1)に乗った時が最初で最後の経験です。
テクニックは水先案内より 難しい仕事なのでしょうね。
奥様は船舶操縦の資格もお持ちとか・・・ 共通のご趣味があって お二人でお楽しみは 良いですね!羨ましいです。
小生 この年になっては 今さら 人生のやり直しも出来ず 悶々としながら余生を送るのがオチだと想って居ます。
また お会いしましょう!
   

岩崎様

コメントありがとうございます。また拙いこのブログを時々閲覧して下さっているとの事で感謝しております。

日本は貿易立国で四面海に囲まれてているものの、あまりにも貿易や海防についての情報が一般的に普及していません。

同じ島国のイギリスでは、スーパーの雑誌売り場で海軍や海運の雑誌が堂々と売られているのを見るにつけ、彼我の差を感じ、もっと我々が努力しなければと感じております。

時々コメントをいただけたら嬉しいです。またお声がけください。

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