縁の下の力持ち
縁あってタグボートの内部を見学する事ができた。タグボートといえば、クルーズ船に乗った際に、あちこちの港で大きな本船の着岸や離岸をアシストしてくれるのがお馴染みの風景だ。一方で私などは40年も海運界で働いているものの、日頃タグボートへの関心はその料金が高いか安いかばかりにあって、船内がどうなっているのか、実はこれまで知らなかったから、今回は絶好の見学機会という事である。
見学したのは長さ30米ばかりの大型のタグボート。下はブリッジ内の写真で正面の左右1対のスティックで、それぞれ船尾にある2つのプロペラ操作をコントロールするそうだ。プロペラはぐるりと360度回転し急制動やその場での旋回など、港内で要求される機敏な操船が可能だと云う。エンジンルームには、2000馬力のディーゼルエンジンが2機(4000馬力)あってA重油で運転するが、この出力は大型トラック10台分にあたる。全長が70米以上あり1500トンの貨物を積む内航貨物船のエンジン馬力が1000馬力ほどだから、タグボートは小さな船体に内航船の4倍のエンジンを積んでいる事になる。
タグボートの操船コンソール
消防や放水の際に水を汲み上げるポンプはエンジンルーム内にあって(下)これでマストのてっぺんの放水銃まで水を汲み上げる。タグの業務はブリッジに一人、エンジンルームに一人、そのほか係船作業ために必要なクルーが乗船するが、必要な時に家から通いで乗船する就労方法と、2週間船上で働き1週間休暇をとるシフトの2通りがあって、最近は通いの方式が全国的に増えているそうである。タグの乗組員は港内の様子を熟知していて、本船の船長やパイロットと協力しながら船舶の安全な着岸・離岸に尽力しているとの事である。
直列6気筒のエンジンが左右に1つずつ
港ではこの様につね日ごろ目につくタグやパイロットの他、係船索を扱うラインハンドリング、荷役をする港湾労働者(ステベドア)、船や荷物の状況を調べる検査官(サーベイヤー)検数員(タリー)、通船(ランチ)の会社、船会社に代わり船舶入出港に係る窓口となる船舶代理店(エージェント)など実に多くの人が働いている。その他、食料を供給する船食屋(シップ・チャンドラー)などという会社もあるし、海上保安庁や水上警察、外国貿易港では税関(CUSTOMS)・検疫(QUARANTINE)・入管(IMMIGRATION)などの役所も必要である。我々の生活を支える物流には、この様に多くの人が係っている事をタグ見学であらためて思い知らされた。
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