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2014年1月17日 (金)

「おおすみ」事故の報道

その後、自衛艦「おおすみ」と釣り船の事故についての報道が続く中、船舶に装備されているAIS(船舶自動識別装置)の航跡を見られるサイト(マリントラフィック)から、「おおすみ」の衝突までの航跡が判った。それによると事故が起きたと推定される時間(15日0800頃)に「おおすみ」は180度(真南)に真っ直ぐ向かい17.4ノットで航行していた。これに対してつり船の乗客は「100米の距離で併走していた『おおすみ』を右舷側から追い抜くかたちで左舷側に入ったが、10分後「おおすみ」の汽笛が一回聞こえ(おおすみが右転する事を示す)同時におおすみの左舷に接触して転覆した」(読売新聞の17日夕刊要約)と証言しているそうだ。


ここで第一の疑問が湧いてくる。釣り船は通常20ノットから30ノットのスピードが出る。「おおすみ」は約17ノットで真っ直ぐ航行していた事がAISデータで判ったから、釣り船が一度追い抜いたら時間の経過と共に両船の位置は離れるはずである。それが「おおすみに追突された」との証言になるのは、釣り船が大幅に蛇行したか速度を大きく減じたかの可能性が強い。またこの乗客は「おおすみを抜く前に、タンカーが対向してきた」と述べているそうだが、視点の低い釣り船からは直進してくる相手船がタンカーなのか、(乾)貨物船なのか砂利船(ガット船)なのか区別がつかないはずだ。なぜこの乗客は対向して来た船が「タンカー」とわかるのだろうか? つまりは事故で動転している釣り船の乗船者に、メディアが無理やり証言を引き出そうとして、却って乗船客の記憶を混乱させているのではなかろうか、という疑問につきあたる。仮に漁場に近づき釣り船が大きく速度を落とした場合、もし操縦困難なら漁船は法律に基づいた表示をする義務があるし、そうでなければ釣り船はなお直進する「おおすみ」を右舷に見て衝突するコースにいるので避航義務があるはずだった。


そもそも広い海原の中での自船の位置は、2地点以上の目標を羅針盤で見比べ海図にプロットして初めてわかるものである。釣り船の乗客は自船が蛇行していたのか、はたまた「おおすみ」が航路を変えて自船の前に回りこんだのか正確には認識できなかったのではと考えられる。まして証言している乗船客は釣りの準備などをしていただろうから、積載されていたされるGPS画面を正確に監視しているわけでもなかったはずだ。なぜメディアは素人がちょっと考えてもわかるこんな疑問を一切検証しようともせず、事故で混乱している釣り船の乗客の証言だけから「自衛艦の見張りが不十分だったのでは」という憶測に基づいた放送をするのだろうか。自国であれ他国であれ軍艦に行き交った際には敬意を表し、自船の国旗を下げるのがシーマンシップの基本であると言うことを、報道する人達は知っているのだろうか。

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コメント

書きたいことは初めから決まっているので、100聞いたら、都合のよい2~3を取り上げて記事にするんでしょう。

本当にマスコミの採り上げ方には辟易しましたが、その後トーンダウンしました。いわゆる、報道しない自由ってやつだと思います。

船舶の免許取る際には「決して大型船には近付くな」としつこい程習いました。引き波が怖いし、彼らは急に曲がれないし止まれません。実技講習の折に水上バスと行き交いましたが、その引き波でも5トンの練習艇は激しくローリングしました。100トンぐらいの水上バスレベルで、です。

この事故は最終的に護衛艦に責任が重い海難審判になる可能性だってあるかもしれません。
先の房総沖のあたごの事件では海難審判では自衛艦に責任がありとされた一方、刑事裁判では別の結果でした。
何も検証もせず、最初から「権力」側に罪があるという予断をもったコメントをする安易さが報道の”プロ!?”のする事でしょうか?

薀蓄あるコメント、参考になります。予てより新聞報道は偏見があり、それが世論だと思っている思い込みが根底にあると思っています。今回の事件もその視点を感じます。

衝突した場所から釣り船の目的地だと云われる甲島まではまだ随分距離があり、ここで釣り船が減速する必要はなかったと思われます。

何らかの理由で一度追い越した自衛艦に、釣り船が追いつかれたものでしょうが、その場合でも自衛艦を右に見て航行する釣り船に避航義務があるはず。

自衛艦は通常3名以上当直ウオッチにいるから、釣り船の見張りが足りなかったのでは、というのが『普通の人が普通に考える』推論ですね。

今後の調査で事実が解明されるでしょうが、朝日や毎日では今の時点でなぜ自衛艦の見張りが足りないという事になるのか?最初に結論ありきなのでしょうね。

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