「あけぼの」幻の乗車
会社のオジサンたち鉄ヲタ4人で有給休暇をとって、この3月で運行を終了する寝台特急「あけぼの」に乗ろうと切符を買っていた。「あけぼの」は高崎線・上越線・信越本線・羽越本線・奥羽本線を経由して上野から青森まで、延々776キロを12時間半かけて走る24系寝台の夜行特急列車(ブルートレイン)である。今やこの列車以外の寝台特急は「トワイライトエキスプレス」や「カシオペア」の様に観光を目的とした列車か、電車による特急「サンライズ出雲・瀬戸」が運転されるのみで、いわゆる交通機関としてのブルー・トレインは「あけぼの」が最後の定期列車となってしまった。ここは運行をやめる前に、開放式B寝台の4人ブロックを占拠し、宴会で盛り上がりつつ完乗しなければ”鉄っちゃん”の名がすたると、会社ではそれなりに重鎮の4人の意見が一致したのであった。
そういえば、おじさん世代が子供の頃は航空機などは別世界の乗り物、ちょっと思いだしてみれば、九州に行くにも北海道に渡るにも夜行列車のお世話になった時代である。あまたの寝台列車の中にあって秀眉が九州行きブルートレイン20系客車で、夕刻に田町からEF58に牽引されて東京駅の14番線・15番線に回送されてくる「あさかぜ」や「はやぶさ」「さくら」などを、子供心に憧れのまなざしで見入ったのだった。特に食堂車の従業員が入線する際に、一斉にホームに向かってお辞儀をしている姿は印象深い光景だった。そんな一世を風靡したブルートレインが、この3月の「あけぼの」運転廃止で終了するとは、時代の変遷とはいえ寂しいものである。
さて予定された乗車日は先日の大雪の後で、その日の天気予報は「くもりのち雪もあり」である。という事でオジサン4人は今や車内サービスもない「あけぼの」にお酒や弁当の他、予備の非常食やらバレンタインで貰ったチョコを積み込もうと浮き浮きとプランを練る。まるで遠足前の児童の様だが、これはれっきとした大人の遠足である。推進運転の上野駅入線は必見だから退社後にその時間に集合する事として、終着の青森で下車した後は自由行動で北海道へ行く者、会社に直帰する者、駅から徒歩でいける「あおもり駅前温泉」でのんびりする者などそれぞれ計画と準備も怠りない。”ピイー”と遠くで鳴る機関車のホイッスル、床下から聞こえる客車列車独特のジョイントを刻む音など、最後のブルートレインを楽しむべく旅の場面をあれこれ夢想しながら前夜は床についた。
ところが、である。朝おきると空も晴れていてほっとする間もなく、以前に降った大雪の影響で、上り・下りの「あけぼの」は”本日運休”とJRのホームページに掲載されるではないか。好事魔多し。「え~、もう雪は除雪されたのではないの?」と東京近辺の景色から勝手に想像するも、上越国境や北国の長い列車の行程を考えると、それもやむをえないのだろうか。ここは天を恨むわけにもいくまい。そもそもこんな時期にすき好んで「あけぼの」に乗り通す客などほとんどいないだろうし、急ぎの人は飛行機か新幹線かバスで行くのだろうから、運休したところでほかに大した影響もないのかもしれない。やけくそでその日は東京駅地下(エキチカ)で伝統の旅のお供、「崎陽軒」のシュウマイの大箱(30ヶ入り)を買い、缶ビールを手始めとして越後の日本酒・「八海山」を片手にシュウマイをつつきながら、居間のカウチで鉄道ビデオを見ながらひとりで旅の気分を盛り上げたのだった。
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