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2013年5月30日 (木)

雑誌「クルーズ・外国船寄港のネックとは」を読んで

雑誌「クルーズ」7月号の「現状を知るために外国船寄港のネックとは」と云うコラム、この雑誌の発行会社である海事プレス社の横浜支社長が執筆しているそうだが、その内容がちょっと気になった。日本に於けるクルーズ船の様々な規制を取り上げ警鐘を鳴らすコラムの趣旨には諸手を挙げて是とするも、瀬戸内海の強制パイロットの是非や前長200米を超える巨大船の夜間航行規制について、「ロイヤル・カリビアン・クルーズ・リミテッド(RCCL)の担当者からは、『近年の客船にはGPS(衛星利用測位システム)がついているのでパイロットはいらなくなっているんだが』という声を聞きます」という下りは、専門家がそんな事を言ってどうするのと突っ込みを入れたくなる。


ここではGPSがあれば、あたかも瀬戸内海が通行できるかの如くに記されているが、仮にGPSを百歩譲って電子海図(ECDIS)と読み替えても、そんなものだけで外国の巨大な客船が瀬戸内海を航行できるとは到底考えられない。瀬戸内海は渦潮で名高い数々の瀬戸がある様に潮の流れが激しい上、宇高連絡船「紫雲丸」事件の原因となった濃霧が季節によって発生する。春から夏はこませ漁が航路の中でも行われ、この海域に慣れない外国船は1万総トン未満でもしばしばパイロットを取る。電子機器の情報には気象・海象や漁船の操業情報は表示されないから、電子機器が装備されればパイロットが不要だとは思えないのである。また全長200米以上に適用される夜間航行規制についても、小型船に比べて運動性能の劣るパナマックス型以上の貨物船が200米以上なので、線引きも決しておかしなものとは云えないだろう。


同コラムではカボタージュ規制も日本のクルーズのマイナス要因であると指摘している様だが、その主張にもちょっと首を捻る。インドネシアやオーストラリアなど自国に十分な内航海運産業を持たない国は、外国船による国内輸送参入を一定の範囲で認めており、EU諸国やインドも規制緩和に動きだしているのは事実。しかしクルーズ大国のアメリカを始めとする世界の主要国ではカボタージュ規制を行う事が一般的で、米国シアトルから発着するアラスカクルーズの客船も、この規制のためにカナダのビクトリアにワン・タッチする。日本の様に内航海運が発達し、また自国籍船でクルーズできる国において、カボタージュ規制の特例を設けよとコラムが主張しても、これは空しく響くだけであろう。


ただコラム子が考える様に、様々な規制が日本のクルーズをコスト高にしているのは事実で、その追求に「クルーズ」誌などのメディアはこれからも大いに論陣を張ってもらいたい。私は外国人クルーを多数乗せた日本船が、組合対策の為だろうか、年に数回韓国や中国に延航しなけらばならない事もそろそろ辞めたら良いと思うし、港内の操船に2Lの法則を適用してタグを常時待機させるのも日本の操船技術をして必要なのかと思っている。旧飛鳥だった「アマデア」が、アムステルダムやワルネミュンデでタグなしで入出港しているのを見たり、外国の10万トンを超える巨大クルーズ船がスラスターだけでいとも簡単にその場で回頭するのを見ていると、日本船も安全第一で行くのか国際基準で行くのか、なかなか悩ましい処だと考える。

巨大船を示す円筒形象物がマストに掲げられている様子(飛鳥Ⅱ・関門海峡にて)上
夜間はマストに回転灯(同)下
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