フォーレンダムの休日
新しい那覇港客船ターミナルのフォーレンダム
先週の日曜日(6日)にホーランド・アメリカライン(HAL)のクルーズ船”フォーレンダム”号(6万1千トン)に横浜から乗船して7日経過した。旅行会社HISの日本人向けチャータークルーズで、これまで石垣・基隆(台湾)・那覇と回り、後は清水に寄って横浜に月曜に帰港するだけとなった。初日と2日目は強風で船はやや揺れたものの、それ以外は天気に恵まれて春の船旅をゆったりと楽しんでいる。HAL社独自のブッキングによるのか一部に西欧人も乗船しているが、今回のチャータークルーズの乗客は1200名を超えるそうで、営業的には成功なのだろう。私自身も例によってこれまでいささか飲み過ぎのきらいはあるものの、まあクルーズ中は良しとするか、という事で洋上生活を快適に過ごしているのである。
さてHALといえば2010年イギリス周遊の”ウェステルダム”号(ビスタクラス8万2千トン)以来の2度目の乗船である。同じクルーズ会社でも船や海域でクルーズの趣きに違いがあるし、何より今回は日本人用のチャーター船という事でどうなるのかと興味をもって横浜から乗船した。まず船そのものからみると本船は構造上やや動線が複雑だと感じた。第3デッキを全通するチーク張りの素晴らしいデッキがありながら、そこはジョギング禁止と表示してあるのにまず面食らう。(もっとも一部の乗客がこれを無視してゆっくり走っていたが特にお咎めもないようだ。)これはすぐ下の2デッキに客室が並ぶので3デッキをジョッグすると騒音が下の階に響くためと思われるが、何とももったいない配置である。2デッキの客室を5デッキに上げてバルコニー付きにし、逆に4.5デッキに集中する公室の一部を下の階にする設計をしていれば3デッキをもっと有効に活用できたはずだと思った。
チーク張りの素晴らしいプロムナードデッキ
船内の公室の配置もさる事ながら、デザイン的には多くの絵画に混ざって、”おや?”と首をかしげる色使いの装飾や奇抜な置物が目をひく。これは”ウエステルダム”号でも感じた事で、HAL社あるいはオランダの伝統なのだろうか。そういえば本船の母港であるロッテルダムは第2次大戦の空襲のあと、奇抜な建築物が数多く建てられているから、ダッチ流のデザインとはこういう色や形なのだろうか。また本船は立ち入り禁止区域とそうでない区域の表示が不明瞭で、EXITとある表示のまま進むとクルー専用区域に迷いこんだり、逆にデッキクルーのみの場所と思われる船首に行けたりとあいまいな表示と複雑な船の構造にしばしとまどう。それでも先年の同じチャータークルーズ、”コスタビクトリア”ではクルーが喫煙場所で乗客と一緒に堂々とタバコを吸っていたが、そのあたりのクルーの対応はきちんとなされており、イタリア船とオランダ船の違いを感じたりもする。
レセプション前の奇抜なカラーのオブジェ
そういえば本船では各港でパイロットが乗船しているのにH旗を出さないのは、オランダ船のポリシーなのだろうか。またリピーター向けに開催された船長同席のパーティではウイルス感染防止で、船長は乗客と握手もしないと云う事になっていた。プレミアム・ダイニングのピナクル・グリルではデザートのベークド・アラスカが防災上の観点からフランベの炎なしで運ばれてくるのもやや興ざめだった。ノロウイルスの脅威や防災の観点から最近はそういう事なのだろうが、アメリカ式の極端な対応は(HAL社は今や米・カーニバルの傘下だし、HALの本社も米・シアトルに移っている)いささかやりすぎではないかと疑問に感じた。現在は”クイーンエリザベス”の船長になったクリストファー・ウェルズがP&Oの”パシフィック・ドーン”船長だった当時、唯一の日本人乗客だった我々に随分気をつかってくれ、長々と相手をしてくれてから僅か5年に過ぎないが最近のクルーズの風潮を改めて憂いたくなる。
さてさすがに日本は新年度4月のクルーズという事で、乗客もサラリーマンやOL同士、子供連れなどが少ないようで、ここは飛鳥やにっぽん丸など日本船かと思うくらい年配者の多いゆったりした船内である。もっとも高齢者の無意識による列の割り込み、ぶつかっても声をかけない老人、あるいは男性のびっくりするほどの大きなくしゃみと女性客のかん高いおしゃべり音など、乗客年齢の高い船でしばしば経験する点もあるものの、全体的には「乗客の織り成す雰囲気」は静かで上品な船内だと感じている。昨年ゴールデンウイークに催行されたコスタ・ビクトリアのチャータークルーズが、ブラジル人や中国人の若いエンターテイメントクルーでいささか騒々しかったのに比べると、やはりHALに即した船内の空気という事で、ほぼ期待通りの穏やかなクルーズをこれまで楽しんでいるのである。
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