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2013年12月10日 (火)

キャプテン・フィリップス

話題の映画「キャプテン・フィリップス」を見た。アフリカ東岸ソマリア沖で海賊に乗っ取られたコンテナ船「マースク・アラバマ」号の、船長と海賊との闘いを描いた作品とあって緊迫した場面の連続で、息も継がせず話は展開する。映画は2009年に実際に起きた話をベースにつくられているだけに、海賊達の恐怖もリアリテイを伴って迫り、観客は映画の世界にすっかり引きずりこまれてしまう。そのストーリーをここで述べてしまうと興ざめなので、それは見てのお楽しみとして、私も日頃”海賊対策”が実務で問題になっても、何か遠い世界の出来事だと思っていたが、映画を見てからはソマリアや武装海賊の存在が急に現実味を帯びて感じられたのだった。


それにしても「マースク・アラバマ」号の様な小型コンテナ船(1092個積)がアメリカ国籍であり、ほとんどのクルーがアメリカ人である事に正直云って驚いた。国際航路に従事する多くの貨物船は、今や採算上の理由でパナマやリベリアなどに籍を置き(便宜置籍)、途上国の乗り組み員を配乗した上、様々な規制などを逃れて運航されている。映画の「マースク・アラバマ」号の様な船を米国籍のまま敢えて運航するのは、安全保障上、有時に必要とされる米国物資の輸送を考えての事で、この船がクレーンを装備しているのも汎用性を重視している事の現れであろう。本来デンマークの国策会社であるマースクラインが、アメリカ資本の買収を通じて米国海事安全保障法などの補助を利用し、多くの米国籍船を所有・運航しているという事実に瞠目するのである。


この映画は、アメリカ海軍の全面的協力と同型のコンテナ船を使って撮影されているので、映像も迫力満点だが「オヤっ?」と気がついた点が2つある。港を出ると船はふつう船尾の国旗はしまうのに、公海を走る「マースク・アラバマ」号は船尾旗の他、本来は寄港先の国に敬意を表するマスト旗に星条旗を掲揚している。海賊を避けるために「アメリカの船」というのをわざわざ誇示しているためだろうが、星条旗を掲げて航海したのが事実とすれば、そんな船を襲った海賊はマヌケという事になる。また救命ボートには定員分の水が数日分備えられているのに、映画ではフィリップス船長に水が与えられない事はさておき、飲料水が不足しているかの様な演出がなされていたのが良くわからなかった。


どうも仕事柄そんな細部ばかり気になって困ったが、トム・ハンクスの名演技にすっかり酔いしれ2時間強の大作が短く感じたのだった。それにしても最近はアフリカ東岸ばかりでなく西岸でも海賊が出没しているそうで、航海の安全からは本当に困ったものである。この事件以降、世界の船会社はデッキに鉄条網を装備し、武装ガードマンを乗せたり、船内に乗員の待避所(シタデル)を造って海賊対策をしているのだが、我が国はようやくこの11月に、日本籍船に武装ガードを乗せる事ができる特別措置法が国会で成立したばかりである。主要な海運国でも最も遅い方の法制化とあって、日本人の平和ボケぶりがここにも反映されているのが何とも哀しいものだ。

20131210_captain_phillips

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映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

こんにちは、初めておたよりします。
キャプテン・フィリップス ごらんになったのですね。新聞でも評判が良かったです。
私は今年GWのコスタクルーズに乗った者です。植木等さんの恰好をされた
バルク様(たぶん)にかっこいいと声をかけました。写真撮影しなかったことに後悔しましたが、偶然、このブログを見つけてうれしいです。私も夫婦でコスタに乗っていたのですが、主人がずっと体調不良でダウンしており、私はほとんど一人で船内をうろうろしておりました。
色々なことにチャレンジされてまた博識でいらして感心します。
またよろしければメールをいただけたら嬉しく思います。
クルーズももっと経験したいのですがまだ夫婦とも現役で働いているため、
短いものしか行けません。
人のブログにコメントするのは初めてですのでちょっとどきどきします。

ナンシーさん

ブログのコメントありがとうございます。

そうです、あの時の植木等です。あのコスチュームをする時はこれでけっこうドキドキしていて、船上で「それいいね」と声をかけられた時は嬉しいものです。

でも最近はカトウちゃんと間違えられので、都度訂正するのも大変なのです。

この後、4月の日本発着のフォーレンダムに乗船予定ですが、ナンシーさんは如何ですか。いつか船上でお目にかかれると良いですね。

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