シェール革命
海運の市況を表す重要な指標としてBDI(バルチック海運指数)が有名だが、以前はハンプトンローズ/日本の石炭海上運賃が代表的な海運運賃の指数であった。これは合衆国の東岸にあるノーフォーク又はニューポート・ニューズから日本までの石炭運賃の推移を追った指標で、我が国の物資輸入量が世界の物流に大きなインパクトを与えていた時代は、この運賃の高低で世界の海運の景気が判断できたのであった。それが米国産の石炭の高騰やオーストラリア産の台頭などで、この30年ほどすっかり米国東岸からの船積みがなくなり、この市況指数も過去の遺物となっていたのである。しかし最近ハンプトン・ローズから欧州や極東向けに、再び相当な量の石炭が船積みされているのを知りびっくりした。
これは例のシェール革命でアメリカ国内で安価な天然ガスが利用できる様になり、だぶついた燃料用の石炭が輸出に廻る様になった事から復活した現象と思われる。アメリカではシェールオイル油田の開発がこのまま順調に進めば、エネルギー的に2035年頃に中東の原油に依存しなくても国民の生活や産業を維持できる様になると云われ、そうなった暁には現在我々が直面している世界の様相もドラスティックに変化する事になりそうだ。まずアメリカの経常収支が大きく改善し、米国の景気回復やドルの復活が期待されるし、エネルギー価格の低下によりアジア始め世界の景気が良くなると云うシナリオが予想されるのである。
さらに米国は中東に関与する必要が薄れるので、対中国封じ込対策で安全保障の焦点がアジアにシフトする事が想像できる。そうなると日本は地理的に米・中対立の最前線に位置する事になり、かつて朝鮮動乱や冷戦時代に担った前線基地としての役割が再びクローズアップされて、”ジャパン・パッシング”などと心配する事もなくなるかもしれない。シェール革命などは遠い世界の事だと思っていたが、こう考えてみると我々の生活にもインパクトを与える事象である様な気がしてくる。その時は円を持っているより、預金をおろしてでも強くなる米ドルを買った方が得だと思うが、こうしてエネルギーやら国際情勢をあれこれ想像してシナリオを作り、自分に置き換えるのもボケ防止には効果がありそうで面白い。
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