やられたらやり返す、10倍返しだ
視聴率が40%を越えた人気番組、「半沢直樹」の最終回が終わった。その終わり方をめぐって、「 視聴者は不完全燃焼 」「 続編希望 」などの声がテレビ局に多数寄せられているそうだが、私はあれはあれで想定範囲内のエンディングだと思った。もし半沢の仇敵である大和田常務が左遷され、半沢が大出世するかの様なハッピーエンドにしてしまえば、単純な勧善懲悪の劇になりすぎて却って物語の面白さを削いでいた事だろう。
我々も8月の世界陸上をはさんでこの3ヶ月間、日曜の夜になると夫婦二人してテレビの前に座り、「これって会社であるある!」とか「これは実際にはないよね!」などと言いながら「半沢直樹」を楽しませてもらった。私も妻もそれぞれの業界で大同合併の経験があり、特に妻はメガ・バンクにいたので、何となく身につまされる場面も多かったものである。二人とも原作は読んだ事がないから、最終的にどんな終わり方をするのか予想はつかなかったものの、毎回の半沢の「倍返し」に胸のすく思いをして見ていたのだった。
「敵の敵は味方」の様なサラリーマンの出世競争・派閥争いである。特に合併した会社においては、相手の部下を引き上げ、自分の部下は切り捨てる事で相手の歓心を買い、ひいては自分の地位を安泰にする、などと云う上司を実際に私は見て来たから、頭取が合併相手の筆頭役員である大和田常務を切らず、平取締役に降格させるだけという筋の展開は充分想定できるのである。取締役会の場で説明役の担当社員が、常務を土下座させるなどというのはテレビのお遊びとしても、合併したメガ組織の力学として、相手方の実質的に水に落ちた役員に温情を見せかけ、できる中堅や出そうな杭はつぶしておくという頭取のやり方は、いかにも老獪かつ正しい人事の方針といえよう。
それにしてもこの話、大和田常務役の香川照之や、国税・金融庁役人役の片岡愛之助らの演技ぶりにも感心した。ちょっとした顔の筋肉の動かし方で、いかにもそれらしい表情を作るのは歌舞伎役者ならのうまさなのだろう。その他、ほとんどのバイ・プレイヤーの名演技に、妻と二人「嗚呼、花の応援団」ではないが「役者やのう!」と茶の間のテレビに叫んでいたのだった。さて「半沢直樹」とともに楽しんできた「じぇじぇじぇ」のあまちゃんも、この9月末で終わってしまうから、秋からはテレビがつまらなくなりそうで困るね、と妻と話しているこのごろである。
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